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いきなり人間が化け物になり始めたので、生き延びるためにあれこれ奮闘しようと思います  作者: よぎそーと
1章2節

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30回目 放り出すわけにもいかず連れてきたが、分かるのは悲惨な事だけ

 問題といえば、もっと大きな問題もある。

 連れてきた女の子だ。

 今は会社で寝泊まりさせてるのだが。

 これからどうしようというところである。



 身寄りがあるならそこに連れて行くのだが。

 家の状況を思い出すに、それもあやしいものである。

 それでも、何か分からないかと思って、女の子のいた部屋に向かったのだが。

 身元を証明するようなものが全く見つからなかった。

 親はともかく、実家などが分かれば、そちらに連れていこうと思って。

 しかし、それはそれで難航した。



 保険証やら個人番号カード。

 そういったものも見当たらない。

 唯一見つかったのは、親のものとおぼしき免許証。

 だが、それだけではどうにもならない。

 仕方なくそれを持って役所へと向かった。



 タクマ達のおかげ、とまでは言わないが。

 安全圏の確保が出来た事で、役所もある程度回復してきていた。

 とはいえここも人員不足である事にかわりはない。

 やれる事に制限はあり、どうしても完璧とは言えない。

 それでも、多少は何かが分かればと思って赴いた。



 幸い、確認そのものはさして時間もかけずに終わった。

 親の免許証などで身元は分かった。

 一緒に住んでる子供を保護してるというのも決め手になった。

 だが、それで分かったのはとんでもない事実だっった。



「ご家族……ですか」

「はい」

「はあ…………」

 役所の担当者は怪訝そうな顔をしていく。

「なにか?」

「いえ、それが……」

 言いにくそうに伝える彼は、とんでもない事を教えてくれた。

「無いんですよ、この方に家族は。

 少なくとも戸籍上、この方にお子様がいるという事はありません」

 何を言ってるのか分からなかった。



「どういう事ですか?」

「それが、本当に言った通りでして。

 この方には、少なくとも子供はいないんです。

 戸籍上では」

「それって……」

「どういう事かはこちらでも分かりません。

 ですが、おそらくは……」

「なんでしょう?」

「出生届を出してないのではないかと」



 何にせよ届け出が必要な事は多々ある。

 生まれた事を示す出生届もその一つだ。

 それにより戸籍が発生する。

 だが、それが届けられてないなら。



「考えられるのはこれです。

 他にも理由があるかもしれませんが」

「そうですか…………」

 何も言えなくなってしまった。



 それ以上手を煩わせるわけにもいかない。

 早々に退散していく。

 ただ、問題は何一つ解決していない。

 むしろ、はっきりとした形をとってきた。

「どうすんだ、これ……」



 このまま放っておけない。

 そう思って連れてきたが。

 問題はとてつもなく大きなものだった。

 捨て置くのが良いとは言わないが。

 連れてきた事を少しばかり後悔した。



 だからといって捨てるわけにもいかない。

 戸籍などの確認は出来ないのは確かだ。

 書類上は存在しないという事にはなる。

 だが、現実にそこにいる。

 放っておく事は出来なかった。



 その事はサヨを含めた他の者達にも伝えた。

 ほとんどのものが絶句した。

「そんな……」

 サヨに至っては顔から表情が消えていた。

 それだけ衝撃を受けたのだろう。



「おかしいというのは分かってたけど」

 連れてきた娘がどういう扱いを受けていたのか。

 それはタクマから聞いた数少ない話でも想像していた。

 また、玉の力を使ってある程度状態も把握していた。

「それで分かったんですけど」

 確認した体の状態。

 それはとんでもない事を示していた。



「あの子、いくつに見えます?」

「え?」

 唐突な質問である。

 だが、聞かれた事に素直に答えていく。

「そうだな……小学校の低学年くらい?

 一年や二年って事は無いだろうけど」

 小柄なのかもしれないが、それくらいの年齢だと思っていた。

 しかし。

「11歳くらいよ。

 痩せ細ってるけど、それくらいの年頃なの」

 タクマは言葉を失った。



「まともに育ててもらってないから、発育が遅れてるの。

 ネットで調べてみたら、そういう事もあるって」

「それって、あれか。

 虐待ってことか」

「ええ」

 頷くサヨ。

 それを見てタクマは頭が真っ白になった。



 話には聞いていた。

 ネットで目にする事もあった。

 だが、それが自分の身近にやってくるとは思わなかった。

「なんだ、それ……」

 何がどうなってそうなってるのか。

 さっぱり分からなかった。

 分かりたくもなかった。



「それで、着替えさせて分かったんですけど。

 体いろいろと……」

「怪我とか痣とかがあると?」

「うん。

 それも色々と。

 玉の力でそれも治したけど」

 聞いてるだけで胸くそが悪くなっていった。



「どうしたもんかな」

 本格的にどう扱うべきか考えてしまう。

 捨てる気はないが、接し方が分からない。

 もとより子供の扱いなど分かるわけもない。



「ああ、でも。

 名前とかだけでも分かりましたか?」

「それもなんですが」

「まだ何かあるんですか?」

 これ以上は勘弁してもらいたかった。

 しかし、現実は非情である。

「あの子、名前も分からないみたいなんです」



「え?」

 数秒ほど沈黙して出てきた声である。

 どういう事なのか、理解するのに時間がかかった。

「どういう事なの?」

「それが、名前を聞いても答えてくれないというか。

 答えられないというか」

 サヨも困惑しているようだった。

 何より、どう伝えればいいのか悩んでる。



「そもそも、声を出せるのかどうか。

 お話も出来ないんじゃないかと」

「…………」

 今日、何度目かの絶句である。

「会話って、自然とおぼえるものじゃないですか。

 それも出来ないような状態だったのかも」

「…………最悪だ」

 連れてきた子の育成環境、推して知るべしであろうか。

 何一つ推測もしたくないが。



「それで今の話じゃないですか」

「ああ」

「それで、もしかしたらと思うんですけど」

「……聞かせてくれ」

 決して聞きたくはなかったが。

「あの子、名前も付けられてないんじゃないかと」

「…………」

 違うと言いたかったが、否定する言葉が出てこなかった。



 しばらくの沈黙。

 それからタクマはようやく声を出す。

「もしかして、だけど」

「はい」

「あの子、『あれ』とか『それ』って呼ばれてたんじゃ」

 児童虐待でそういった事があったという話をどこかで見聞きした事がある。

 もしかしたら、あの娘もそうなのではないかと思ってしまった。

 話を聞くに、その可能性もありそうで怖かった。



 結局。

 連れてきた子で分かった事はほとんどない。

 ただ、親のものとおぼしき免許証。

 それから、名字が『かずら』というのが分かっただけ。

 それだけが、女の子について分かってる全てになった。

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おまえら、教えやがれ
  ↓
  ↓
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/479725667.html

『ピクシブのブースを使ってるので、その事を伝えておかねば』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/477601321.html

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