表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

青春の事件簿

放課後の数式

作者: 左夏詩萌野

サックっと読める短編を書いてみました。

ぜひご感想等をいただければ嬉しいです。

暗号とは何のためにあるのか。

簡単だ、その答えはどうしても伝えたい「何か」があるから。


放課後、チャイムとともに教室を飛び出すように帰宅する。

つもりだったのだが、下駄箱の中を覗き込めば1枚の手紙が入っていた。

いやこれを手紙と呼ぶにはいささか無理がある。

少し前に化学の授業で配られたプリントが突っ込まれていた。

宛名もなければ差出人の名前もない。ただ数式が書いてあるだけだった。

「6+2+85+49+39+85+8」

赤いボールペンで書かれたそれを眺めてみても一向に意味が分からない。

たっぷり5分ほどうんうんと頭を回す。

「とりあえず足してみると……274。うん意味のない数字だ。この前のテストの5教科合計よりは高い数字だな。」

スマホを操作しながらそう一人で考える。面倒だ、あの人に頼むか。そう結論付けた。


ちょうど先週、中間テストも終わり校内は重い空気から解放され楽しそうに部活動に向かう生徒であふれていた。そんな中俺が向かったのは図書準備室、こんな謎が大好きな先輩を頼ってのことだった。といってもただのミステリー好きな先輩だ。放課後は決まって図書準備室に潜り込んで新作のミステリーを読みふけっている。どんな権力を使ったのかは知らないが、ボランティア同好会とやらを作り、部室にしているらしい。いろいろと成り行きで俺もその同好会に参加している。もう2か月は経つが今までボランティアなんて

1回もしていないけど。


「で綾人君、それが暗号文?」

ちょうど切りのいいところまで読み終えたのか新作の文庫本を脇に置いて俺の渡した例の数式をのぞき込む。

「うんうん、これはいけないね。まずいよ君。それにこれを書いた人は君に解いてほしいようだ。」

「えっ今の一瞬でそんなこと分かったんですか?」

「ああ簡単にね。君きちんと勉強はしているかい?」

「あいにく俺はミステリーを読み込んでないので暗号なんて分からないんですよ。」

違うよと先輩は人差し指を立てて得意げな顔で語りだした。

「暗号文なんて大げさに言うけれど結局は何かを伝えるメッセージだ。そこには作った人の意図がある。要はたどり着くための手順が重要なのさ。国語のテストの作者の考えを述べなさいそれと数学のテストの途中式を書きなさいその合わせ技ってわけだ。そうすれば暗号文を読むことなんて簡単なのさ。」

「もったいぶらないで教えてくださいよ、先輩にはこの文章の意味が分かったってことですよね?」

「ああ、その人物は優しい人だと思うよ。しっかり謝れば許してくれるさ。大丈夫、テスト勉強をした君ならすぐに分かるはずさ。」

そういって先輩は暗号文が書かれたプリントを表に向ける。授業で何度も見せられた表がそこには書かれている。



それから一時間後、俺はようやく解放され図書準備室に戻ってきていた。

やあおかえりと楽しそうに笑う先輩を目にしため息をつく。

メッセージの答えは単純明快。元素周期表に沿ってアルファベットを当てはめていくだけ。

「C He At In Ga Y At O」

「カンニング綾人」

そう暗号文自体なんて正直分かってしまえば簡単なのだ。大切なのはその意味と謎を解く過程。


「カンニングを見逃してくれるなんて優しい先生じゃないか。君ほとんど勉強していなかったのだろう?化学のテストの結果だけ極端に良ければ疑われても仕方ないさ。これを書いた先生は君にただ真面目に勉強してほしかっただけなんだろう。まあ何も罰がないということはないだろうけどね。」


俺は楽しげにからかう先輩の横に座り、明日の放課後に行われる追試に向けて真っ白なノートを開いた。

一言でも感想をいただけると励みになります。

お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 先輩が魅力的。謎解きも楽しかったです。 [一言] カンニングはあかん(汗)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