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12年振りの再会

「みさ、話がある。」

 ある日の朝、大学に行く為家を出ようとするみさを呼び止め、父は言った。

「何でしょう?」

 何で今?という顔をしながら、振り向き返事をしたみさに父は言う。

「みさももう二十歳だ。良い縁談がある。帰ってきたら目を通すように」

「分かりました。そのように」

 みさは、反論しても仕方ないという顔をしながら返事をし、家を出て行った。


 みさの家は云わば格式のある家柄。結婚もみさの為……というより、家の為。見合い相手も親が探して、決めてくる。縁談が上手く行けば、家も安泰という訳だ。

 兄はみさの出ていったドアを見ながら心配そうに言う。

「父さん、みさにはまだ縁談は早いんじゃ……」

 それに対し父は、 

「何言ってるんだ。もうみさも二十歳だ。昨年までも何人か縁談の申し出があったが、十代だからと断ってきた。様子を見てたが、恋人がいる感じも無いしな。それに、今回程の相手はなかなか現れないぞ」

「そうですか……」

 兄は何とも言えない表情をしながら返答し、部屋へ戻る。

 兄は妹LOVEである。今までもみさに近付こうとする輩が居たら、追い払ってきた。


(今回は縁談を止めるのは無理そうかな……みさを本当に幸せにしてくれる奴なら良いのだけれど……)


 兄は心配で堪らないみたいだ。



「はぁぁぁぁ……」


 みさは、家の門から出て大きいため息を着く。


「二十歳になったから縁談!?何言っちゃってるの??大学生だよ?二十歳だよ?ハタチ!まだ、結婚なんてしたくない!!」

 つい叫んでしまった。


「ふっ」


 誰かの声がする方を見ると、そこに笑いを堪えている男性が居た。


(ヤバい、見られた)


 顔が真っ赤になり言葉が出ない。

 男性は口を押さえて笑いを堪えながら、言う。

「悪い、悪い。いかにもお嬢様な感じだったから、ギャップについな。ははっ」

 

「……」


 返す言葉が見付からなく、黙ってしまう。

(って、今何時!?)

 慌てて時計を見る。

(講義に遅れちゃうっ。)

 みさは、男性にペコッと頭を下げ、

「しっ、失礼します!!」

 大学に急いだ。

(恥ずかしいっっ。見られちゃうなんて。

あの人、何であそこに居たんだろう……

この辺で、あんまり見かけないな。あれだけ格好良い人だと目立ちそうなものだけれど。

それより……好きな人でもないのに、家の為に縁談なんて、いつの時代よ!結婚なんてまだしたくないのに……

まぁ、確かに今まで彼氏が居ても、何故か長続きはしなかったしな。彼氏が居たら、何か変わってたのかも……)


――長続きしなかった理由、それは兄である。みさは気付いていない。



「シリウス様!!何してるんですか??」

 フェリスは、みさに話しかけるシリウスを見て、慌てて追いかけて来た。

 シリウスはそんなフェリスの事など気にもせずに、走って行くみさをまだ見つめながら言う。

「ああ。近くで見たくなってな。……やっぱり、可愛い。」

「はぁ……可愛いは良いとして、近くでって!騒がれたらどうするんですか??只でさえ、シリウス様は目立つんですから。こっちでの地位も、一代で会社を築いたカリスマ社長ですし」

 フェリスは呆れながら怒っている。そんなフェリスを見て、シリウスは少しすまなそうにしている。

「分かってる。その社長の地位も、こっちの世界でも通用するように……全てはみさを迎えに行く為だしな。みさの家は代々の名家。ただ結婚したいと迎えに行っても、あの親なら追い返されるだろうしな。だからといって、拐うわけにもいかない。行方不明なんて事になったら、大変だしな」

「……ホントに我が儘ですよ。それにいつも付き合わされるのは私なんですから」

 フェリスがまだ呆れているので、シリウスは感謝の気持ちを込めながら言った。

「分かってるよ。フェリスには本当に感謝してる。君が居なかったら、母国での皇太子でありながら、こっちで社長になるのなんて無理だっただろうからな」


 このシリウス様、地球から数億光年離れた星の、アルダバラ国の皇太子であるにも関わらず、子供の頃一目惚れしたみさを、自分が皇帝になった際の皇后に迎えたいが為に、ずっと準備してきたのである。若くして数々の業績を残し、現皇帝の許可を得、アルダバラ国と地球を行き来、地球でも会社を立ち上げ、柊商事の代表取締役、(ひいらぎ) (ゆう)として地位を確立した。

「本当に、大変でしたからね。まぁ、シリウス様がみさ嬢に惚れていたのは良く解りましたし。きっと、私が手伝わなくてもシリウス様は1人でもやっていたような気はしますが。けれどもしみさ嬢が、『ホシノカケラ』を持っていなかったとしたら、どうするつもりだったのですか?しかもあれは、『国宝』の一部なんですからね。」

 シリウスが、感謝してくれているのは分かっていたので、まったく……と、言いながらもフェリスは笑っていた。

 シリウスは少し恥ずかしくなり、照れながら言う。

「そうだな。確かに1人でも行動していたかもしれないが、本当にフェリスが居てくれて良かったよ。『ホシノカケラ』については、皇帝にだいぶ怒られた。あれの価値をあの頃は良く分かってなかったし。みさが持っていてくれて本当に良かったと思う。」


「あの頃、みさ嬢が何故こちらの星に来れたかは解りませんが、ここまでシリウス様が忘れられない所を見ると、何か意味があったのかもしれませんね」


「そうだな。あの頃の事は本当に不思議だった。最初、みさはアルダバラ国の国民だと思っていたが、国中探しても居なかった。それから、『ホシノカケラ』を頼りに探して行ってみると、まさかこんなにも離れた星だったとは」


