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はぐれ転生者で異世界活動  作者: 双葉きずな
第一章『異世界からの来訪者』
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第一章3『転生したこの世界について。その国の名はドラグニア』




「名前はヒロアキ、だったかな。君が僕たちのグループに加入してくれて助かったよ」

「こちらこそ、恩に着る」


ブロンズランクの冒険者の四人組に誘われて一時的に仲間に加えてもらったヒロアキは、共にクエストへ参加させてもらえることになった。


冒険者たちが依頼されたという「クエスト」の内容は以下の通りだ。

どうやら村のおじいさんからダンジョンの洞窟へ行って風邪に効く

薬草を取ってきて欲しいといった内容のものであるらしい。



冒険者のたちの職業は

男の剣士。




女性の魔法使い、




弓使いのシーフ、

回復術師のバランスの取れた四人組。その中にヒロアキは参加させてもらった。



「なあ、ダンジョンへ向かう前にこの世界のことについて教えてくれないか?」

「私たちのお願いを引き受けてくれたものね、わかったわ」



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※







魔法使いのお姉さんの話を纏めると、

この異世界の名前は『ドラグニア』かつて大昔に、巨大な竜が起こした戦争からそう呼ばれたらしい。



ドラグニアにある世界樹と、その樹きから発生する『レノ』と呼ばれる空気中には見えないこの世界独自の、元素に含まれるエネルギーを使用する事によって、


詠唱を唱えると魔法という

非科学的な異能な力が使えるようになるという事を教えてもらった。




そして数ある王が統べる国の中で、


俺がいるのは、王都エリクト王国。



「ヒロアキが僕たちに協力してくれたら依頼された報酬の分け前を、

君に渡すことを約束するよ」

「マジでか!金欠でどうしようかと思っていたところだ」



回復術師の少女がヒロアキに尋ねる。



「ヒロアキさんは、どうして王都に?何かご用事でしょうか」



「異世界召喚って知ってる? 誰だか知らないけれど突然、何者かに転生させられちゃってさ。意識を失って、気づいたらここに来ていたってわけ」



四人の冒険者たちは俺の言っている事がなんなのか理解できてない様子だった。



「――召喚ってなんのことだい?異世界……てんせい、 要するにヒロアキは、こことは別の場所からワープして連れて来られたという意味かい?」

「瞬間移動とかワープの類とかではないんだけど、まぁだいたいそんな感じに思ってくれて構わない」



剣士の男が言うワープと転生は、そもそも仕組みが違うが

異世界転生も他の場所に移動するというのは変わらず

どっちも

似たようなものなので細かい違いは

気にしないでいることにした。



「あなたがどこの誰であろうと私は気にしないわ。せっかく彼が協力してくれるって言ってくれてるもの、喜んで歓迎するわよ」

「そうですね、戦力は多いに越したことはないでしょうし」



魔法使いのお姉さんと弓使いの男は好意的に

出迎え、ヒロアキを歓迎してくれている。



「ヒロアキは何かスキルを習得していたりはしているのか?」

「いいや、

冒険者登録をした時ステータスの一覧には何も表示されてなかった。使えるのかどうかも俺にはさっぱり分からなくて」

「スキルについてはレベルが上昇すればいずれ開放されるだろうから心配要らないよ。君は初心者だ、後ろから援護してくれるだけで十分だよ」




なんという器の広い冒険者たちだろうか、こういうのを冒険者の手本にしたい。


「ふふっ、初心者の坊やさん。かわいいわね。そんなに緊張しなくてもいいのよー?お姉さんが手とり足取り教えてあげるから」

