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はぐれ転生者で異世界活動  作者: 双葉きずな
第一章『異世界からの来訪者』
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第一章6『奴隷商と奴隷の幼女』

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大量の群れを殲滅したということで、今回のクエストで得た報酬は日本円に換算して7万円。異世界ドラグニアの通貨に直すと7万ロギーを入手した。


日本でも日雇いだけでこんなに貰えることはなかなか見ない

今回の功労者は剣士のレイナとツンデレ美少女のメリア。



肝心の俺はというと、彼女たちのおこぼれをもらってトドメを刺したぐらいしか活躍していない。



今日も今日とて、クエストを受けるため冒険者ギルドを訪れていた。



「ヒ・ロ・ア・キーーーーッ! おっはよーー」



朝から明るく元気な声で俺の腕に飛びついてきたのは冒険者で剣士の女の子レイナ。

大きくて柔らかな山脈の感触………。ま、まさか胸?!待て待て待て待て待て、

こいつ無邪気で純粋すぎるぞ!普通は異性に抱きついたりするのは年頃の女の子なら少しぐらい恥じらいとか、抵抗はないのか?しかもデカい、デカ過ぎる。

張りがあってそれでいて羽毛のような触感、弾力性があり俺の腕がくい込んで沈んでいく。



「な、なぁレイナ。こういうのって抵抗はないのか」

「全然ないよ?挨拶みたいなものでしょう。変かな?」



そんなやり取りをしていると遅れてもう一人のパーティーメンバー、メリアが遅れてやってくる。



「おはようございます。魔物に喰われて、とっくに死んでしまったのかと思っていましたが生きていたようですね…」



メリアは、男の俺に嫌悪にも似た感情を向けている。どうやらかなり警戒されているらしい。が同じ女性であるレイナには心を開いているようす、昨日のあの表情はどういう事だろうか?あんなにも助けを求めていたのに。これが俗に言う「ツンデレ」というものか。二次元でしか存在しない性格だと思っていたよ。


よしメリアにはツンデレ美少女の称号を与えよう――。と口にすれば彼女に殺されてしまう、俺は心の中でだけつぶやいた。




「相変わらず冷たいなぁ、メリア。もうちょっとこうあるだろ?」



「勘違いしないで……。何もありませんが?あと気安く呼ばないでください。それにあなた方ひ弱な人間は一切、信用していませんので……」



あなた方人間は信じてない? メリアも俺達と同じ人間の種族だろうに。何を言ってるのか意味がわからない。なにか含みのある妙な言い方だな。まるで自分だけが人間では無い、と主張してるかのような言い方にも聞こえる。何か、彼女には抱えている謎がありそうだ。




「なぁ昨日言ってた、メリアのご家族と一族の同胞たちに、呪いをかけた犯人、

S級犯罪者集団『武天魔アマネセル』ってのは一体何者なんだ?」



「そうですね。全員が各国の魔術師や異能力者で構成されていること以外情報がなく神出鬼没で謎に包まれているらしく、現れるたびに各地で甚大な被害を生み出す惨劇を引き起こしてきた。世界で非常に恐れられ、忌み嫌われている存在です」




極悪非道の限りを尽くす悪の組織的な感じだろう。

黒い髪の少女メリアはそんな連中相手にたった一人で立ち向かっていたのか。俺は思った。




「ねぇ、ヒロアキ。城下町の大通りへ行ってみない?いい道具やアイテムがいっぱいあるんだー」



「そうだな、少し見てみようか」



この二人にはしばらくお世話になるだろう。俺はまだLvが低いから彼女たちの力を借りるしか他にない、旅の道具やら揃えて支度もしなくては。



町は大勢の人々の活気で賑わっていた。尻尾の生えた亜人に、リザードマン。猫の耳がある獣人に、もちろん俺のような見た目の人間と様々な人々が暮らしている。


いまだに元いた俺の世界とは違いすぎるので慣れないが、獣人でも人間でも言葉は通じるのが救いだ。



「ずっと王都にいるというワケにはいきません。次の町までアイテムや食料を買っておく必要があるかと思います……」



「それもそうか、時間も限られてるし効率よく入手したい。分かれてお店を周らないか?」




「わかった。私は、メリアと買い物に行ってくるね!ほかはヒロアキに任せるよー」






彼女たちと分かれた俺は、大通りから脇に入った裏へ行くと商人らしき男から声をかけられた。



「――この世界じゃあ見慣れない服装、異国から来た方でしょうか?」



「……?」



ローブを着た、怪しい商人の異国からという言葉に驚いてしまった。

商人はフードを深く被っていて顔はよく見えないが、少し年老いた声をしている。



「来たとは、どういうこと」



「何も珍しいことではないよ。この世界、ドラグニアは広い、色んな国があって遠い場所から来る者もいるさ。私、物を売ることを生業にしてまして、何か買っていきませんか?」



