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気のいい彼ら

「ほらほら、エクセラさん、落ち着いて下さい。そんなに怒っていると、綺麗なお顔が台無しですよ。カリンさんも可愛らしいお顔が勿体無い……」


 こういった言葉をさらっと言えるところが、この面白おっさん骸骨の凄いところだとファジルはいつも思う。エディは更に言葉を続けた。


「それよりも今後のことを相談しなければいけないでしょうね。ファジルさんは、これからも魔族について調べるつもりですか?」


 エディがファジルに顔を向ける。声音は真面目だが、つけている仮面がふざけている。ふざけすぎている。見ていると無性に腹が立ってくる。


 しかし、エディの問いかけももっともなものだった。自分はこれからどうしたいのだろうと改めてファジルは自問する。


 一瞬だけ考えてはみたものの、答えはやはり明確のようだった。自分は勇者になりたいのだ。その資格が何もない自分ではなれないことは分かっているが、勇者になりたいという想いを抱き続けたいのだ。そして勇者とは対極の位置にいる魔族。


 ならば、考えるまでもないだろう。何故、魔族に関わると怒られるのかは分からないが、それも含めて魔族について調べる。それが勇者になりたい者としては行うべきことなのだろうとファジルは思う。


「……ファジルさんの顔を見ていれば、答えを聞くまでもなさそうですね。何故、そこまでファジルさんが勇者になりたいのかは分かりませんがね」


「そんなの決まっているじゃねえか。こいつが勇者かぶれだからだろうよ」


 エディの言葉にガイが反応する。勇者かぶれとは酷い言われようだなと思うが、事実なのだから仕方がない。


「ファジルは勇者になるんですよー」


 カリンが嬉しそうな顔で飛び跳ねながら言う。


 いや、勇者にはなれるはずがないだろうとその場では誰も口にしない。ファジル自信も含めてその場にいる誰もがそんなことは分かっているはずだった。

 ……カリンだけは微妙かもしれないが。


 しかし、ファジルの勇者になりたいという気持ちを皆は理解してくれているようだった。大体、勇者になれないことは分かっているけども勇者になりたいといったような旅に同行しているのだ。エクセラもカリンもガイも、そしてエディも基本的には気のいい優しい連中なのだ。


 ファジルの思いに半ば呆れてるような態度や言葉を言いつつも、それを真正面から誰もが否定しようとはしなかった。


 ファジルは嬉しそうな顔で飛び跳ねているカリンの金色の頭に片手を置く。するとカリンは更に嬉しそうな顔をする。


 ……うん。この子だけは本当に俺が勇者になれると思っているのかもしれないな。


 いずれにしても、このように気のいい彼らを巻き込んでしまっていいものなのかとファジルは思う。今後、どの程度の危険があるのかなんて分かるはずもないのだが、現状は魔族に関して調べていたら死人が出てしまったのだ。


 となれば今後、自分たちにそれが起こらないという保証はどこにもない。現にボリスと名乗った若者を躊躇いもなく殺した者たちからは、これ以上魔族に関して調べるなと釘を刺されているのだ。


 この話をエクセラに切り出した時は怒りとともに一蹴されたけれども、エクセラも含めてこのままでいいはずがない気がする。自分の都合だけで、エクセラたちを危険な目に合わせてよいものなのか。


「ファジル、また危険だ何だって考えているんでしょう?」


 エクセラに顔を向けると、エクセラはなんでもお見通しなんだからといったような得意げな顔をしている。


「カリンたちは知らないけど、私はついて行くわよ。幼馴染みとして、危険かもしれないっていうなら尚更だわ。ファジル一人では心配だもの」


「ほえー? 危険だから旅について来るなってことなんですかー? ぼくはファジルが勇者になるのを応援するからついて行くんですよー」


 カリンが両手を挙げて、再びその場でぴょんぴょんと飛び跳ね始める。

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