第一章7『魔族、襲来』
掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・掲載されている小説の著作権は作者にあります
・作者以外の方による無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
日はまだ登っている。
正午を少し過ぎたあたりか。 パーティーを組んだ仲間、レイナとメリア、2人と合流するためにまずは大通りに出た。
結局。なぜ俺が別の世界から来たのを知っていたのか、確か店を去る間際に俺の名前を言っていたような気がする。奴隷商へその事について問いただすのを、すっかり忘れて店を出て行ってしまった。
「うーむ。しかし、奴隷商に言いくるめられて勢いで奴隷を買ってしまったが仲間の2人にはなんて説明しよう……。 子供を拾った。なんて嘘は言えないし、かといって連れ歩いていたら変な趣味を持ってると誤解されても嫌だ。俺にそんな性癖は無い」
流石にペット扱いは人道に反するので鎖を引っ張るのではなく奴隷幼女の手を繋いで歩くことにした。これなら歳の離れた兄と妹に見えなくもない。
「そういえば~、君の名前は?」
「り……、リーフィア…………。です」
「俺はヒロアキ、よろしくな。リーフィア」
猫人族の幼女リーフィアは手を繋いでいる俺を上目遣いで見つめながらトコトコと、横を着いて行く
「ごしゅじん様。では、私に命令して下さい。家事に料理、洗濯、何でも出来ます。魔法もそれなりに一応は心得ております……、それとも性奴隷としてお使いに……ゴボ、ゴボ」
慌ててケモミミ幼女、リーフィアの口を方で塞ぐと「あー、あー」と大きな声を出してかき消す。
人通りの多い場所、それも人間の他にドアーフやリザードマン、様々な人種が多来している王都エリクトで、こんな会話を聞かれたら何かと面倒だ。
俺は武器屋に顔を出すと親切にしてくれた武器屋のおっちゃんが裏口から出てくるや俺を見て驚く、
「あん時の兄ちゃん確か、ヒロアキ。そのプレート、冒険者になったのか。出会ったときより見違えたな!一緒に冒険してくれる仲間が出来たそうじゃあねーか。今の兄ちゃんのLvは7ぐらい上がったとみた、なんにしても順調そうでなによりだ」
「なぁ、おっちゃん。来てそうそう悪いんだけど、この子に合う服は置いてないか?」
「お、おい。それ…………」
武器屋の親父はまた驚くと、俺の連れているリーフィアを見て、
「お前ついに、奴隷をさらって誘拐まで手を染めやがったか……しかもこんな幼い小さな少女をよ」
「ち、ちげぇよ?!誤解だ、誤解!。可哀想だから助けてあげただけで。俺がそういう趣味のあるようなのに見える?!」
「まぁいい、見なかったことにしておいてやるよ」
武器屋の親父が1つため息をつきながら店の奥から、子供用の服を持ってきてくれた。
「おれにも、同じ年頃の娘が居てな。お子さんのサイズにぴったり合うかはわからないが」
「え、おっちゃんに子供いたの?結婚してたの?」
「あったりめぇだ。今はイカツイ格好だが昔はモテたんだよ」
試着室へ連れて行きリーフィアに服を手渡すと、身に付けていた奴隷用のローブを脱いでオーバーオールを着て出てくる。
「お嬢ちゃんに合うか心配は要らなかったようだな。似合ってんじゃあねぇか、ヒロアキよりカッコいいぜ」
「よりの部分は言わなくても」
「なぁ、お嬢ちゃんは魔法とか使えたりするのか?」
「はい、魔法も心得ております」
リーフィアは目上の人に対してはすごい丁寧で態度もきちんとしている。前の主人に教えてもらったのかはわからない。けれど、俺に比べたら何倍も大人みたいに見える。
「それだけじゃ不便だろ?サービスで武器と防具も」
サービスで魔法の杖と小さい盾を渡してくれた。
「お前さんたちの活躍、期待してるぜ。…………その子、守ってやれよ」
「言われなくても」
店を出た俺は再び城下町の大通りへ向かう。
奴隷商に檻へ入れられた状態で連れて来られたのだろう。リーフィアは王都エリクトへ来たことがないのか、町の建物や行き交う人を興味津々で見ている。
その途中露店から美味しそうな匂いが漂ってくる。
今日は何も食べていない……腹が減ったな。
顔を向けると、彼女は自分のお腹を触っている。恐らく主人である俺に気を使って食べ物がほしいのを我慢しているのだろうか。
「お腹空いてるんだろ?よし、ちょっと待ってろ」
空腹じゃあ旅はおろか歩く体力もなくなってしまう、何より俺も似たような状況になって親切にしてもらった。
今度は俺が誰かにしてあげる番かもな。
手頃な値段で買える食べ物を売っている露店を見つけて店主に尋ねる。
