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19.いじめっ子だがおっぱいは柔っこい

(まさか、ここで会うことになろうとは……柊木翔子)


『アンタさ、男のくせにメソメソしてて鬱陶しいのよ!』


『学校内でマンガとか読まないでくれる? ライトノベル? 知らないわよ!』


『オタクって嫌いなのよね。ジメジメしててキノコが生えそう。不潔だから目の届かないところに行ってくれる?』


 琥珀はこれまで、さんざん柊木から投げつけられた暴言を思い出した。


 柊木との因縁は深い。

 琥珀のことをイジメていたのはほとんどが男子生徒だったが、柊木と一部の女子だけは彼らと一緒になって虐げてきた。

 暴力を振るったり、金を取ったりはしなかったが……それでも、柊木の口から出た言葉のナイフは琥珀の心に深い傷を負わせていた。


「ひっぐ……えっぐ……」


 その柊木がベッドの上で丸まって、顔を涙と鼻水でグチャグチャにしている。


 こうして夜中に医務室で泣き崩れている原因は昼間の出来事だろう。

 柊木はダンジョンでの探索時、巨大なワームに襲われて丸呑みにされていた。

 ダンジョン内では死亡しても無傷で外に放り出されるそうだから、問題ないような気もするのだが……ここで肝心なのは、柊木がすぐに死ぬことができたかどうかである。

 丸呑みされて即死したのであれば苦しむ暇もなかっただろうが、そうでなかったのならば悲劇だ。

 生きたままワームの胃の中に吸い込まれ、そのまま胃酸で溶かされることになってしまうのだから。


(死んだ方がマシだよな……正直、アイツが吐いたブレスで死ねた俺は運が良かったとすら思えるよ)


 琥珀もまたワームによって殺されたが、痛みなど感じる暇もなく焼かれてしまった。

 だからこそ、特にトラウマなどもなく平然としていられるのだが……柊木はそうもいかないだろう。

 仮初とはいえ『死』を経験したことにより、精神が崩れてしまっている。


(いつもはベタベタと校則違反の化粧をしているのに……こうやってみると、中学生の子供みたいじゃないか)


 スッピンの柊木の顔を初めて見たが、意外と童顔である。

 こうして見ると、幼い子供が泣きじゃくっているようにも見えなくもない。


「キュウ……」


 琥珀は複雑な心境で小さく鳴く。

 嫌いな相手が弱っているのだから、心情としては追い打ちをかけて徹底的に叩きのめしてやりたい。

 しかし、こうも泣いている女に対して暴力を振るうことができるほど、琥珀は非情に離れなかった。


(いつもの生意気なメスガキだったら、顔を思いきりビンタしてやれたんだけどな……)


「ヤダ、ヤダ、ヤダ…………ひうっ!?」


「キュッ!」


 シーツにくるまってメソメソしていた柊木が唐突にしゃっくりのような声を上げる。

 白い布の隙間から出た二つの目が琥珀のことを捉えていた。


「キュウッ……!?」


 シーツから伸びてきた細腕が琥珀を捕獲して、そのままベッドの中に引きずり込む。

 ヤバい……そう心によぎった次の瞬間、琥珀は柊木に抱きしめられていた。


「ヤダよう……恐いよう……死にたくないよう……」


「キュイ……」


 柊木が琥珀のことを抱きしめて、涙やら鼻水やらを塗りつけてくる。

 こうなってしまうと本当に子供のようだ。お化けや雷に怯える子供がぬいぐるみを抱きしめてベッドに隠れているようだった。


「ううっ……あうう……」


(コイツ……好き勝手にしやがって。僕に何をしたのか忘れたのかよ)


 琥珀は嫌いな相手を慰めることになった状況に顔をしかめて、どうにか脱出しようともがくが……手足をジタバタとさせるほどに抱擁の腕が強くなる。


「やだよう……一人にしないで……」


「キュウウウウ……」


 やがて琥珀は深々と溜息をついて、抵抗をやめた。

 そのままされるがまま、柊木の胸に抱きしめられるに任せる。


(お前が僕にしたことを忘れたわけじゃないからな! これは貸しだからな!)


 そう……これは決して柊木のためではない。

 柊木はヘリヤさんのパーティーメンバーなのだ。このままへばってしまうと、ヘリヤさんに迷惑がかかってしまう。

 ヘリヤさんの身の安全のためにも、早く立ち直ってもらわないと困るのだ。


(それにしても……こんな嫌な奴なのにおっぱいは柔らかいとか反則だろ!)


 抱きしめられたことにより、柊木の胸がポヨポヨと押しつけられてくる。

 サイズだけならばヘリヤさんよりも大きいだろう。


(まあ、イジメられた仕返しに胸を触っていると思えば悪い気もしないというか、むしろ気分が良いのかな……いや、わかんないけどさっ!)


 頭の中で意味不明な言い訳をしつつ、柊木が寝付くまでの間、琥珀は彼女の胸の感触を堪能するのであった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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