商人は何か知っているような、濁しているような口ぶりでそう言った。



「商品はなにを売ってるの?」



「私について来てください。来ればわかる」



不安だ。この人は絶対に怪しい、新手の詐欺師か押し売り業者かと思ったが情報収集もかねて、行ってみることにする。


案内された場所を歩いていると俺は小屋の中へと通され、入っていく。


中は日が当たっておらず、薄暗い照明。壁に高級そうな絵画が飾られており、その奥に檻のようなものがいくつも置かれていて人影や動物の様な鳴き声も聞こえる。



「武器とかアイテムは置いてないみたいだけど、どういった店なんだ?」



「ウチは少々特殊でね、主に闇市で奴隷を販売しております」



奴隷?少々どころじゃない、特殊すぎやしないか。いや、ただの人さらいじゃあないか。普通に犯罪だろ。



「いろいろな種族を取り扱ってまして……。人間に、ドワーフ。リザードマン、獣人。狼男に、人魚も売ってます」



「旅の移動に奴隷は必要ないと思うんだけど。奴隷を買いに来たわけじゃなくて、冒険に使える道具とかはないの?」



「――お言葉を返すようで申し訳ないのですが、

この世界は

お客様が考えているほど生ぬるい世の中じゃあないんですよ。

太陽と月が存在するように、物事には表と裏がある。

だって一度誰かに裏切られた経験、ありますよね。

お客様にどこか心当たりがあるんじゃあないのですか?」



「俺は……殺ってない!! だから」



以前、回復術師の少女を救えず目の前で亡くしてしまった。攻められ、最初に居たパーティーを追放された出来事が蘇る。

直接、俺が殺めてしまったワケではない。が、その原因をつくってしまった俺にも責任はある。



「わかっております。華奢な体格の男一人だけで、女性を無理やり襲える様な見た目にはとても見えませんから。仲間と思っていた者たちから裏切られたら? また似たような状況になったら命の保証はない。だからこそ決して逆らわない奴隷が必要では?」



確かに、またいつ誰に裏切られるかわからない。心の隙間に漬け込んで利用したり罠にはめようと考えている者も世の中にはいるだろう。

それにオレは非力で、無力だ。

魔法も使えなければレイナのような卓越した剣さばきも出来ない。

力が欲しい。



「お客様にピッタリな奴隷がきのう入荷したのですが…。ほら来なさい」


奴隷商が指を指して合図を送ると、店の奥のカーテンから

首に鉄製の鎖を繋がれている幼女が飲み物を持ってきた。



怯えた目で震えながら、体中は傷だらけで

頭に猫の耳を生やし、

尻尾を生やしている十歳くらいの幼女。



「お客様、この奴隷はどうでしょう。猫人族、リアース種です。

前の主人は日常的に暴力を振るう人間でして。少々体の一部等、

商品に傷が付いてしまっていますが気にしないで下さい」



「………。」



「主人に肉体労働を強いられ、使えなくなって捨てられていたところ

餓死寸前の状態でしたので拾って調教し、主に絶対服従するよう、

しつけ直しました。Lvも低く、

キズあり商品ということで中古として安く売っております」



彼女の値札だろうか、プレートのところに名前が書かれたタグが付けられていた。Lvは10


名は『リーフィア』と言う、その子供は小さく震えている。


顔は整っていて美人。


俺が転生される前、もといた世界のアイドルとか天才子役のような整った美しい顔と見た目だ。



「お飲み物です」



「どうも、ありがとう」



何かしてもらったらお礼を言うのは当たり前。すかさず俺は反応してしまった。ふと目をやると、幼女は逃げない様に硬い首輪で繋がれている。


握手をしようと俺が手を差し出すと、



「ひ、……はヒィ!?お願い、打たないで」



叩こうとしていると俺を勘違いしてしまったのか。その気持ちは分かる、前の主人に日常的に暴力を振るわれ、半ば強制で肉体労働をやらされるという酷い目に遭わされたら怯えてしまうのもムリはない。


前の主人に日常的に暴力を振るわれ、捨てられて裏切られる。そんな姿をあの時の俺自身と重ねて見てしまった。

怯える女の子を見て、胸がすごく傷んだ。



「持ち金は少ないけど……」



「元々は在庫処分の品として廃棄する予定でしたし、もし購入を検討しているのでしたら、お安くご提供しますが」



パーティーで山分けしたので、昨日クエストで倒した時にドロップしたアイテムを売った銅貨と金貨数枚ほどしか持ち合わせていない、けれど奴隷の子の過去を聞いて心が痛んだ



本当に道具とかはないのかと、ヒロアキは店の辺りを見渡していると人のようなシルエットをしているが明らかに人ではない異形な見た目のモンスターが檻の中に入れられている。