「いらっしゃいませ、ご注文をどうぞ」
「フランクフルトを2本ずつ、同じ物を頼む」
長めのフランクフルトを2本も注文したので店主が1人で食べるのですか?と聞いてきたので俺は首を横に振って、違うと言い伝えた。
「あの……お連れのお客様は、ちょっと」
露店の列に並んでいた他の客たちの視線がリーフィアへ集まる。
「どうして表の通りに奴隷が……」
「汚いねェ、なんでこんなところに奴隷なんかウロツイてやがんだ。飯が不味くなる」
はぁ?!何なんだこの客は、失礼な人たちだ。
俺は無性に腹が立ったが揉め事を起こして騒ぎになってはマズイと考えて頭を冷静に保つ。
確か奴隷商が言っていたな。
奴隷
人間としての名誉、自由を認められず、生物としての身分はドブ川の水にも等しい最下層の存在。 人々からは差別され、主人の所有物として扱われる、モノ同然だと教えられた。
無神経な奴らは無視して嫌な顔をしている店員から注文した物を受け取るとリーフィアの元へ戻って彼女へそっと食べ物を手渡す、
「ほら、どうぞ。歩きながら効率よく食事が取れる」
「うぅ……」
顔を下にしてうつむきながらブンブンと2回、首を振ってリーフィアは受け取るのを拒否する。
「どうして?」
「私は、奴隷という生きてはいけない存在なんです。オマケに耳と尻尾だって生えてる。見た目も他の人たちとは違うんです」
今みたいに心無い悪口を言われたり差別的な扱いをされるような場所や環境に置かされてきたのだろう。
ぞんざいな扱いをされても辛い気持ちを抑え、耐えてきたのだろう。
「今日まで良く頑張ったな」
リーフィアの頭を撫でてやると、彼女は不思議そうな顔をして俺を見つめる。
「誰がなに言ってようが関係ない。悪口をいう奴らは自分の欲を満たしたい構ってほしいだけの弱い者たちさ。だから気にしないで」
「いいの?」
「――良いよ、気にせず食べな」
安心したのかリーフィアは食べ物にかじりつく。
肉はジューシーで歯ごたえがあり、肉汁が口から溢れる。
喉に食べ物が詰まったのか、リーフィアに飲み物を飲ませて落ち着かせた。
「もぐもぐ、……なんで、ごしゅじんさま……」
口に含んでいた残りのフランクフルトを食べ終えると、
先ほどまで俺に対して、怯え震えていたリーフィアがしっかりと俺の目を凝視しながら真剣な顔をしてこちらへ顔を向ける。
「なんで、ごしゅじんさまは……他の人たちみたく奴隷の私を笑ったりしないの?どうして、ごしゅじんさまは優しく接してくれるの?」
「――俺も似た出来事があって経験をしたことがあるからかな」
「ごしゅじんさまも、イジメられていたの?」
「そうだね、リーフィアとおなじ……。ううん、リーフィアより俺はずっと下の存在かな。君に比べたら大したことはないよ」
ごしゅじんさまはそんな事ない、と言おうとしていたリーフィアの言葉を遮って会話を続ける。
「これから一緒に仲間として旅をするんだ。それ以上でもそれ以下でもない。俺たちは、イジメられた似た者同士ってヤツだな。君はもう1人じゃないよ」
俺はリーフィアの頭を撫でる。
「魔物が出たら俺が守ってやる、絶対に」
「親切にしてくれて……ごしゅじんさまは、とっても良い人です!信頼して背中を預けられます」
面と向かってハッキリ言われると照れてしまう。
「ごしゅじんさまは、どこのご出身ですか?」
「俺は……異世界から来た」
「もしや、ごしゅじんさま……ヒロアキ様は、異界の地より召喚された大英雄であらせられますか?!」
「大英雄ってのは何だ?」
「大昔に魔族の軍勢が戦争を仕掛けて攻めて来た時、突如、異世界より現れ、魔族の軍勢をなぎ倒し世界を救ったとされる伝説の戦士。人々は称えてその人を大英雄と呼びました」
と、話しているとそれは突然起こった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「魔族が、王都エリクトに魔族が攻めて来たぞ! ギルドから冒険者を要請するように声をかけに行こう!」
男性の大声が響き渡る。
すると王国の兵士が血まみれで吹っ飛んできた。
「子供…………連れか、早く逃げろ」
露店がたくさんある市場はパニックになった客で溢れていた、悲鳴を上げ逃げ惑う人混みに押されながら、流されないように必死にリーフィアの手を掴んで。
「――ヒロアキ様!」
「大丈夫か?ここは危ない、少し離れた場所へ移動しよう」
俺の目に、街中を暴れ回る人の形をした物体の姿が飛び込んでくる。
太い毛に恐ろしい牙を生やした狼男が兵士や客を無差別に襲って街を破壊して暴れていた。
「血だ、人間の生き血をよこせェ」
