43回目 削って削って聞き取れるようになったこと
巨人の表面に浮かんでる顔面。
それを潰して潰して潰していく。
ひたすらに潰していく。
振り払おうとする巨人の腕をかいくぐり。
飛び跳ねて振り払おうとする巨人にへばりつき。
次々に巨人の顔面を潰していく。
そのたびに巨人が弱っていく。
潰れた顔面の部分から体が消失していく。
表面に生えてる顔面が苦しみ悶えていく。
泣き叫ぶ声が鼓膜を震わしていく。
それらを緩和するために、空気に干渉していく。
音という振動を和らげるために。
完全にかき消すことも出来るが、それはあえてしない。
音で伝わってくる様々な情報も必要だからだ。
そうして幾分ゆるんだ絶叫の中を駆け巡る。
巨人を倒すために。
手を緩めてるわけにはいかない。
弱ってきているが、まだ生きてる。
そのままにしておくには危険すぎる。
能力が下がっても、そこらの化け物より遙かに強力だ。
ここで確実に倒しておかないと後が怖い。
もし万が一、この巨人が人々がいる場所に迫ったら。
多くの被害が出るだろう。
それだけは避けねばならない。
だから容赦はしなかった。
確実に息の根を止めるつもりでいた。
タクマにとってそうしなくてはならない敵だった。
情けをかける理由は無い。
タクマとて余裕があるわけではない。
玉を使ってるから有利に戦えてるだけだ。
もしそれがなければ、一方的に蹂躙される。
文字通り桁違いの能力を持ってる相手なのだ。
まともに戦えるわけがない。
もし戦うとするなら、最低でも機関銃くらいは必要になるだろう。
それでも本当になんとか抵抗出来るという程度だ。
まともに戦うなら、装甲戦闘車両と機関砲が欲しい。
出来るならば、戦車や戦闘機からの爆弾での攻撃。
それでようやく簡単に葬り去れるのが巨人だ。
玉がなければ戦いになどなってない。
足で蹴られるか、腕で横薙ぎに振り払われて終わりである。
そんな奴に手加減をする必要は無い。
加えてやる手心も無い。
生きるか死ぬかなのだ。
相手のことなど斟酌してる場合ではない。
事情がある、理由があるなどというのは、相手を思いやる理由にはならない。
明確な被害を受けてる、悪意や害意があるのだ。
そんな連中の事情など考慮する必要などない。
反撃と殲滅だけだ、そんな連中相手に必要なのは。
でなければ自分が損害を被る。
損害を受けるつもりなどタクマには無かった。
強力な敵がいる。
ならば倒す。
それしかなかった。
やらなければ、自分がやられるだけなのだから。
暴れる巨人は、そんなタクマによって破壊されていく。
顔面を潰されると同時に、体もえぐられたように削れていくのだ。
虫食いのように体に凹みや穴が空いていく。
それでも普通の人間や生物とは違うのだろう。
体がどれだけ損なわれても、死ぬ気配はない。
これが人間ならとっくに致命傷であるにも関わらず。
それも長くは続かない。
すぐに倒れはしないが確実に体をむしばんでいる。
動きも鈍くなっている。
生命が枯渇してる証だ。
それを見てタクマもたたみかけていく。
そうしていくと聞こえるようになった。
巨人にはりついていた顔面の声が。
残り少なくなって、聞きやすくなったからだろう。
悲鳴と怨嗟がたちのぼってくる。




