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必殺奥義

「ふっふっふっふ。あまちゅあ作家のハッシーこと、ハシモト氏が考案したというこの門外不出の必殺奥義! 喰らうのですよー」


 そう言ってカリンはとてとて歩くと、エクセラのたわわな胸の下に移動した。そして、エクセラの胸の下から、カリンの不敵な声が響いてくる。


「無駄に大きいだけで使い道がない、エクセラの残念おっぱい。その無駄に大きいだけのおっぱいがあるから、エクセラは自分の足元が見えないはず。となれば、残念おっぱいの下にいるぼくの姿も見えないのは明白なんですよー」


「はあ? それはそうだけど……」


 エクセラは少しだけ戸惑ったように言いながら、一歩だけ後退する。エクセラから丸見えになってしまったことに気がついて、カリンは慌てて再び胸の真下にとてとてと移動する。


 それを無言で二度、三度と繰り返す。まるで無言の攻防戦のようだった。


「……あんたねえ」


 エクセラの口から怒りがこもった声が漏れ出す。


「何をしてるのよ! それにさっきから残念だの無駄だのって、うっさいのよ!」


 エクセラがするりと一歩後退して、カリンの頭を叩いた。派手な音が周囲に鳴り響く。


「ほ、ほえーっ? ハッシー考案、門外不出の必殺奥義が! あっさり破られた?」


「さっきから何を言ってるのよ! それに、あまちゅあ作家のハッシーって誰なのよ!」


「そんなのは、ぼくだって知らないんですよー」


 ……何をしているのやら。

 ファジルが心の中で呟いた次の時、再びカリンの頭が派手に叩かれたのだった。





 魔導学院の蔵書室へ通うようになってから、既に三週間が過ぎ去ろうとしていた。エクセラとエディは休憩を除けば蔵書室に籠りっぱなしだ。ガイの方は、たまにカリンを伴って王都周辺の魔獣狩りと鍛錬の日々を過ごしているようだった。


 ファジル自身は特にやることがない。気が向けばガイの鍛錬につきあうこともある。だが、基本的にガイとの鍛錬は痛いのであまり気分が乗らない。


 なので大抵は日差しが心地よい中庭の椅子に座り、暇に任せてぼんやり口を開けて過ごしている日々だ。ガイとの魔獣狩りに同行しない時のカリンがその横にいたりもする。


 たまに学院の生徒が不審者を見るような目で見てくるが、ファジルはそれを気にしないようにしていた。実際、暇に任せて口を開けているだけなのだ。何も悪いことはしていない。


「暇だな」


「ほえー。暇なんですー」


 ファジルの隣で同じように口を開けているカリンは、時々ガイと魔獣退治に同行している。だから日々全く何もしていないのは、自分だけということになる。


 全くもって役立たず。

 自身を全否定してしまう強烈な言葉を頭の中で泳がせている時だった。中庭の椅子に座っているファジルに三つの影がゆっくりと近づいてきた。


「やあ。思いもしないところで会うものだね」


「ほえー? 笑顔が胡散臭い勇者なのですー」


 カリンの遠慮ない言葉に反応したのは、勇者ロイドの隣にいた魔導士のマリナだった。


「はあ? 何なの? この躾がなっていない子供は?」


「ほえーっ? エクセラの次に怖い人もいるのですー」


 カリンが慌てたように腕をばたばたと上下に振る。マリナがエクセラの次に怖いとは、カリンの中ではマリナもかなりの評価らしいとファジルは思う。


「子供の言うことだぞ、マリナ。そんなに目くじらを立てることでもない」


 いかにも司祭らしい服を着ている男が言う。確かグランダルという名の聖職者だったはずだ。


「子供? ふん、どうなんだかね」


 マリナは吐き捨てるように言って、そっぽを向いてしまう。


 以前から思っていたことだったが、マリナはなかなかにして強烈な個性の持ち主のようだった。この調子では、エクセラと気が合うことがなさそうだとファジルは改めて感じた。。


「それにしても、魔法学院で一体何をしているんだい?」


 場を取りなすようにロイドが尋ねてきた。

 魔族について調べていますと言えないことぐらいはファジルにも判断がついた。


 魔族に関して調べることがエディの言う通り王国全体の禁忌であるならば、王国と深く関わる勇者に知られるのは何かとまずいとファジルにも想像できた。

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― 新着の感想 ―
あれ? どこかで見た名前が。(^^;
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