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007 赤ん坊

シロは周囲が暗くなっても走り続けた。

救出した場所から離れるだけでなく、安全に野営出来る場所を目指しているらしい。

どれくらい進むのかという俺の質問には、5つ山を超えた先との回答が。

それがどれくらいの距離なのか分からないが、国を跨ぐんじゃないだろうか?

国境って、川や山のイメージがある。5つも山を越えればさすがに国が変わりそうだ。

まぁ、赤ん坊を捨てた人と同じ国じゃない方が、発見される可能性は低くなるしね。


しかし、そろそろ俺の握力が限界なんだが……。

落ちないようにシロの毛を握っているのだけど、親指の付け根がプルプルしてきた。

明日は間違いなく筋肉痛になるな、こりゃ。


「野営する所って、まだ先なのか?! トイレ休憩しかしてないから、そろそろ限界なんだけど?!」


俺が叫ぶと、もうすぐだという返事が来た。

お願いします。早くしてください。もう落ちます。



俺の限界ギリで野営地に到着した。

暗くて何も見えないので立ち尽くしていたら、シロが口から火を吹いて焚き木が完成。

いつの間に木を集めていたのだろう? そして、お前はドラゴンか? 神獣って何でもアリなの?


シロはそのまま小さい焚き木を周囲に作っていく。

最初に点けたのを中心に円を描くように。お陰で周りが見えるようになった。


近くには岩肌が見えている所があり、そこから水が出ている。

シロが飲んで見せてくれたので、安全という事なんだろう。神獣だから毒無効とか無いよね?


水を飲んで一息ついてると、赤ん坊の入ったバスケットを差し出された。

赤ん坊の目が開いており、俺を凝視している。

え~と、何をすれば良いのかな? そう考えているとシロが焚き木の横で寝そべり、顎で俺に指示してくる。

示す先には……あっ、その腹にある突起ってシロのおっぱいか? なるほど、赤ん坊の食事の時間って訳ね。


バスケットから赤ん坊を取り出し、シロのおっぱいに近づける。

最初は不思議そうな顔をしてた赤ん坊だが、一度咥えると凄い勢いで吸い出した。

微妙な高さにおっぱいがあるので、俺はずっと抱えてなきゃいけないのが辛いです。


赤ん坊は食事に夢中なので、ぼんやりとこの子の事を考える。

最初に思った事は全然泣かない。

俺のイメージでは、お腹が減ったとかオムツ替えて欲しいとか、そんなので泣く感じ。後は夜泣きとか。

こんなに夢中で飲むくらいなのに、泣いて助けを求めないのか?

まぁガン泣きされると困るので助かるけどさ。


後は名前だよな。

いつまでも赤ん坊とか子供って呼んでてもダメだろ。

例えが悪いかもしれないけど、犬や猫だって名前で呼ぶ事で自分の事と認識するらしいし。

赤ん坊も名前で呼んであげないといけないだろ。でも神の子に勝手に名付けてよいものやら。

名前はシロと相談して決めよう。俺の考えた名前に神がNG出したのなら、シロが反対するだろ。


最後に赤ん坊の容姿。

髪は金髪(少ないけど)。目は緑っぽい青。地球でいう白人みたいな感じ。サイズも日本で見た赤ん坊と同じくらいだ。

この世界の現地人を知らないので、これが普通なのかな?って思う。

でも何か違うから不貞の証拠みたいな扱いされたんじゃないの? 違うのかな?

もしかしたら近年行為をしてないのに生まれたとか? それなら不貞を疑われるけど。

うん、この世界の事を知らないから何もわからん。そもそも、地球での性行為とこの世界の性行為って同じなの?

ラノベだとほとんど変わりがなく、せいぜい角があるとか獣耳があるとか羽根があるとかそれくらいの違いだけど。

何故か異性に対する価値観とかも現代地球と同じなんだよな。日本でも昔と現代では違うのにね。国が変わっても違うし。

不思議だなぁ。作者の都合じゃないんだろうなぁ。いやぁ不思議だ。


そんな事を考えてると、赤ん坊が飲み終わった。

確か、抱いて背中をポンポンしてゲップさせるんだよね? それくらいは知ってる。この世界で必要かは知らないけど。


赤ん坊はゲップをすると、そのまま腕の中で寝てしまった。

バスケットに戻し、赤ん坊にかけてあった毛布のような布をかけてあげる。

さて、子供の食事も終わったし、俺の食事にするか。

え~と、シロさん。俺の飯は?

…………反応してくれませんかね? もしかして寝ろって事ですか? シロの腹に寄り添って寝ろと?

あぁそうですか。晩飯抜きですか。テントとかも出してくれないのですね?

分かりましたよ、寝ますよ。空腹だけど、めっちゃ疲れてるのですぐに寝ることができますよ。

でも朝飯くらいは用意して欲しいな~と思ったり。寝ろ? あぁはいはい、寝ます寝ます。



翌朝。

赤ん坊におっぱいをあげる。勿論俺の飯は無かった。俺への対応が雑じゃないですかね?という疑問を持つ。

そして有無を言わさず出発。腕は当然筋肉痛だが容赦なく移動開始。辛いです。


太陽(?)が頂点に来る頃、やっと目的地に到着した。

森の中なのに、ここだけ木が無く開けている。その広さは……車が10台くらい停められる駐車場くらい?

気温はポカポカと暖かく、春って感じ。過ごしやすそう。赤ん坊を発見した所はちょっと肌寒かった。


シロは俺を降ろし、赤ん坊の入ったバスケットとキャンプ用具が入ってるらしい箱を置くと、どこかにフラリと去っていった。

えっ?! 放置?! 乳は必要だから帰って来るよね?!

きっと俺の飯を探しに行ってるんだよ、そうだよ、そうに決まってる、そうだと良いな。

と、とにかくキャンプの用意をしよう。いつまでも野宿じゃダメだからね。

……キャンプもよく考えたら野宿のような気がするが、そこは考えないようにしよう。


カラーボックスを引き出してみるが、中には何も入ってなかった。詐欺かな?

よく見れば使い方が上部に書いてあった。俺が触れると浮かび上がってくる文字。手を箱から離すと消える。こんなの気づく訳無いだろ!

そこにはキャンプ道具の名前が書いてある。タッチパネルのようだ。これ、他人が触っても出ない仕組みなのかな?

とりあえず「テント」を押してみる。すると「テント」の文字が消灯して選べなくなった。

本当に予備とか出してくれないんだね。予備を売って金にするとか絶対に許さないのか。


引き出してみると、中にはテントが詰められているっぽい袋が入っていた。

袋の中には説明書が。なるほど、組み立てろと。袋から出しただけで展開するヤツを期待してたんだけどね。

シロが居れば手伝わせたのになぁ。

あっ! まさかそれが嫌で逃げた訳じゃないよな?!

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