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あまり驚かないんですね

 人族に受け継がれている? 

 ということは、人族すべてがその因子を持っているということなのか。

 そんなエクセラの疑問を見透かしたように、エディが応じた。


「勘違いしないで下さい。因子は人族で受け継がれている力ですが、必ずしもすべての人族が因子を持つわけではないのです。まあ魔族にとっては、何とも迷惑な力であることには変わりがないのですがね」


「言っていることが、よく分からねえぞ」


 ガイは渋い顔をしている。


「簡単に言うと、因子を持って生まれてくる人族と、そうではない人族がいるってことですね」


「何か妙な話よね。神から与えられたのだから、人族すべてが因子を受け継いでいるんじゃないの?」


 エクセラとしては当然の疑問だった。


「気まぐれな神から与えられた力ですからね。因子を持って生まれて来る来ないは、そんな神のみぞ知るといったところでしょうか」


「神ね……随分と壮大な話になってきたな。俄には信じられねえぞ」


 ガイの言う通りだった。エクセラ自身も素直には信じられない。


「それで因子を持っていると、どうなるのかしら?」


「簡単な例ですと、勇者でしょうね。因子を持つ者が勇者となるわけです」


「……でも、おかしいわね。勇者なんかじゃないファジルにも、因子があるようなことを言ってたけど?」


「そうですね。ただ、公には勇者という存在、それは一人でないと困るわけですよ」


 それは確かにそうなのだけれど……。

 エクセラはそう思い、少しだけ考え込んで口を開いた。


「じゃあ、勇者と同じように因子を持つ人。つまりは、勇者になれる人が、ファジルのように本当は何人もいるってこと?」


「言ってみれば、そういう話になりますかね」


 あまりに話が意外すぎて、理解が追いついていかない。勇者とは因子と呼ばれるものを持つ者。そして、その因子を持つ者は沢山いるというのだ。


 まあいいとエクセラは思う。他にも枝葉の疑問はあるけども、それらは後回しでよいだろう。もう一つ、大きな疑問がある。


「エディ、ここは魔族の国なのよね? なのにこのお城もそうだけど、この荒れかたは一体、何なの? それに肝心の魔族も見当たらないし」


「もっともな疑問でしょうね。ここは魔族の国というよりも、正確には……かつて魔族の国だったということです」


「かつてって……じゃあ、魔族は滅んだってこと?」


 エクセラの声が思わず跳ね上がる。


「そうですね。仰る通りです」


 エディがあっさりとそれを認める。そして言葉を続けた。


「魔族は……滅ぼされたのですよ。勇者を中心とした人族五千名の因子持ちによって。無慈悲に……」


 滅ぼされた。

 エクセラはエディの言葉を頭の中で繰り返す。ならば、自分たちが調べていた魔族とは何なのか。あのバルディアの惨劇を起こしたという魔族は何なのか。


 エディの言葉を受けて、様々な疑問がエクセラの中で渦を巻く。


「それはいつの話なのかしら?」


「……ざっと五百年前でしょうか」


 五百年。それほど昔の話ではない。では、なぜ魔族が滅んでいることを自分たちは知らないのか。正確には、なぜそれが隠されているのか。


「あれ? エクセラさんもガイさんも、あまり驚かないんですね」


 エディは何だか不満げな様子だった。


「充分に驚いているわよ。色々と理解が追いつかないだけなんだから」


 エクセラはそう言ってガイに顔を向ける。


「ほら、ガイなんて口を開けているだけじゃない」


 ガイは先程から口を開けたままで、凍りついた石像のように固まっている。


「最後に最大の疑問ね。王国は何で魔族が滅んでいることを隠しているのかしら。それもあんなに大げさな城壁まで用意して」


「まあ、あの城壁は魔族が滅ぶ前から存在していた。そう言った方が正確ですね」


 エディはそう言って一瞬、言葉を切った。


「王国がなぜ、魔族が滅んでいることを隠しているのか……」


 エディはそこで、こてっと小首を傾げた。

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