「そうですね。それには私も驚きました」


「それに、地球での地位も準備しておいて正解だった。みさを見付けた時に、縁談の話が来ていたからな。何も持っていない状態で挑んだとしても、どうにか出来るわけもない。やはり、どの国(星)でも権力は必要だな。どうにかして縁談を阻止し、我が嫁(皇妃)として迎えるぞ。フェリス、また調査を頼む」


 シリウスの言葉に、フェリスは姿勢を正し答える。


「分かりました。今夜、猫の姿で庭に入り込みますね」


 フェリスは優秀な側近だ。猫に変身出来る能力を持ち、変身した姿で今夜みさの居る家の庭に忍び込み、縁談の詳細を聞く。そこでの情報をシリウスに報告、対策を立てるのだ。フェリスはシリウスの有能な部下であり、友でもある。こっちでの役割もシリウス(柊 悠)の秘書兼副社長だ。



 みさは気が重かったが、とりあえず講義に集中し、今は忘れる事にした。今日の講義は午前で終わり。友達にこの後……とも誘われたが、気が進まなかったのでそのまま大学を後にした。けれどこのまま、家に帰る気にはとてもなれなかった。


(こんなモヤモヤした時は何処か行っちゃお!家に帰りたくないしな……けど、何処行こう……)


 はぁ……と、憂鬱な気持ちで溜め息をつきながら、公園のベンチでお昼を食べていると、声をかけられた。


「やぁ、またお会いしましたね。お嬢さん」


 見ると、今朝家の前で叫んだときに居た男性が目の前に立っていた。また会うなんて。……何か怪しい。


「あ。えと、今朝の人ですよね?っと、私に何かご用ですか?」


 みさは少し構えながら聞く。


「驚かせてすまない。決して怪しいものではないんだ。えっと…実はみさ、君を探していたんだ」


 シリウスは、ベンチに座っているみさの横に腰を下ろす。


「!?」


 えっ?何?何?何でこの人横に座ってるの?私を探してた…?それより、何で私の名前知ってるの??みさが驚いて、少しずつ距離を取ろうとしていると、シリウスが話を始めた。


「……その、ペンダントの石」


「……?……これですか?」


 みさは不思議に思いながら、シリウスと少し距離を取り、胸元からペンダントを取り出しシリウスに見せる。

「そう、その石」


 シリウスはそう言い、優しく微笑む。


「これは、私が幼い頃一度だけ会った子にもらった大切なお守りです。子供の頃に、一度だけ行った花畑で出会ったんです。その子と別れる時に貰いました」


 って私、知らない人に何で答えてるんだろう……

暫くの沈黙の後、シリウスがゆっくりと話し出した。


「僕が、その時の子、って言ったら信じる?」


「えっ!?」


 みさは驚いて、お弁当のお箸を落としてしまった。

目を丸くしてシリウスを見ている。

 シリウスは続けて話した。


「すまない。驚くのも無理ないよな。あれからもう12年。まだ僕が13歳で、みさが8歳の時だから。それにしても、僕が渡したホシノカケラ、まだ持っててくれてて、大事にしてくれてたの嬉しいよ」

 シリウスは嬉しそうに照れながら笑う。


「ホシノカケラ……これがそうなんですね。でも、ごめんなさい、記憶が曖昧で、あなたの顔を見てもはっきりとは思い出せないんです。名前も覚えていないし。覚えている事は、はっきりしているのは……この石の事だけ。この石は、花畑に行った時に会った子と別れる時に貰って、『持ってたら、きっとまた会えるから、迎えに行くから』って言われたので……それ以来、1日も欠かさず、はだ見離さず持っています」

 大事そうに石を見詰めながら言うみさを見て、シリウスは凄く嬉しそうに言った。

 

「名前は『シリウス』だよ。1日も欠かさず持っていてくれたんだね。嬉しいよ」

 

 嬉しそうなシリウスを見て、みさは申し訳なさそうに言う。

「シリウスさん、でもその子とは、結局、その時会ったたった一度きりで、それ以来会うことは無かったのです。その場所も何度も探してみましたが、見付からなくて。どうやって行って、どうやって帰ったかも思い出せなかったです。あの日の事は、まるで夢でも見てたかの様な感じでした」


「みさも何度も探してくれてたんだな」

 シリウスは合図ちを打ちながら、たまに返答をし、みさの話を静かに聞いている。

「はい、この石を見る度思ってたんです。きっとあれは夢じゃなくって、本当にあった事じゃないのかな…って。だから、何度も探しました。信じたいです。

あの日のあの子の事、ずっと、ずーっと、想っていました。会いたかったんです。もう一度。あなたが本当にその時の子だとしたら、凄く嬉しいです」

 話が途切れると、シリウスはみさの顔を覗き込みながら言った。

「じゃあ、僕の話を信じてくれるんだね?」

 嬉しそうに話してくるシリウスにみさは、驚きつつも答える。

「あの……いきなりでビックリしていますし、完全に信じれるか、といえば嘘になります。けれど、あなたが嘘を言っているようには思えません。この大事な石の事を言われたのも初めての事です。さっきも、幼い頃としか言っていないのに、貴方は私が8歳の時って断言していました。信じて、あなたともう少し話をしたいと思います」


 シリウスは満面の笑みで、みさに言う。

「そう言ってくれてありがとう。今から時間ある?僕ももう少し話をしたい。それに、君を連れていきたい場所があるんだ。」

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