「あれは、なに?」



「ああ、王国が秘密裏に実験していたモノの、失敗作として捨てられた魔物と人間のキメラです」



華やかな町がある表の王都とは違って、

この国にも闇の側面があってそれは根深いものだというのを感じた。



「奴隷商、連れている奴隷が絶対に裏切らないという保証はあるの?」



「それについては心配ありません。奴隷ども、商品の一つひとつに再教育を施し主人に絶対服従をするよう調教してありますので」



「そうなの」



「一応、主人のどんな命令にも絶対遵守する強力な魔法を奴隷に施す事も可能でございますが」



「もし、例えばだけど買うとしたら、一つ聞いておきたいんだけど、いいかな?」



「何でしょうお客様」



「いや。商人ではなく、その女の子に」



俺のことが怖いのか怯えて震えている幼女に近づくと、膝を曲げて姿勢を低くする。

女の子の目線の高さと同じくらいまでしゃがんだ。



「――聞きたいことがあるんだけど、いいかい?」


ヒロアキは、幼女に尋ねる。



「今まで苦しい思いをしてきたと思う、前の主人に暴力やら酷い扱いをされてきたと思う。 怖くなかった?」



「……逆らえば明日食べるごはんも、住む場所も無くなってしまいます。ご主人さまの言うことは絶対です……。その為なら、安い自分の命くらい失うのも覚悟しています」



俺は目を閉じて5秒ほど考えると、



「さっきは買わないと言ったけど、この奴隷を買うよ」



「おお!お決まりになられたようで、ご購入ありがとうございます」



奴隷商はニヤニヤと笑みを浮かべる。



「お客様、購入目的は?。 ダンジョン攻略の囮に肉の壁としても使えますが、それとも愛玩用に性奴隷としてお使いで? 一晩中、性玩具として扱うのも一興かと」



「違う、そんなことするワケないだろ。次の町へ移動することになったから旅をしに一緒に連れて行くんだよ」



その言葉を聞いた奴隷商はゲラゲラ。と笑った。



「奴隷とは。人間としての名誉、自由を認められず、人々からは差別され、主人の所有物として扱われるモノ同然。奴隷に優しくする主人など聞いたことがありませんよ。 珍しい変わったお客様だ」



「料金は?」



「金貨3枚。ドラグニアの通貨で、3万ロギーでどうでしょう」



「ドラグニアの通貨の通貨で。って言い直すのは変だな。他にも通貨がある、もしくは俺が他の国から来た人間に見えたのか?」



「最初に会った時、言いませんでしたか? 異国から来た方でしょうかと。お客様はもしかしてこの世界とは違う何処か。そうですねー、日本という場所から来たのではないでしょうか」



聞いた瞬間、背筋に寒気がした。この怪しい男、もしかして俺の事を知っているのか?俺を異世界ドラグニアに転生させた何者かの正体を。 元いた世界に帰る術を知っているのではないだろうか。



「なぜ誰も知り得ないはずのことを、アンタが知っている。詳しく教えてもらおうか?」



「まぁ、まぁ。落ち着いて、お客様。順序が違うでしょう?まずは、買うと言ったからには、先にお支払いを済ませないと」



繋がれた鎖の部分を奴隷商は強く手で引っ張ると幼女を引きずって俺の前へ強引に来させる。

長い髪で首輪が隠れているのか、首輪を見える様にするため、奴隷は俯いて黙ったまま着ていたローブを脱いだ。



「ちょ……、ま」



見てしまった。



小さな身体と長い髪に、白く雪のような素肌が露わになる。胸は膨らみかけ、まだ幼くも発展途上のそれは確かに存在している。細くてなんとも言い難い、あそこは……っといけない、触ったら逮捕される。


小柄で可愛らしい身体だ。



奴隷商は俺に手を首輪に手をかざせと指示すると、紋章が出現して強く発光した。



「魔法で、お客様の生体データを奴隷の首輪に登録しました。この奴隷は今から主の命令を拒否する、襲いかかるなどの違反は出来なくなりました。あなた様のモノです。商品の料金は……」



「わかった」



俺は金貨3枚。3万ロギーを奴隷商に手渡す。



「今日は良い日でした、お客様またのご来店お待ちしております」


「勘違いしないでくれ、もう奴隷なんて買わないからな。俺は人を道具扱いするような人間じゃあない。こんな場所に小さな女の子を置いていたら可哀想だと思ったから、外へ出してあげる為に買ったんだ」



「ずいぶんお人好しな方ですねー。その甘さが、この世界では命取りとなることでしょう」



「言ってろ。捨てられた奴隷を拾って売りモンにしてる奴に甘いって、言われたかないね」



奴隷商に反論をかましてやった。



「お客様。その優し過ぎるところも、嫌いじゃあないですが」



出口の扉を開けると奴隷の幼女へ俺の後を着いて来るように指示して店を後にする。


まだ怯えていているのか、歩いて来ないので鎖を2、3回引っ張ってこちらへ来させる。



「うぐ……。い……、痛いです」



再度、奴隷商が軽くお辞儀をして挨拶する。



「またのお越しをお待ちしております、お客様。いえ…、ヒロアキさん」



俺と奴隷の猫耳幼女は裏路地から城下町の大通りへ向かって歩いて行ったのだった。












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