「え…、ええ、ありがとうございます!じゃあ今度時間がある時に是非お願いします」



辺りを見渡すと草原にLv4の一角うさぎの群れが現れた。


杖を魔物に向けた魔法使い――杖の先端から氷の飛礫が一角うさぎへ放たれていた。重ねて弓使いの男が矢を射る追撃、

尖った矢の先端に付けられた(やじり)が、魔物の群れに命中する。



「――今のが魔法」



魔法使いが打ち出した氷の飛礫それは、ゲームやアニメで何回も見ていた光景、それが実際にこの目でこうして見れる日が来ようとは。


息の合った連携に下から二番目のブロンズプレートの冒険者と言えど、かなりの実力者の持ち主であることがわかる、

おそらく長い時間一緒に活動してきた間柄だろうか。お互いを信頼して背中を預けている様子だった。



飛礫が発生した時の効果音、放出されたエネルギーが弾ける瞬間その全てがゲーム以上にリアルだった。ファンタジーでしかなかった初めての現象に感動した。



「異世界の戦闘マジすげえ……アニメで見たことある場面そのまんまだ」

「ヒロアキに覚えておいてほしい。冒険者になってすぐの初心者がよくやりがちなのは魔力のエネルギー残量を確認せず使ってしまうことだ」

「そうなのか?」



世界樹から発生する『レノ』と呼ばれる空気中には見えないこの世界独自の、元素に含まれるエネルギーを使用する事によって、魔法を使用することが可能になる。


当然、魔力は無尽蔵に使える訳ではなく

現在の冒険者ランクや使用者のLvに応じて魔法を使える回数が異なるのだ。



Lvが高く冒険者のランクが上がって高ければ高いほど、それに比例して高威力の上位魔法での攻撃やサポートする補助の魔法が開放される仕組みになっているらしい。



「プラチナプレートよりさらに上の道を極めた冒険者は神の人。神人(しんじん)や、英雄の勇者と呼ばれ人々から称えられる存在もいるみたいだけどね」

「目標はプラチナランクで、それよりも上位に到達することが冒険者たちの最大の目的ってワケか」

「御名答」



あざやなチームプレイに見惚れていると木の枝か何かで切ってしまったのだろうか足首の辺りが少し出血していた。


「痛てッ……気がつかなかった」

「ヒロアキさん、待ってください。感染症などにかかってしまうと大変なので、私の回復(ヒール)魔法で治療しますね」



傷口の近くへ回復術師の少女は掌をかざすと、光る緑色の粒子が周囲に浮かぶ。それは痛みなどはなくむしろ、温かささえ感じた。



「――もう動いて大丈夫ですよ」

「なんだこれ、傷口があっという間に塞がったぞ」



怪我と言うには大した傷ではなかったのだが、

傷を治療する時っていうのは消毒液を使って傷口を絆創膏で塞ぐくらいの手順が必要なものだと思ってた。

これは日本での治療での一般的な仕方。



だが、ここは異世界ドラグニア。日本での技術や常識は超えて

もはやヒロアキにとって超常現象の域、傷口はものの数秒で治ってしまった。



一角うさぎの群れを撃退した冒険者の四人組+ ヒロアキは、ついに目的地のダンジョンへ到着する。



「もうすぐダンジョンの近くだ。皆ここからは油断せず、気を引き締めて!詳しい話しはまた今度にしよう。」



リーダー格の剣士はポーチから一本のロウソクを取り出すと、魔法を使って人差し指から小さな火を出現させるとロウに火を灯して明かりの代わりになる道具を作った。


洞窟へ入る前に準備運動をしておく。怪我なんかした暁には、足手まとい扱いされてしまうからな。

俺たちは気を引き締めダンジョンの中に足を踏み入れたのだった。

薄暗い洞窟の中を進んで行くと、魔物が出現した。


ゾンビ化したゴブリンの群れだ。


弓使いのシーフが先制攻撃に矢を射る。

魔法使いは詠唱し、氷の飛礫を放つ。

剣士は剣で応戦する。ヒロアキも戦闘に参加しようと武器を構えるが、 を決定打を与えるほどの装備は無かったのでベテラン冒険者の彼らに甘えて、任せることに。彼らの連携プレーの前に、ゾンビゴブリンの群れは呆気なく全滅した。


