アルダバラへの道~ホシノカケラとホシノシズク
「それなんだけど、近くに移動した。」
「???移動したって?」
「正確にはフェリスに移動して貰ったんだ。
あそこまで行くには面倒だし、道も分かりにくい。今後みさが1人で行くのも大変だろうから、場所教えておくよ。」
そう言うとシリウスは魔法を唱え、2人共髪を黒く戻し、マンションの入口に行った。
シリウスは、管理人に話しかける。
「地下に行きたいのだが。」
「柊様、こちらを」
管理人がシリウスに鍵を渡す。
「こっちだよ。ちなみにこのマンションの管理人もアルダバラの城で働く者だ。鍵を預けなきゃいけないしな。後は、シリウスって呼ばないように気を付けてもらってる。」
「こんな所にも、シリウスの国の人が…」
扉を開け、階段を降りていく。
暫く降りると扉が有り、シリウスが扉を開けるとあの鏡が部屋の中にあった。
「今度からは、ここで行き来するんだ。
最初、マンションの別室にとも思ったんだけど、万が一、誰かに見付かって間違って入ることがあっても大変だからな。
まぁ、ホシノカケラがないと本来は入れない筈だけど…みさの例もあるしな。」
「分かった。ありがとう、シリウス。そうだね…私も幼い頃とはいえ、どうやって行って、どうやって帰ったかも分からないくらいだし…他の人が入ると大変だもんね。」
「あ。帰ったのは俺の親、つまり現皇帝がみさを地球に帰したんだ。何故来たかはまだ、原因不明だけどね。」
「そうだったんだ。気付いたら家の前だったのは、なんとなく覚えてるんだけど…それと、この石を覗き込んだら白く光って家の前だった…ような?」
「白く光ったのはあってるよ。けど、それで帰ったんじゃないんだ。白く光って、みさが気絶しちゃって…慌てて父を呼んで来て、母も一緒に飛んできてくれたんだ。俺が"女の子が気絶しちゃった~"って叫んでたから。
その後は、"私達に任せなさい"って言われて、どうやって地球に帰したかは分からないんだけど、多分、魔法か魔方陣だと思う。」
「気絶?私、気絶してたの?皇帝陛下…お義父様にご迷惑を…」
「まぁ、子供の時の話だし、父も母もみさを見て、"可愛らしい子"って。母なんて、"こんな可愛らしい娘が欲しい"とか言ってたな。だから、大丈夫だよ。今もこんなに可愛いし。」
と、またキスをする。
「もう……」
照れながらも、キスをされるのはやっぱり嬉しそうだ。
「みさ、この後着替えて、俺の両親に挨拶に行こう。」
「えっ?今日、行くの?」
「うん。早い方が良いしな。明日から、はまたこっちで忙しくなるし…よしっ!昼食済ませたら行こう。」
「分かった…はぁ…緊張する~っ」
「大丈夫だよ、きっと。側にはずっと俺も付いてるし?」
「うん…」
(気に入られると良いな…)
昼食を済ませ、ドレスに着替えると、扉の前に来た。
シリウスが魔法を唱え、今度は髪を元の色に戻す。シリウスは、鏡の虹色の部分に手を翳した。すると鏡が揺れ、良く見ると鏡の向こうに花畑、その向こうに城が見える。
「それじゃあ行こうか。」
みさの手を引き鏡の中へ入る。
鏡を抜けると、"あの"花畑だった。
後ろを振り返ると、空間に歪みがあり、しばらくすると消えた。
「ここは…あの花畑ね。また光りに包まれるのかと思った。」
「そうだよ。ここはあの思い出の花畑。俺らが出会った場所。行き方は色々あるんだ。
あ。そうだ…みさのペンダントの石、あれ、返して貰いたいんだ。」
シリウスは少し言いにくそうに言う。
「あ、これ?シリウスが小さい頃くれたホシノカケラね。うん、分かった…ちょっと寂しいけど…はい。」
