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006 テンプレ発生!

神獣改めシロの背中に乗せてもらう。

白い毛がモフモフで、座ると腰くらいまで埋もれてしまう。

飛び跳ねながら進むので、非常に不安定だ。

必死に毛を掴んで耐えているんだけど、結構辛いです。

普通さぁ、異世界で仲間になる魔物って言ったら、フェンリルとかドラゴンとかスライムじゃない?

こんな乗り心地の悪い魔物にしなくて良くない?


しかしシロからすれば、かなり抑えて走っているらしく、これでも遅いらしい。

木の枝とか真横をヒュンと過ぎて行くから、怖くてしょうがないのだけど。

まぁこちらは乗せてもらっている立場なので、偉そうに言えないけどさぁ。怖いのよ。


「後、どれくらいで着くんだ?」


そう聞くと耳が3回動いた。

多分3分か30分か3時間という事だろう。

3分であって欲しい。もう手がプルプルです。


そんな会話をしていると、どこからか女性の物っぽい悲鳴が聞こえてきた。

異世界の森でのあるあるネタ発生!


「シロ、ストーップ!!」


止まってくれたので事情を説明する。

まぁ、俺より耳は良いだろうから聞こえているだろうけど。


「今悲鳴が聞こえたよな? 何か起きたみたいだぞ」


だから何だ?って顔された。


「いやいや、誰かが襲われてるんじゃないか?! 助けなくて良いのか?!」


えっ? 何で助けないといけないのかって?


「だって、大変な事じゃない? 例えば、王族や貴族の娘とかが襲われてるとかよくあるだろ?」


王族や貴族が襲われるような人数で森に入る訳無いだろって?


「そ、そう言われればそうだけどさ! じゃあ冒険者とか村の娘とか!」


冒険者なら自己責任、村の娘なら危険な事分かってるから入らない?


「そんな身も蓋もない事……。と、とにかく、異世界で悲鳴と来たら、助けるのが決まりなの!」


知るか?! それは酷くない?!

助けたきゃ助けても良いけど、戦えるのかって?


「うぐっ! 確かに俺は戦えないけどさ……」


自分に出来ない危険な事をやらせるのかって?


「た、確かにそれは身勝手とも思うけど……」


今は親子を助けるのが最優先? 些事に構ってる場合じゃない?


「…………確かにここで寄り道して間に合わなかったら本末転倒か。分かった、進もう。ごめんな」



何かあっさりと納得してしまった。

移動中に何でこんなにあっさりと納得したのか考えてみた。


仮説だけど、もしかして性欲が無くなった事に関係があるのでは?

ゲスな事言えば、やっぱり女性を助けて褒められたいって気持ちあるじゃん。

異世界物で言えば、その女性がヒロインになったりハーレム要員になったり。

でも、今はそんな気持ちが一切無いんだよ。

ぶっちゃけ、女性も男性と同じ人間だね、くらいな感覚。

だからさっきのも「女性だから助けなきゃ!」ではなく「誰かが困ってるかも?」くらいな感覚だった。


これ、事実なら大変だぞ?!

ハニートラップにかからないという利点はあるかもしれないけど、好意とか愛情が欠落してる可能性もあるよな?

親子を助けても「自分の事は自分でやれよ」とか思ったらどうしよう?

くそっ、神め。余計な事をしてくれたな!



そんな事を考えていると、シロが止まった。

ここは……もう森って感じじゃなく、木々の間が広くて林って感じの場所。

すぐ先には草むらが見えている。平原と林の境目くらいなのかな?


その先だというから、シロから降りて示された所に向かう。

そこにはバスケットに入れられた赤ん坊が居た。寝ているようだ。


「これが保護する赤ん坊? えっと……母親は?」


えっ? 周囲には見当たらないって?


「赤ん坊は確保出来たけど、母親はどうする? 見当たらないなら探すしか無いけど……」


索敵出来る範囲にはいないだと?!

どれくらいの範囲なのか不明だけど、神獣なんだから結構な広さだと思うんだけど。

その中に居ないのか……。


「赤ん坊だけ捨てて、自分は戻った……のか?」


第一目標は赤ん坊だったからまぁ良いでしょうって?


「そうだけどさ、でも母親居ないと困るんじゃないか? ほら、乳とかさ」


自分はメスで乳が出るから大丈夫?!


「ラノベの主人公なら、意地でも母親を探す所なんだろうけど……俺には大した能力も無いし、シロに任せるよ。で、どうする?」


ここから離れて遠い所で暮らす?


「つまり母親は諦めるって事か。シロが言うなら正しいんだろう。従うよ」



シロがバスケットを回収してポケットにしまい込む。

あれ? そっちの方が安全なんですか? 俺は入れてもらえないんですか?



納得出来ないながらもシロに乗り込むと、すぐに移動し始めた。


あっさりと母親を見捨ててしまった……。

やはり精神にも何か影響が出ている気がする。

俺に出来る事は、母親の無事を祈る事くらいだ。

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