8回目 気分はヒーロー、主役な登場人物
あらためて周りを見る。
手頃なのがいないかどうかを探る為。
それはすぐに見つかった。
何せ、手近にある家から、窓を壊して外に出てきたのだから。
それに目を付けると、ためらう事無く突っ込んでいった。
手にした玉から流れ込んでくる力を使いながら。
瞬間、タクマの体は常人にはあり得ない速さで飛ぶ。
いつものように走ろうとしただけなのだが。
玉から流れ込んでくる力で能力が上昇している。
その力は、運動不足気味の体に、オリンピック選手顔負けの運動能力を与えていた。
<< 御津来タクマ >>
基本霊力 35
体力 35 +10
健康 35
反射 35 +10
作成 35
直観 35
思慮 35
共感 35
意思 35
<< 御津来タクマ >>
玉の力を使って能力を一時的に向上させている。
時間にすれば60秒。
それがとりあえずの限界になる。
その間に全てを片付けねばならない。
しかし、それは存外簡単にできそうだった。
ありえないほどの瞬発力を得ている。
家から出てきた化け物までの距離を、それで一気に縮める。
一秒もかからない。
30代半ばをとっくに過ぎたオッサンがだ。
わずか一蹴り、地面の上を駆け出そうとした一歩で。
互いの距離は、わずか数メートルではある。
しかし、その距離を一秒にも満たない速度で縮めたのだ。
普段のタクマには決して出来なかっただろう。
その勢いのまま手にした斧を振り下ろす。
化け物はその速度に合わせる事が出来ない。
無防備な頭が、分厚い手斧の刃に砕かれていく。
その速度も玉からの力で強化されたものだ。
鉄の固さと重みに速度が掛け合わされ、凄まじい衝撃を生む。
それを受けた化け物の頭は、割れるというより破裂した。
手応えらしい手応えもなかった。
あまりに素速く振り抜いたせいだろうか。
一瞬にして全てが終わる。
頭を失った化け物は倒れ、タクマだけが残る。
そのタクマの前で化け物は消えていき。
玉だけが残った。
「やった……」
こんなに上手くいくとは思わなかった。
人間を簡単に吹き飛ばす位の力のあるものだ。
普通にやりあったら簡単にやられるだろう。
だが、玉から力を引き出したおかげで簡単に倒す事が出来た。
消えていく化け物。
その場に残る玉。
それを回収して、タクマはその場を離れようとした。
この場に留まる理由は無い。
化け物を倒したのは、玉の効果を確かめるため。
何より玉を回収するため。
それが主なものだ。
化け物を倒せば、それだけ安全が確保出来るというのもあるが。
今のところそれは、焼け石に水である。
なにせ、そこかしこから化け物が出てきてるのだから。
一匹二匹倒したところですぐに結果出るものでもない。
(退散するか)
相手をしてる余裕もない。
さっさと逃げ出しておこうと動き出す。
そもそも、外に出てるのは買い出しが目的だ。
化け物を倒す事ではない。
ただ、すぐに移動するわけにもいかなくなった。
周りの家から出てきた化け物が向かってくる。
タクマの事を見つけてるようだ。
逃げようと思えば逃げられそうだが。
(丁度いいか)
新たに手にした玉もある。
能力強化を使えばどうにかなると思えた。
それに、化け物もそれほど多くは無い。
せいぜい、10匹といったところか。
(なんとかなる……かな?)
玉一個で一匹を倒せた。
かなりの余裕をもって。
なら、10匹くらいはどうにかなりそうに思えた。
1匹倒せば、新たな玉も手に入る。
そうして玉を回収していけば、10匹くらいはあっというまだ。
(やるか)
決断したら早かった。
遅かれ早かれ、化け物との衝突は起こるのだし。
ならば、手早く片付けた方が今後の為にもなる。
そう考えてタクマは化け物へと突進していく。
手にした玉から新たに力を引き出しながら。