胸元からホシノカケラの付いたペンダントを取り出し、シリウスに渡した。
「ごめんな。言ってなかったけど、ホシノカケラっていうのは"国宝"なんだ。」
「そう…って、えっ!?国宝!?そんな大事なものだったの??」
「そうなんだ。実は、あの頃はこのホシノカケラの価値も分かっていなくて、あの12年前の…みさが帰った後に、皇帝に知られてかなり怒られたんだ。けど、それのお陰でみさにまた会えた。地球に居るみさと、ホシノカケラ無しで会える確率は無いに等しいから…」
頭をポリポリ掻きながら、恥ずかしそうに言う。
「国宝なんて、そんな大事なもの…直ぐに返したのに。どうしてこの間会った時、何も言わなかったの?」
「それは、みさが大事に持っていてくれたのが分かったって事と、あの後、皇帝にも許可を取っていたんだ。あの時は、それしかみさがアルダバラに行く方法も無かったし。」
「今は、シリウスと一緒に居れば鏡に入れるって事?」
「一緒に居ても、ホシノカケラやホシノシズクが無かったら入れないよ。」
「ホシノシズクって?」
みさは不思議そうな顔をしている。ホシノシズクは初めて聞く言葉だ。
「指に嵌めている指輪を出してごらん?」
と言われ、みさは薬指に嵌めている指輪を出した。この指輪はいつも着けていられるように、婚約指輪とは別にシリウスが贈ったものだ。
「指輪を良く見てごらん?光りに翳すと、全体がキラキラと虹色に光って見えるんだ。これが、ホシノシズクだよ。」
言われて、光に翳してみる。
「本当ね、キラキラして虹色に光ってる。全然気付かなかったわ。必ず着けててねってこういうことだったのね。
…って、これは"国宝"では無いの?」
「"国宝"では無いけれど、大事なものだよ。
ホシノカケラから採れたシズクなんだ。
これがあれば、みさが1人でもアルダバラへ来れる。さっき俺がしたみたいに、鏡に手を翳せば良いんだ。」
「分かった。ありがとう。貰った時にも言ったけど、ちゃんと大事にするね。」
「うん。と、そろそろ行こうか。」
シリウスと2人、城に向かって歩く。
すると、道の先に人影が見えた。
フェリスだ。
「フェリス、先に着いてたか。」
「はい。先程到着し、皇帝陛下にお伝えしております。シリウス様、みさお嬢様、お待ちしておりました。」
と、頭を下げる。フェリスもまた、髪の色が黒からシルバーになっていた。
「流石、仕事が早いな。いつも助かってるよ。みさ、この間も会ったと思うが、俺の側近のフェリスだ。」
(そういえば、お見合いの席でシリウスの隣に座ってた人みたいだけど…あの時は髪も黒かったし、眼鏡もかけてたから、分からなかったな。…しかし、シリウスもだけど、2人ともイケメン…)
「フェリスさん、よろしくお願いします。」
ペコッと頭を下げる。
「み、みさお嬢様、頭をお上げ下さい。私はシリウス様の側近、奥様であるみさお嬢様に頭を下げさせる訳にはいきません。」
「みさ、フェリスも呼び捨てで良いんだよ?」
「う、うん…、だけど、あんまり会った事もないし、年上だかし…いきなりは呼び捨ては失礼かなって。
フェ…リス、えと、よろしくね。」
みさは、照れたようにニコッと微笑んだ。
「はい、みさお嬢様、よろしくお願い致します。それでは、ご案内致します。」
フェリスに付いて行き、アルダバラ城の前に来た。
「こちらで御座います。」
城の門が開き、中へ進んで行く。
(これから、シリウスのご両親、皇帝陛下と皇后陛下に会うのね。)
みさは、緊張でいっぱいだった。
扉が開き、皇帝、皇后陛下のところへ向かう。
いよいよ、両陛下(シリウスの両親)に会う時が来た……