隣に来ていたリーフィアは俺の後ろへ回って身を隠す、
とてつもない恐怖感でリーフィアはひどく震えていた。尚も魔獣の破壊が止まらない。
その光景に戦う術を持たない俺は立ち尽くしていると、
「――ヒロアキ、危ないよ。ここは私たちに任せて!」
「アナタ何してるんですか……早く下がってください」
魔法の使い手、黒髪の少女――メリアと剣士のレイナが助けに現れた。
驚く魔獣は、
「何者だテメェたちは」
「ごめんね、魔族に教えることは、――ないんだ」
誰とでも、いつも明るく元気に接している優しいレイナ。だがこのときばかりは、あまり見ない真剣な顔で眼前の相手を見て剣を構えている。
「仕方ねェ……テメェらには魔王様ふっかつの生け贄になってもらうしかねェようだなァ!」
魔獣対レイナ&メリアの闘いの火蓋が切って落とされた。
先に仕掛けたのは狼男。助走をつけて走りだすと狼男は鋭い爪を振り下ろしながらレイナに襲いかかる。
「まずはヒョロっちィ、テメェから始末してやる」
「ブロンズランクの冒険者だからって甘く見ないで」
攻撃をひらりと難なく躱すとレイナは剣を大きく振りかぶって魔獣を叩き伏せた!。
「ヌぅう!」
狼男が少しだけ後ろへ下がる。
コイツはどうだ!と言わんばかりに狼男は空中に魔法陣を展開して野球 ボールぐらいの火の球を今度はメリアに向けて発射した。
「――ドラゴニックシールド!」
メリアは魔法で、前面に強力な魔力を帯びた盾を出現させ魔法攻撃を防いでみせる。
「なにィ?! あんな小娘が最上位レベルの防御魔法を使えるだと」
「私も驚きました……魔術を使える魔獣が居たなんて。上の存在に尻尾を振っているだけの頭の足りないケモノかと思っていましたから」
メリアは出会った当初、
頭脳明晰で頭の回転が速く理知的な話し方や振る舞いから冷たく
クールな印象を受けた。
俺をまったくと言っていいほど信用しておらず口を開けば、俺の悪口や悪態を突いてくる。
が、――戦闘時は違った。
どうやら俺は認識を改める必要がありそうだ。
「この人めっちゃ煽り倒してくるんだけどぉ?!」と俺は心の中で思いました。
「調子に乗っていい気になってんじゃあねェぞ!!」
煽り耐性が無かったのか魔獣は、彼女の挑発に反応して今度はその尖った爪をメリアへ向けて襲いかかる。
しかし、メリアは涼しげな顔で回避行動をとる。
世界中で恐れられているというS級犯罪者集団『武天魔』をたった1人で追っているだけあって戦闘慣れしていた。
「すばしっこい小娘だ!これなら避けられまい」
魔獣は火球と切り裂く爪、狼の脚の速さでメリアを翻弄する。
周りの建物を半壊させる破壊力、
「なぜ私が攻撃しないのかアナタには理解できますか……」
「……あァ?!」
「魔王ふっかつと言ってましたね、人間の生き血がどうのと……」
「そうさ……下劣で下等な人間を生け贄に捧げ、この国のヤツら全員の血を代償にすりゃあ魔王様はふっかつする。その手始めにテメェらをぶっ殺すんだよ?!」
この魔獣もしかして、こいつアホだろ。
メリアが手を出さない理由。俺は、おそらく敵の目的と情報を聞き出しながら隙をみせるのを彼女たちは冷静に待っているんだ。と考える。
「自慢のスピードとやらを見せてください」
尚も挑発を続けるメリア。
狼男は高速で移動しながら連続でひっかく攻撃、
メリアの回避に合わせて敵を追うように、空中へ展開された魔法陣から小さな氷塊の礫をレイナが放った。
「狼さん、こちらへおいで手の鳴る方へー」
「舐めやがってクソガキ共がーー!」
ついに堪忍袋の緒が切れたのか激昂した魔獣が大技の魔法を放つ素振りをみせて、
「これをくらえば、ひとたまりもあるまい」
突風が吹き荒れ、地面が割れる。
周りの建物が壊れてガレキがリーフィアの頭上、真下へ落下。
「キャーーーーーーッ」
突風にあおられレンガで出来た家や木造で出来た建物が大きな爆音を立てて崩壊する。
小さいリーフィアの手を急いで引っ張ると間一髪のところでリーフィアへ直撃するのは避ける事が出来た。
「大丈夫か、リーフィア」
「ーーごしゅじん様」
血?。
リーフィアには当たらずに済んだが突風で飛んできた細長い木が俺の背中に刺さって血まみれになっていた。
ーーあ……あぐァ!!。
俺は出血と激しい痛みに耐えながらリーフィアを安全な場所まで運ぶことができた。
掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・掲載されている小説の著作権は作者にあります
・作者以外の方による無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。