戦闘が終わってリーダー各の男が、たいまつを使った。そして周囲を見回すと ダンジョン内の通路の壁を松明が等間隔で設置されており、奥まで見渡せるようになっていた。

他にも周囲の壁や地面に光苔が生えており、明るく見通しが良くなっている。


たぶんだが冒険者たちにとっちゃこの洞窟ダンジョンの構造やら色々詳しいんだろうなぁ。

とにかくRPGゲームみたいだと感動するヒロアキだった。



――もうどれくらい歩いて進んだのだろうか、冒険者四人組とヒロアキはダンジョンの奥地へと潜入する

中は暗く、足場も悪い。

ロウソクの灯りだけが頼りだ。



洞窟、ダンジョンにしてはヤケに静かに感じる。ロールプレイングゲームだったら一角獣とか吸血コウモリが襲いかかってくるイベントが発生するタイミングじゃないか、



「皆さん、お目当ての薬草がありましたよ」

収集クエストにしては簡単すぎる。まるで初心者ステージ。魔物や動物の気配すら感じない、ヒロアキだけが異様な何かズレの違和感を感じていた。


舗装されていない異世界での大地。四人の冒険者の動きについていくだけでもやっとだった。その時、ヒロアキはうっかり仕掛けられていたトラップを踏んでしまう。



「……きゃーーっ!」


暗いダンジョン内に回復術師の女性の叫ぶ声が響いた。

先にロウソクを持って先行していたリーダー格の剣士の男性が叫び声に反応して振り返るとそこには言葉に出来ない光景があった。


黒い頭をした狼の姿をした魔物が群れを成して集団で現れ、鋭い眼光でターゲットに狙いを定めると、

最後の列にいた回復術師の女性目掛けて一斉に襲いかかってきた。



「だ、誰か助けて!」



「………。 グガガガガガーーーーッ!!」

耳の鼓膜が裂けるほどの、この世の生物とは思えない様なゲームでしか聞いた事のなかった魔物の雄叫びが空気を震わせながら鳴り響く。

その瞬間、刃物の様に尖った恐ろしい狼の牙が回復術師の女性の肩や腕、背中へ向かって噛みつく。

ダンジョンの奥地だというのにヒロアキが感じた違和感の正体、冒険者達がいともたやすく侵入出来た訳、それこそが罠だった。



狼の魔物たちは四人の冒険者よりもLvが一段階も差があった。

知能が高い生き物で、数百メートルも離れているヒロアキと冒険者の

一団、人間たちのニオイや音で感知し、トラップを仕掛けていたのだ。



血しぶきが飛び、片方の肩から下は切り落とされて欠損した状態。

すぐ弓使いの男が彼女を救出しようと

武器を構えた時には、既に回復術師は息絶え絶命していた。



日本にも生息しているカラスという生き物は

頭が良いため、一度見た人間の顔を覚えていると言うが、それと同じ様に過去に何人もの冒険者たちがダンジョンを訪れていたため人間がどういった種族なのかを理解し、ニオイや足音を脳内に記憶して狼の魔物はそれらを正確に覚えていた。回復術師を一番に狙ったのも、与えたダメージを回復されないようにするためだった。



「お、おい!みんな!しっかりしろ。正気を、意識を保たないと全員死ぬことになる」

「い……イヤ、回復術師ちゃんが………。なんでなの?、何でこんなことにならなくなるちゃいけないのよ」

「来た道を戻って引き返しましょう。急いで!」



絶対絶命の状況下。悲しんでいる暇は彼らにはない、

次は自分達が恐ろしい牙の手に掛かって殺されてしまうからだ。

目も背けたくなるほど無惨と化した回復術師の女性の残骸に狼の魔物が気を取られているわずかな隙に、

ヒロアキと生き残った三人の冒険者たちは死にものぐるいで暗いダンジョン内を走って引き返した。



ヒロアキは恐怖した。

ファンタジー小説やゲームでしか見たことのない出来事が本当に目の前で起こっているという確かな現実。これはフィクション作品やゲームなんかじゃない!現実なんだ、しっかりしろ。そう俺は自分に言い聞かせるように押し潰されそうな気持ちを抑えて心の中で叫んだ。

今まで生きてきた人生で味わったことのない圧倒的な恐怖に震えが止まらない。


「ちくしょう!何でいつも俺の人生は空回りで逆のことばっかり起きるんだよ!良いことなんてない」



結婚して家族を持ったり、まだやり残したことがたくさんある。

死にたくない、死にたくない。死にたくない!ヒロアキは三人の後を傷だらけになりながら追いかけて走り続けた………。











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