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やっぱりそうなのね

「まあ、いいじゃねえか。勇者になるんじゃなくて、なりたいって奴の旅に同行するんだ。そんな奴らが暇って話は間違っていねえよ。実際、何か他にやることがあるわけでもないしな」


 見かねたガイが宥めるように割って入ってきた。


「それはそうだけど、何かファジルの言い方が気に入らないのよね。何か馬鹿にされている気がする」


 エクセラは深緑色の瞳をファジルに向けた。何か嫌な感じの視線だ。


「いや、馬鹿にはしてないぞ。素直にそう思っただけだ」


 ファジルが即座に反論する。


「そうなんですよー。エクセラはファジルに当たりが強いんですよー。そんなにファジルが嫌ならついて来なければいいんですよー」


 助けてくれるつもりなのか、カリンが口を尖らせながらエクセラに反論した。


「はあ? カリンは黙ってなさいよ。大体、嫌なんて私は言ってないんだからね。なんちゃって幼児は黙ってなさい。地面に逆さまに埋められていたくせに」


「ぼくはなんちゃってじゃないんですよー」


 カリンが両手を上下にばたばたとさせながら、更に言葉を続ける。


「それに埋められていたんじゃなくて、埋まっちゃったんですよー」


「はあ? どうすれば逆さまに埋まっちゃうのよ。悪いことをして、誰かに埋められていたに決まっているじゃない」


「違うんですよー」


 根拠のないエクセラの決めつけに、カリンは更に激しく両腕を上下に振る。


「カリンは埋められていたのか?」


 ガイが興味深そうな顔つきで訊いてくる。


「そうなのよ。しかも大胆にぱんつを見せながらね」


 エクセラの悪意があるような言葉にカリンは血相を変える。


「ほえー! 見せてないんですよー。見えちゃったんですよー。それに埋められたんじゃないんですよー」


 半ば絶叫に近いようなカリンの言葉だった。


「そういえばそうだったな。あのぱんつは可愛らしかった」


 だが、ファジルのこの言葉で、騒然としていた場が一瞬にして凍りついたようだった。


「ファ、ファジル?」


「ほ、ほえー?」


「い、いや、お前、それは流石に気持ち悪いぞ」


 皆が一斉にファジルのことを微妙な顔で見る。


 いや、何でそんな目で見られるのかが分からない。自分は単純に可愛いと言っただけで、そこに衛兵さんに怒られてしまうような性的な意味を込めたつもりはないのだが。


「い、いや、変な意味じゃないんだぞ」


 ファジルは慌ててそう言った。ここで皆に変な誤解をされてもファジルとしては面白くない。


「いや、お前、変な意味じゃないって、そこには変な意味しかなかったじゃねえか」


「ファジル、ファジルってやっぱりそうなのね……」


 ガイもエクセラにしても微妙に片頬を引き攣らせているようだった。


 いや、だから変な意味ではないんだって。それに、やっぱりって何なんだよ。

 ファジルが心の中で反論していると、カリンが少しだけ恥ずかしそうにして口を開く。


「えへへ、ファジルが見たいのなら、ファジルだけにならまた見せてあげても……」


 言葉の途中でエクセラがそんなカリンの頭を叩いた。派手な音が響き渡る。いつもより叩き方が強かった気がする。


「何を言い出すのよ。このなんちゃって幼児は!」


「ほえー」


 涙目でカリンが金色の頭をさすっている。混沌としてきた場にガイが呆れたような声で言う。


「お前らは仲がいいんだか、悪いんだか……」


「はあ? 悪いに決まっているじゃない。こんな勝手についてきたなんちゃって幼児と仲よくできるわけないでしょう」


 腹立ち紛れにガイにも喰ってかかるエクセラに、ガイも引き気味な様子だった。


「そ、そうか。それにしても天使族は珍しい。実際、俺も見たのは初めてだしな」


「えへへ」


 褒められた気がしているのか、カリンは照れたように笑っている。


 確かにガイが言うように天使族は珍しい。本の中や話では聞いたことがあるのだが、どちらかと言えば本当にいたんだと言いたくなってくるような存在だった。

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