33回目 結局作業がまわってくるのだ、合点がいかない
基本、身軽な独身者が会社に寝泊まりしている。
それは仕方ない部分もある。
だが、少数だが所帯持ちも来ている。
それが単なる夫婦だけならばまだ良い。
本人と配偶者だけなのだから。
しかし、それ以外の家族がいるとなると面倒が増える。
さすがに会社に収容しきれない。
両親や子供となると、それらを住まわせる場所が必要になる。
しかし、会社にそんな余裕は無い。
独身者だけなら、机の下にもぐって寝る事も出来るが。
家族全員でそんな事するわけにはいかない。
必然的に寝場所の確保が必要になる。
住み心地はこの際度外視するにしてもだ。
一家が入れるくらいの大きさは必要になる。
それを会社周辺で探すとなると大変な事になる。
そういった者達の対応すらもしているのだ。
一応、会社の上司なども復帰してきている。
しかし、彼らの領分は社内である。
社内の問題を一手に担ってはいるが、それ以外まで手が回らない。
関係各所に多少の口添えはしてくれるが。
それ以上の動きはしない。
しないし、出来ない。
彼らとしても手がいっぱいである。
多くの人間が化け物になった事で、どこも人手不足。
その人手不足の労働力不足による、仕事の遅滞。
これをどうするかで必死である。
それを差し置いてまで住居の手配などまでできるわけがない。
そういう態で、タクマに仕事を押しつけてるのも確かだ。
面倒をこれ以上抱えたくないという切なる思いである。
だからといって放置してよいわけではない。
他に投げ出していいわけもないだろう。
だが、現実問題として、手をつける余裕が無い。
だからタクマにお鉢がまわっていた。
派遣社員という、本来ならば外部の人間に。
それでも、一時とはいえ現時点では傘下の人間に。
何より、外に出て活躍してる人間である。
他に適任者もいないだろうという事で、様々な面倒を任される事になっている。
(どうしてこうなる?)
現状に納得がいかない。
出来ないわけではないが、したくなかった。
困ってる人を見捨てる事も出来ないが。
(だからってねえ)
様々な手配をさせられるのはどうなのかと考えてしまう。
とりあえず、家族には近くにある空いてるマンションに入ってもらった。
もちろん違法行為である。
だが、そんな事気にしてられない。
住人がいるところならともかくだが。
空き家になってるところならあまり文句も言われないだろう。
だいたい、内側からドアやら窓やらが壊れたところである。
もとの住人は化け物になってるのだろう。
そんなところだから、住み心地は最悪だが。
会社よりはマシである。
当分、窓やドアは別の何かを代用してしのぐ事になる。
そういった作業もタクマらがする事になる。
もちろん、本格的な修繕が出来るわけもない。
段ボールやビニールでの応急処置がせいぜいだ。
それだけでも、やらないよりはやった方がマシになる。
あとは、室内の掃除。
破壊された壁やガラスの残骸はそのままにしておくと危険だ。
それらも片付けて、ある程度住めるようにしていく。
それでも快適とはいいがたいが、会社の床よりはマシだった。
それでも、素人にやらせて良いのかどうかというところだが。
玉を使って能力値を底上げすれば、やり方もおおよそ検討がつく。
考える力である思慮を増幅すれば、それくらい造作も無い。
どうしても分からないことは、まだ生きてるネットで調べる事も出来る。
ありがたい事に、必要な情報はヒタチが見つけてくる。
そんな有能さがありがたいのだが。
なんとなく腑に落ちない気持ちにさせられた。
「……なんでこんなに忙しいんだか」
化け物退治という外回り。
それに加えて、様々な手当の為の役所巡り。
更に、仮の住居の補修。
確かに本来の仕事でも何でも無い。
ぼやきが漏れるのもやむなしである。
「給料、上がんないと、やってられん」
妥当というか適切な不平・不満をこぼしていく。
そもそもとして、この状況で給料がどうなるかも分からないのだが。
そんな現実を都合良く無視して、目の前の悲惨に立ち向かっていく。
「どうなんだか……」
住居も、この状況も。
様々な事への呟きである。
それこそ、誰にも分からない事であった。
だからこそ不安となっていくのである。




