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Ghost Diver  作者: 名無シノ権化
1/1

1st dive

朝の街


人々がすれ違いながら歩みを進める。

いくつもの靴の音、歩道に歩道に植えてある木が風でひしめく。

淡々とした当たり前の世界が日々過ぎていく。


見えない闇が身近にあることも知らずに。


その街の人混みに一人の男子高校生、真輝まきがいた。


「今日のテストだるいなぁ」

うつろな目で独り言を呟きながら歩く。

気を抜きながら歩いていると、急に正面にサラリーマンが現れ、ぶつかりそうになった。


驚き、とっさに身構える真輝

真輝「あっ、すみませ・・」

反射的に謝ろうとしたが、途中で止めた。


その男性は体が青白く透けていた。

透けた体の向こうに、いつも昼食を買うコンビニが見える。

真輝はさっきの構えを解いた。


「パッと見、分かりづらいんだよな」

ため息まじりで、歩みを進める。


コンビニに入り、昼食を買い、外に出る。

レジで会計をした際に、店員の肩にいるナニカは気にもとめずに。


彼は、闇払やみはらい 真輝まき17歳 高校2年生

学校の成績はそこそこ、運動もそこそこな、ごく普通な男子高校生である。

ただ、真輝が見える世界は、普通の人よりも、多く見えていた。


幼少期から、この霊媒体質である。霊のことをナニカと呼んでいる。

最初は怯えもしたが、現在は受け入れ、生活をしている。


学校に着き、教室へ向かう、友達とたわいの無い話をし、授業を受ける。

学校が終わり、下校する。


友達と楽しく話をしながら家路に向かう。

そんな代わり映えのない日々が、真樹は好きだった。


友人と別れ、家に帰るさながら道の先を見ると、同級生の女子が歩いていた。

別に声をかけるつもりは無いので、視線を変えようとした瞬間


同級生が消えた。


真輝は思わず、二度見した。

同級生がいた所は、道の左右にコンクリートのへいがあるだけで小道がある訳じゃない。

だが、いなくなった。


衝動的に同級生のいた所まで、走って向かった。

着いた瞬間、違和感にすぐ気く。


地面に直径2m程の穴がぽっかり空いていた。

「なんだこれ、穴? マンホール・・じゃ無いな」

マンホールの穴にしては大きすぎるし、近くにマンホールあったので違うと分かった。


「おーい、誰かいるかー?」

真輝は穴に向かって声を出す。

だが、やまびこの様に反響する自分の声だけしか聞こえなかった。


(とりあえず、警察に連絡しよ)

ポケットからスマホを取り出そうとした時、急に穴に吸い込まれそうになる。


声を出す暇もなく、真輝は穴の中に落ちた。

暗闇の中、何かに沈んで行くような感覚に包まれながら、真輝は気を失った。


崩れた瓦礫がれきの上で真輝は目が覚める。

「うっ、いてぇ」

起き上がり、薄目を開けて周りを見渡す。


ボヤけた景色が鮮明になる。

「なんだよ、これ」

見たことがない景色だった。


空は赤黒く、廃墟のような建物ばかり見える。かろうじて自分が道路立っているのだと分かった。


真輝はこの光景に戸惑い、落ち着くために、スマホを取り出そうとしたが、無かった。

「最近機種変したばかりなのに」

探しても見つからず、凹んでいると、何処からか女性の悲鳴が聞こえた。

驚きはしたが、とりあえず人に会おうと思い、声が聞こえた方へ向かった。


瓦礫やゴミで散乱した道を進む。

「この十字路の左側から聞こえたような」

十字路からこっそり、声が聞こえた場所を見る。


薄暗い道路の真ん中に女性が座り込んでいる背中が見えた。

目を凝らしてみると、同級生である。


「居た!でも、どうしてこんな所に…」

もう少し、道の奥をよく見ると分かった。


座り込んでいる彼女の1m奥に顔は見えないが男が立っている。

いや、人ではない、体が白く透けていた。


「助けて、助けて・・・・」

彼女の助けを求める声が聞こえた。


その瞬間、何も考えず、彼女の前まで走って行った。


彼女は少し声を上げるが、真輝だと気づき、声を抑える。


真輝は、息を切らしながらそのナニカに言う。

「お、おい!怖がっているだろ、やめろよ」


遠くで見えなかった、ナニカの顔が鮮明に見えた。

首が折れているようで、だらんと頭が垂れおり、頭がこっちを向いていた。


「ヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァ」

ナニカの口から息なのか声なのかわからない音が鳴り始める。

じわりじわりと、真輝たちに近づき始めた。


真輝は、ハッとし、彼女を起こし上げる。

「とりあえず、逃げるぞ」


「う、うん」

泣いた顔で彼女は答え、一緒に走った。


真輝が歩いてきた道を戻るようにして進み、その途中で

人が1人入るくらいの幅の小道の隙間に二人一列になり、しゃがんで息を潜める。


「とりあえず、ここに居て気分を落ち着いてから動こう」

小声で話した真輝の提案に彼女はうなずく。


(だけど、この状況でどう動けばいいんだ、そもそもここは何処なんだろう)

