32回目 役所も警察も切羽詰まってるのだろう、だから有利な展開になってくれるが
ただ、それだけの人手確保のための手段。
空き家への不法侵入・不法占拠については説明や釈明も必要になった。
役所、ひいては警察が黙ってない。
それについてはタクマも直々に出向いて説明をしていった。
とはいえ、交渉自体は案外円滑に進んだ。
「状況が状況ですし」
「致し方ないとは思います」
役人も警官も、そう言ってタクマ達のやってる事を支持するように語る。
「ただ、家主や大家さんがいるなら、その方の許可を。
それだけは最低限やってもらわないと」
「いなくなった人……いや、人なのかどうかもう分からないけど。
人でなくなった人よりはねえ」
役人も警官もそんな調子だった。
「役所としても、人が集まっていてくれた方が色々はかどるので」
「うちも、人数がだいぶ減ったから。
集まっててくれると守りやすいんですよね」
それが役所・警察の見解だった。
立場上、全面的に支持するわけにもいかない。
しかし、状況を考えればこれも仕方がないと分かってる。
「まあ、問題だけは起こさないでください」
「何かあれば、我々も動くことになるので」
そう言ってタクマと役所・警察の会見は終わった。
「そう言ってくれるとありがたいけど。
ずいぶんと話が早くない?」
面食らってしまう思いだった。
「まあ、今はうるさい人もいないから」
「警察も鬱陶しい人がこなくなってるし」
人がいなくて困ってはいるが、邪魔をするような輩もいない。
それが風通しが良くなってる理由だった。
「あと、議員さんもね」
「いい人が残って音頭を取ってくれてるから」
ここでいう議員とは市議会議員のことだ。
そちらも人がかなり減ってるようだ。
「あれ、でも、市長さんは?」
こういう場合、指示を出すのは市長のはずである。
一応、行政のトップなのだから。
なのだが、
「その市長がね」
「いないんだよ。
どこに消えたんだか」
だから議員が市長の代わりをしてるらしい。
そんなわけで役所などはだいぶ柔軟に対応してくれている。
それでいて、一定の線引きははっきりしている。
踏み越えてはいけない部分は示している。
それもそう難しいものではない。
問題を起こさなければそれでいいというくらいだ。
普通に生活していれば、問題になる事は無い。
こうした事があって、警備から探索に人を回せるようになった。
はびこってるなら、化け物を処分。
いるならば生存者の救助。
その為に人が集められていく。
「役所と警察が、あそこまで物わかりが良くなるとは」
杓子定規というか。
手順書通りにしか対応しないのが役所の基本である。
致し方ない部分はあるが、それで対応が後手に回る。
それが今や、必要な措置を適切に行っている。
奇跡のように思えてしまう。
その変化に驚くが、悪いことではない。
そうでないよりはずっと良い。
おかげでずいぶんと動きやすくなった。
「可能なら、所帯持ちの人も集めよう。
ばらばらになってるよりは安全だ」




