表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/119

管理

「私にも分かりません」


 それとほぼ同時だった。エクセラの手のひらから火球がエディの顔を目掛けて飛んでいく。火球は小首を傾げたエディの顔に直撃するかと思われたが、その直前で四散する。エディが防御魔法を展開したようだった。


「ち、ちょっと、エクセラさん! 燃えちゃうじゃないですか! 死んじゃうじゃないですか!」


「はあ? 燃やしてやろうと思ったんだから、当然でしょう!」


「い、嫌ですよ。ちょっとした冗談じゃないですか。あまりに空気が重かったので、少しふざけただけですよ」


「エディ、少しは考えろよ」


 ガイも珍しく怒りの表情で、大剣の切先をエディに向けている。


「嫌ですよ、ガイさんまで珍しく怒っちゃって」


 エディの口調は不満げだ。それでもエディは続けて口を開いた。


「魔族がいるほうが、王国にとっては国民を管理しやすいのでしょうね」


「管理?」


 エクセラは言葉を繰り返した。管理とは随分な言葉が出てきたものだと思う。


「ここからは私の想像ですよ」


 エディが改めて前置きをする。


「自分たちの地位を守る。それには共通の敵がいた方が、人をまとめやすくて、何かと都合がいいじゃないですか」


 確かにエディの言葉はもっともなのだが、そんなに単純な話なのだろうかとエクセラは思う。


「あれ? エクセラさん、全く信じてないですね?」


 エディの言葉にエクセラが片頬を派手に引き攣らせる。代わって口を開いたのはガイだった。


「そうは言ったって、そんな理由で、こんな大きなことを隠しておくか?」


「……王家は自分たちの地位を守るためなら何でもしますよ」


 エディの声が一瞬、低くなった気がした。だが次の時には、いつもの調子にエディの口調は戻っていた。


「わたしも王様だったのでよく分かるってものです」


 エディが軽く胸を張っている。どこまでもふざけた骸骨なのだが、不思議とその言葉に嘘があるとエクセラには思えなかった。


「王国が総力を挙げて隠していること。それを私たちが暴こうとしたから、殺されそうになった。そんな顛末なのかしら?」


「そうですね。しかも因子を持つ者がそこに二人もいれば、王国も警戒するでしょうね」


「二人?」


「あれ? 自覚がないんですね。エクセラさんも因子を持ってますよ」


「へ……私?」


 エクセラは思わず間抜けな声で返答する。


「そうですよ。だから、わざわざ勇者一行が、私たちの前に現れたんじゃないですか」


 エディが呆れたように言う。


「現れたんじゃないですかって言われても、知らないわよ。自覚なんてあるわけないし」


「あんなに変な特大魔法を扱えるのにですか? あんな変な魔法を他に扱える人、エクセラさんは知ってますか?」


 変、変ってうるさいわねとエクセラは思う。でも確かにそう言われてしまうと、すぐに思いつくのは、勇者一行にいるあのマリナぐらいだ。


「おい、エディ。その因子を持っていると、強いってことだよな」


 ガイが会話に割って入ってきた。


「正確には因子を持っていて、覚醒する必要がありますがね」


「そんなのは何でもいいが、俺にはその因子がないのか?」


「残念ながら、ガイさんに因子は宿っていないようです」


 その言葉にガイは派手に舌打ちをする。


「……ちっ、くだらねえな。もうどうでもいい。後はエクセラと話をしてくれ」


 ガイはそう言って踵を返してしまう。その背中を見ながら、エディがエクセラに言う。


「あれ? ガイさん、何か怒っていませんでしたか?」


 エディが首を傾げている。エクセラにはガイの気持ちがよく分かる。ガイもファジルと同じなのだ。ファジルは勇者になりたい。だから強くなりたい。


 勇者になりたいとは思っていないのだろうが、ファジルと同じでガイも強くなりたいのだ。


 そして、その強さ。その最大の要因がエディの言う因子にあるのだとすれば、それを持っていないガイには受け入れ難い事実なのだろう。そう想像することは容易だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