真輝は悩んだ。


5分経っただろうか、シーンとした静かな状況が続く。

そろそろ動こうかと、立ち上がろうとした瞬間


ヒタッ、ヒタッ、ヒタッ、ヒタッ、ヒタッ、ヒタッ

裸足で歩くような音が小道の前にある道路で聞こえ始めた。


真輝はさっきの記憶をふと思い返して気づいた。

(さっきのナニカ、そういえば素足だった)


ピーンと緊張が張り詰め、二人とも息を殺した。

足音が近づいてくる。


道路側に真輝、背後に彼女の列で潜めていたので、真輝は近くにあった瓦礫の石を持って身構える。

彼女は、背中にしがみつき震えていた。


小道の前をナニカがスッと通りすぎる。

足音が小さくなっていき、離れて行ったようだ。


足音が聞こえなくなった。

真輝は緊張の糸が切れ、手にしていた石を地面に置いた。

「ふぅ、大丈夫か?」


「うん、大丈夫」

真輝が後ろを振り返ると、彼女の顔はホッとしていた。


だが、真輝は安心できなかった。

なぜなら、彼女の頭上の塀に張り付いて、彼女を覗き込んでいる、さっきとは別のナニカがいた。


髪の長い手足が異常に長く、細い蜘蛛のような姿だった。

体は黄色く透き通っている。


真輝が声に出そうとした時、ナニカは彼女の背中に飛び込むよにして入り込んだ。

彼女は、一瞬痛みを感じるような顔をし、俯いた。


声をかけるのが怖かったが、心配が勝り、真輝が彼女に声をかける。

「だ、大丈・・・」


真輝の声をかき消すように彼女は答えた。

「大丈夫ぶぶぶぶぶうぶぶうう」

彼女じゃなくなっていた。

「入れた、入れたれた入れた入れたたあ」

左右の目が違う方向を向き、塀に張り付くように動き始めた。


「やめろ!」

塀を登ろうとする彼女を真輝は止めようと、必死に抱きつき引き落とした。


「ヒャヒャヒャヒャヒャ」

素早く彼女は振り返り、真輝に馬乗りになっての首を締める。

女性とは思えない強い力で真輝は彼女の手を外すことが出来ない。


(だめだ、意識が飛ぶ、いやだ・・・死にたくない)

気を失う寸前に強い衝撃を感じた。

首にかかる力がフッと無くなり、息ができようになった。

「ゲホッ、ゲホッ・・・・なんだ」

起き上がり、周りを見る。


彼女が2、3m先に倒れていた。

振り返ると、1番最初に出会ったナニカが立っていた。


「助けてくれたのか」

真輝はナニカに声をかける。

「ヴァヴァヴァ」

言葉ではないがその時、真輝は肯定してくれたと感じた。


「ぐぎゃぎゃ、邪魔者ものものものも」

倒れていた彼女が起き上がる。

外傷などは見えなかった。


「どうすればいいんだ」

彼女に構えながら真輝は動けずにいた。


「ヴァヴァヴァ」

ナニカの全身が光り、真輝の手に光が渡った。


光が変化し、槍に変わる。白く透き通っていた。

「うおっ、なんだこれ」

槍を見ていると


彼女がより一層、暴れ出し、真輝に飛びかかってきた。

真輝は驚き、構えた槍が彼女の腹部に刺さってしまった。

「ぎゃああああああああ」

彼女が叫んだ


貫いた槍は、中に入っていたナニカだけを貫き、すり抜けるように彼女は地面に倒れた。

(攻撃が効いているのか)

槍を強く持ってもっと強く突き刺すと槍が光出した。


「グギギギッギギ」

ナニカは両手で槍の柄を握り引き抜こうとするが、少しずつ槍が食い込んで行く。


「うおおおおおお」

叫びながら槍を押し込む真輝


すると、急な脱力感が真輝を襲った

槍を持つ力が弱くなっていく

とうとう槍を持てなくなり、手から落ちてしまう。

「な、なんで」

立つこともままならず、膝をつく真輝。


ナニカはその間に槍を引き抜いた。

「グギギギギ・・・コロス」

ナニカは真輝に飛びかかる

(もうダメだ・・・・)


「DランクのESと生存者を発見」

真輝の背後から男性の声が聞こえた。


その瞬間、目の前のナニカの首が吹き飛んだ。

真輝はそこで気を失った。

気を失う刹那

「よく頑張った」と温かい声が聞こえた気がした。





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