35回目 偵察と情報共有
「それじゃ、頼むぞ」
引き続き探索を続ける者達に声をかける。
「そっちこそ、気をつけて」
「ああ、行ってくる」
気遣いの言葉を受けてタクマ達は先へ進む。
敵の動きに警戒を抱いた。
姿を消した化け物共にも、その後追うように進む事にも。
なので全体を二つに分けて行動する事にした。
とはいえ、安全に二分するわけではない。
タクマを含めた少数と、その他大勢に。
人数比率としては極端な振り分けをしている。
理由は簡単だ。
探索そのものを進めねばならない。
その為には大勢の人間が必要になる。
だから、探索にはそれなりの人数を割かねばならなかった。
そしれ、先行するタクマ達は偵察である。
行動には軽快さが必要になる。
となれば、大勢で行動するわけにはいかない。
数が増えれば、その分動きが鈍くなる。
それは避けねばならなかった。
何よりも、損害を可能な限り減らさなくてはならない。
その為、人数を極力減らす必要があった。
全員で行って全滅するような事はあってはならない。
それだけ危険が伴う。
最悪、生きて帰れないかもしれない。
それを考えての編成だった。
そして、帰ってこないというのも情報の一つになる。
この先に、それだけの危険があるという証拠になる。
もちろん、そんな悲劇を演じるつもりはない。
必ず生きて戻るつもりでいた。
ただ、それも含めての少数先行だ。
危険は覚悟せねばならない。
そんな偵察にタクマは、同じ会社の者達を連れていった。
多少なりとも気心の知れた人間が欲しかったからだ。
馴染みのない人間が相手だと、色々なすりあわせが必要になる。
そんな事をしてる暇もない。
だからアスマ達を連れていく事にした。
出会って間もないが、同じ会社に寝泊まりしてるトモルとカヲルも。
トモルとカヲルもそれほど長い付き合いというわけではない。
だが、何の接点も無い他の者達よりはマシだった。
まだ二人とも十代の子供であるが、そこには目をつぶる。
こんな状況で学校も何もあったものではないのだから。
会社に寝泊まりしてるよしみで、少しばかり働いてもらう事にした。
「どうだ?」
運転しながら隣の席に座るトモルに聞く。
玉の力を使って探知をしてるトモルは、
「特に何も」
と返事をする。
その返事を信じながら先へと進む。
時速20キロほどでゆっくりと。
警戒しながらだから、どうしても速度は遅くなる。
「後ろはどうだ?」
数十メートルほどの距離をあけて続け後続車にも尋ねる。
そちらに乗ってるアスマとカヲルも周辺を警戒してるはずだ。
彼らには、何かが追跡して無いかを確かめてもらっている。
「こっちも大丈夫、今のところは」
「分かった引き続き警戒してくれ」
電話ごしにそう伝えながら先へと進む。
幸い、敵の反応は見当たらない。
それだけはありがたい事だった。
また、途中で生存者と思われる反応も拾っていく。
それは後ろで探索をしてる者達と、会社にいるヒタチに伝えていく。
ヒタチには、全体の動きを把握してもらっている。
情報を一括して管理するために。
こうしておかないと、情報が分散してしまう可能性がある。
行き違いは出来るだけ避けたい。
集めた情報は各自が携帯電話やスマートホンで確認できるようにしていく。
ヒタチが全員が見ることが出来るブログなどを更新していく事で。
SNSで最新情報の更新情報も流してもらう。
これで、可能な限り情報の共有をはかっていた。
それでも、情報が行き渡らない可能性はある。
だが、何もしないでいるよりは良い。
少しは共有されているのと、全くされてないのとでは雲泥以上の差があるのだから。
また、撮影した画像や動画も送られていく。
時間差がほぼない生の情報が後方に途切れる事無く送られる。
それもまた、探索においては大きな助けになっていった。
そうして進んでいくタクマ達は、ほどなく足を止める。
「…………何かある」
探知をしていたトモルの声によって。
それを聞いてタクマは車を止める。
後方にいるアスマとカヲルの車も。
「この先か?」
「はい。
何かいます」
それを聞いてタクマも自分の玉を使っていく。
流れ込んでくる気がタクマの能力を高める。
増大した感覚は、確かにそれをとらえた。
大きな何かを。
「どうします?」
尋ねてくるトモル。
数秒ほど考えてタクマは、
「お前は後ろの車にいけ。
俺は見てくる」
そう言って運転席を開けっぱなしにして出ていく。
それらも事前の示し合わせ通りだ。
何かあった場合は、誰かが様子を見に行く。
そして、もう一台はすぐに逃げられるように待機する。
助手席に乗ってる同乗者は、そちらに行って車に乗り込む。
これもまた、出来るだけ損害を減らす為だ。
ドアを開けっぱなしにするのも、生き延びるためである。
逃げてきた時にすぐに乗り込めるように。
だからエンジンもかけっぱなしにしておく。
こうして、万が一の場合の生存率を少しでも高める。
そしてタクマはスマホを持って先へと進む。
何があるのかを撮影するために。
そんなタクマを見ながら、トモルは後ろの車へと向かう。
タクマの事は気がかりだったが、指示を無視するわけにもいかない。
戻ってくる事を、今は願うしかなかった。




