13回目 探知に引っかかったので、そちらを確かめにいく
「お待たせ」
「あ、どうも」
「仕事の電話ですか?」
「そんなところ。
これから会社による事になった」
こんな状況なので仕事はない。
だが、安否確認と、今後の事を決めるために顔を出して欲しい。
そういう事が電話で決まった。
「だから、お前さん達も付き合ってくれ」
「ああ、はい」
「わかりました」
二人としても断る理由がない。
他に行くあてもないし、一人でいるよりは良い。
なので、素直に車に乗る。
「それと」
運転席に入ったタクマは話を続ける。
「寄り道をする。
付き合ってくれ」
「……はい、そりゃあ、いいですけど」
「どこに?」
「すぐそこだ」
言いながら車を進めていく。
「ちょっと気になってな」
駐車場を出てホームセンターの裏側へと向かう。
周りは住宅地となっており、その中を進んでいく。
その中の一つ。
古びたアパートの前で車を止める。
「どこなんです、ここ」
「知り合いですか?」
「いや、違う」
「え?」
「はい?」
トモルとカヲルは怪訝そうな顔をする。
どういう事なんだと。
「まあ、とにかくさっき気づいてね。
無視して放置するのも、気分が悪いから」
その言葉に更に首をかしげる。
何の事かさっぱり分からなかった。
だが、タクマは気にせず話を進める。
「二人はここで見張っててくれ。
化け物が来たら頼む」
「ああ、はい」
「そりゃあ、まあ。
ああ、でも」
言いよどむカヲル。
「なんだ?」
「あの化け物とはさすがに……」
「ああ、そうか」
言いたいことをすぐに理解する。
「これを持っておけ」
取り出した玉の一つを渡す。
「使い方は、手に取れば分かる。
そう念じろ。
あとはそれが教えてくれる」
「はあ……」
「なんなら、トモルに聞いてくれ」
そう言うとタクマはアパートへと入っていった。
アパートもそうだが、住宅地自体も古いものだ。
そのせいなのか、家の間が狭い。
おかげで日差しが入りにくくなっている。
アパートもその例に漏れず、どこか薄暗い印象を受ける。
そのアパートの玄関ではなく、庭の方にまわる。
そちらの方はガラスが割れていて、中に入れるようになっている。
化け物になった人間が中から飛び出したのだろう。
それがどこに行ってるのかは分からない。
一応、探知をしてみるが、周囲に化け物の気配はない。
その上で、目的の部屋へと向かう。
(一階で助かった)
二階だったら少し面倒になっていた。
そう思いながら部屋の中に入っていく。
散らかった、汚い部屋だった。
人が動く範囲だけ荷物やゴミがない。
そんな部屋だった。
その部屋のトイレへと向かう。
用を足したいわけではない。
そこに気配があるから来たのだ。
電話をかける前に、広範囲にかけた探知。
それに反応があった。
ホームセンターのすぐ後ろにある、このアパートから。
それだけなら、無視しても良かったのだが。
反応の大きさが気になった。
それがいるのが、このアパートのこの部屋。
他の住人は逃げ出したのか、化け物になったのか。
それとも、命を失ったのか。
そんな中で一つだけ、生きてるという反応があった。
まだ小さい、生命反応が。
トイレのノックする。
「おーい」
声をかける。
「いるんだろ。
分かってる。
助けにきた」
無駄だと思うが、そう言ってみる。
だが、返事は無い。
(そりゃそうだろうな)
化け物がいきなりあらわれたのだ。
そこに、知らない誰かがやってきてる。
助けに来たといってすぐに信用出来るわけもない。
警戒するのが普通だろう。
(しょうがないけど)
それは分かってるから、タクマも手段を選ばない。
玉の力を使っていく。
扉を透視し、鍵を外していく。
念動力を使えば簡単な事だ。
(らちがあかないし)
今はあれこれ気遣ってる暇もない。
強引にでも事を進めていく事にする。
そうして無理矢理開いたドアの向こうには。
小さな女の子が立っていた。
こわばった顔をして。
警戒してる……のとはちょっと違うと思った。
(こりゃあ……)
感情や表情が欠落してるという印象を受ける。
それを見て、なんとなく察した。
玉の力を使うまでもない。
部屋の状態から察する生活環境。
目の前の女の子の状態。
そこから推測できるのは、
(虐待か……?)
断言は出来ないが、その可能性が感じられた。
そう思ったら、余計にここに放置できなくなった。
これからどうするれば良いのかは分からないが。
ここに置いていくわけにもいかない。
「行こう。
ここにいてもどうにもならない」
そう言って手を引く。
だが、動こうとしない。
どうしようと思うが、時間もない。
「しょうがない」
強硬手段に出る事にする。
玉の力を使う。
相手の意識に作用するように。
相手の思いを感じ取る共感と。
自分の考えを通す意思。
それを使って相手に作用させていく。
「悪いと思うが、勘弁してくれ」
そう言って、目の前の女の子の意識に介入する。
その意識を睡眠状態に持って行く。
女の子を、立ったままうつらうつらとしていった。
下手に抵抗されたりしないようにするために。
その体を抱える。
「お待たせ」
外で待ってた二人に声をかける。
タクマに向いたところで固まる。
「あの、それは……」
「何してんですか……」
この場において最も適切な態度をとっていく。
「まあ、それは後だ」
説明するのも面倒なので、強引に押し切る。
「行くぞ。
早く座れ」
納得がいかない顔をする二人。
しかし、無言で車に入る。
それを確かめてタクマは、アクセルを踏み込んだ。




