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王都オルシュタット

 王都オルシュタット。


 王国内のほぼ中心に位置する政治と経済の中心地である。言うまでもなく、王国内では最大規模の都市となる。


 石畳で綺麗に整備されている大通り。その石畳が陽光を反射して、銀色にきらきらと輝いている。大通りの両脇に並んでいる数多の店からは、甘い焼き菓子の匂いや革細工の香ばしい匂いなどが漂ってくる。


 それらにもファジルは圧倒されたのだが、何より行き交う人の多さにファジルは驚かされて目を丸くしていた。


「凄い人だな。祭りでも始まるのかってぐらいに凄い人だ。いや、きっとお祭りが始まるのかもしれないな」


 ファジルの率直な感想に隣ではカリンが、ほえーといった感じで可愛らしい小さな口を開けている。


「ファジルもカリンも王都は初めてだものね。驚くのは無理もないのかな」 


 エクセラが何故か自慢げに軽く胸を反らしている。それに合わせて、他人よりもかなりたわわな胸が宙で揺れている。


「俺も王都は久しぶりだな。住んだことがあるわけじゃないし、まあ俺も王都は詳しくはない」


 ガイの言葉に、筋肉ごりらの分際で王都に来たことかあるなんて生意気なんだぞと思いながら、ファジルはエディに視線を向けた。


 エディは最早、普段仕様と言っていいほどになっている奇妙な仮面を変わらずにつけている。奇妙というか、ふざけた仮面と言った方が適切かもしれない。


 もっともその仮面の下にある素顔は骸骨なわけだから、仕方がないと言えば反論のしようがない。だが、それにしてもそんなふざけた仮面をつけなくてもとファジルは思う。


 それに最近、仮面の頭頂部に赤い房をつけるようになっていた。それをつけ始めた理由は知らない。


 ただその赤い房が何かの加減で揺れるのを見ていると、妙に癇に触る。特にエディがふざけた態度を取った時にそれが揺れると、癇に触るどころか殺意を覚えるほどだった。


 今もかっかっかっと笑っているエディの声に合わせて、赤い房が揺れている。やはり、かなり苛っとする。カリンに頼んで、その存在ごと消してしまおうかと思うぐらいに。


 カリンと言えば、王都の賑やかさに驚く素振りは見せてはいるものの、随分と大人しい印象だなとファジルは感じていた。


 そのように考えてみると、王都に近づくに従ってエクセラと喧嘩をする回数もかなり減ったような印象だった。それまではそれこそ四六時中、エクセラと喧嘩をしているような感じだったのだが。


 そんなことを考えながらファジルはカリンの横顔を見ていた。カリンは僅かに口を開いて真っ直ぐに前を見ている。やはり横顔も可愛らしい。何だか神々しくて涙が出てきそうだ。


 しかし、一方でいつもと違って様子がどこかおかしいと感じるのも事実だった。エクセラもそれに気がついたようで、少しだけ不思議そうな顔で口を開いた。


「やっぱり最近、様子がおかしいわね。落ちてるお菓子は食べちゃ駄目だっていつも言ってるじゃない」


「ほ、ほえー? 落ちている物なんて食べないんですよー。エディみたいなこと、ぼくはしないんですよー」


 カリンが両腕を広げて上下にばたばたと振る。


「えー? カリンさん、何だか酷くないですか? 私だってそんなことは滅多にしないですよ」


 ……滅多になんだ。

 エディがそう言って大げさにのけ反っている。その姿も苛っとするのだが、それに合わせて揺れる赤色の房が何よりも腹立たしい。やはり馬鹿にされている気がしてくる。

 

 ファジルの腰にある獅子王の剣。エクセラが旅立ちの時に家から勝手に拝借してきて、ファジルがそれを借り受けているものだ。無意識の内にその柄をファジルはそっと握る。


「えー? 嫌ですよ、ファジルさん。そんな冗談は」


 ファジルの動きに気がついたエディが、再び大げさにのけ反ってみせる。無意識で長剣を握ったのは事実だが、その気持ちに嘘はない。


 もっともこんなに人が多いところで、剣を抜けば大騒ぎになることぐらいファジルにも分かってはいる。


 ファジルは気持ちを落ち着かせるために軽く深呼吸を繰り返した。そんなファジルに気がついたのだろうか。エクセラが少しだけ苦笑のようなものを浮かべて、ファジルに向けて口を開いた。

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