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あれは、ぱんつだな

 エクセラはそんな父親が自慢にしている娘なはずであり、彼女が小さな頃から教育にも熱心だった。エクセラ自身に魔法の才があったとはいえ、王都にある何かとお金がかかる王立の魔法学院に娘を送り出したぐらいなのたから。


「うっさいのよ。さっさと行くんだから、着いてきなさい!」


 ファジルの心配など少しも意に介していない様子でエクセラがそう言い放つ。


「お、おい、待てって!」


 手渡された獅子王の剣を胸に両手で抱いて、ファジルは慌ててエクセラを追いかけるのだった。





 「……エクセラ、あれは、ぱんつだな」


 ファジルが右手の一点を指し示しながらそう言った瞬間、ファジルは灰色の頭をエクセラに叩かれる。


 普通に痛い。

 加減してほしいと思うファジルだったが、それを言えばまた叩かれるのは分かっているので、黙っていることにする。


「あれを見て最初に言うのは、ぱんつじゃないでしょう。どれだけ助平なのよ」


 そういうものなのか? 

 ファジルは不満を抱きながらも仕方ないので、別の状況を口にした。これ以上、頭を叩かれたらたまったものではない。


「……地面に子供が埋まっているな。それも逆さまに」


 逆さまに、しかも奇麗に垂直の状態で腰から上の半身が地面に埋まっている。逆さのため裾がはだけてしまっていて、桃色の可愛らしい下着が丸見えだ。


 ……まったくもって、状況が分からない。


「普通に生きていて、人が逆さまに埋まることなんてないわよね?」


 まあ、それはそうだろうとファジルもエクセラの言葉に同意する。普通に生きていて逆さまに埋められたら、たまったものではない。


「だから、関わらない方がいいわね。関わると、きっとろくなことにならないわよ。さ、行くわよ。見なかったということで」


 エクセラはそう言って、無情にも素通りしようとする。


 いやいや、事情は分からないが埋まっているのは女の子で、まだ子供なのだ。そのまま素通りというわけにはいかないだろう。


 という訳でファジルは見事なまでに逆さに埋まっている子供に近づく。


 取り敢えず下着が見えているのは可哀想だ。ファジルはそう思って、捲れ上がっている裾を持って可愛らしい桃色の下着が見えないようにしてあげる。


 さて、これからどうしたものか。

 救いを求めてファジルはエクセラに茶色の瞳を向けた。


「最初に気にするところが、それなの? 相手が子供とはいっても、いや、子供だけに何か嫌なんだけど」


 エクセラが片頬を僅かに引き攣らせている。ファジルは言われている意味が分からず、取り合わないことにする。


「で、どうする?」


「はあ? そんな真面目な顔で子供の裾を持ってどうするじゃないわよ。だから、放っておきなさいって。死んでるかもしれないんだから。見なかったことにするって言ったでしょう?」


 エクセラがそう言った時だった。地面から突き出ている両足が派手に動き始める。ファジルの手から裾が離れてしまい、再び可愛らしい下着が丸見えとなる。


 次いで地中からくぐもった声が聞こえてくる。


「おーい、助けるんですよー」


 ファジルとエクセラは顔を見合わせる。さすがに声まで聞こえているので無視するわけにはいかないようだった。


 ファジルとエクセラは地面から突き出ている足を一本ずつ持つと、せーので引き上げた。引き抜いた瞬間、勢いが余って二人とも地面に尻餅をつく格好となる。


「ほえー、ぼく、死んじゃうのかと思ったのですー」


 姿を現したのは十歳に満たないような少女だった。まず最初に驚いたのは美しいと言うべき容姿だった。大きな青い瞳と腰まで伸ばされた金色の髪。ところどころが土で汚れていたが、それは彼女の美しさを損なうものではないようだった。


 少女はお尻をぺたんと地面につけて、可愛らしい口を少しだけ開けている。


「なあ、どうして地面になんて埋まっていたんだ?」


 地面からまさに引き抜いた少女に向かって、恐る恐るではあったが、ファジルはもっともなことを口にする。


「ほえ? ぼく、カリンなのですー」

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