4話 初めての冒険
4話
俺たちは冒険に出るパーティーを4人で組むことになり、《チーム文芸部》と言うダサいパーティー名の
パーティーを結成した。
初めは大助が《ダークサイドの集い》を提案したが
さっきの無理やり崖から落とした事件のこともあり
気の弱い大助は愛梨と奈津美の反対に押し切られ、
あの2人に任せた結果このようなダサい名前になった。大助の事を気の弱いなどと言ったが俺も
あっさり愛梨と奈津美の威圧に負けて頷いてしまったのだ。
「大助、今日はどこで寝泊りするんだ?」
「そうでござるな、冒険者支援金として
1人金貨一枚ずつ貰ったが武器や装備なども買わなければならないでござるし、我慢して安い宿に泊まるしかないでこざるな、それか野宿も一つの手でござる」
「野宿だけは嫌ですわ!どんな悪い人がいるかも
分からない所で危ないですわ、それと男子どもが
悪戯してきそうで怖いですもの」
愛梨はそこまで気にしてないようだが奈津美は拒絶している。幼馴染みとしてはもう少し女の子らしく
野宿することに拒絶してほしかった。
「あ、あそこの宿は安そうでござる」
いやいや、あそこはないだろ
二階建てで入り口の扉の前にタトゥーをいれてる
近寄ったらカツアゲされそうなチャラいお兄さんが
集まっていて、ヤクザのアジトみたいな所である。
「俺は、嫌だな」
「愛梨もやだ」
奈津美はありえないと思ったのか黙ってその宿の前を通り過ぎた。
「あ、あの宿はいいんじゃないか大助?」
「あー、きれいでごさるな、けどかなり高そうでござる」
「いいじゃんあそこで、もう愛梨足クタクタだし
早く座りたいんだけどー」
奈津美は黙ってその高そうな宿に入って行った。
あの事件から女子の言うことは絶対になって
いるため俺たちも何も言わずに奈津美についていった。
結局、大助の予想通り銀貨8枚と、高い宿だった
「うわー、おいしそー!」
愛梨がよだれを垂らしながら今届いた大助の
ジャイアントフロッグのひき肉ハンバーグを見ている。
「ねぇ、佐藤ちょっとちょうだいよ」
「いやでござる、皆で割り勘と決めてから店で
1番高額な炎馬のステーキを頼んだ者には一口も
あげないでござる、一回の食事で銀貨1枚はありえないでござる」
さっきまでは愛梨の方が立場が上であったが今は
逆転して大助の方が上なのだ。
「一口の半分でいいからちょっとちょうだいよー」
しつこい愛梨に疲れたのか大助は小皿に一口の
ハンバーグを乗せて愛梨にあげた。
「ありがとう!」
愛梨は大助からもらってすぐに口の中に入れ、
幸せそうな笑顔で頬張っている。
「アリンコさん、そのハンバーグは
ジャイアントフロッグというカエルの肉なのですわよ」
みんなで愛梨が知って悲しまないようにしていたのにあっさり言ってしまった奈津美。
やはり愛梨に負けずに性格が悪いのだ。
「え、うそ、ぐうぇぇぇ」
※※※※
宿で一泊し、一日中歩き回った疲れがとれて
俺たちは宿から出てそれぞれに合った武器や装備を
買いに行くことにした。
(カランッカランッ)
俺たちは街で一番と有名な武器屋に入った。
「いらっしゃい」
スキンヘッドでマッチョのおじさんが店の奥から
出てきた。
「我達は今から冒険に行こうと思っているのだが
いい武器はあるでござるか?」
「おう、兄ちゃん達は冒険者成り立てみてーだな
最初はこの軽い片手剣とかがいいぞ、持ってみな
ほれっ!」
マッチョのおじさんが大助に向かって剣を投げた。
大助は片手剣をキャッチしたが意外と重かったのか
体が沈んだ。
「思っていたより思いですね」
「そりゃな、それを片手で振り回せるようにならないといけないんだぜ」
大助は片手剣を持ち数秒止まって剣に集中すると、
刃が紫色に光った、これが大助のスキルである。
紫色になった剣は大半のものを切れるらしい、
もちろん盾や装備も貫通する。
使いこなせば最強になるチートスキルだ。
大助はこの片手剣を買った。
なんのスキルも持っていないが一応俺も片手剣を
買っておいた。
次に魔導書屋に行き、愛梨のパワーグローブと
奈津美の魔法書と杖を買った。
愛梨のスキルは拳と足が赤く光ると力が
50倍の威力になるスキルであり、
奈津美のスキルは杖が青色に光ると全属性の魔法を
使えて、氷属性に特化するスキルである。
奈津美が氷属性に特化しているのは性格から来たのだろうか。まぁどうでもいいがこれは確かである、
俺以外チートなのだ。
「いよいよ冒険が始まるでござるな」
俺達は街の門を出てこの世界に落ちてきた時の
森の中を歩いている。
「そうですわね、あの、戦闘態勢ですが
アリンコさんと佐藤君で前衛を頼みますわ、
私は後ろから魔法を放ちますので風馬君は私の
ことを守ってくださる?」
「お、おう」
急に奈津美が仕切りだしたので反応に戸惑った。
疲れている時は全く喋らないが元気な時はよく喋るな、かなりの気分屋だな。
「なんで風馬が沢美を守る必要があるのよ
風馬は愛梨のこと守ってよね!」
「皆気をつけるでござる、今オオカミの鳴き声が
聞こえたでござる。」
「ガルルルルッガルルルルッガルルルルッ」
鳴き声の多さから結構な数のオオカミがいるようだ
「サークルリサーチ!」
奈津美が呪文を唱え周りのオオカミを数えた。
ていうか、冒険に出始めた時からずっとチート3人
の武器光ってるな。ずっと使えるのか、強すぎだろ
「佐藤君、オオカミは24匹ほどいるみたいですわ、
どうするのですか?」
こういうピンチな時でも焦らない奈津美のことを
かっこいい女と言うのだろう。
いつもの態度や行動を見ているとかっこいい女と言えるかどうか迷うが、戦いの時に冷静に行動できることは良いことだ。
「皆大丈夫、剣術スキルを使うでござる
伏せるでござる」
「三ノ型、剣の舞!」
大助は片手剣を両手で持ち、剣を引きずりながら
回転し、遠心力をつけてから剣を浮かせて高速で
二回転し、紫色の刃でオオカミ達を切り、
24匹の群れを一人で消滅させた。
剣がツタのように曲がりながら伸びて範囲攻撃を繰り出すとは、流石チートスキルだ。
わざわざ技名まで侍風にする大助の行動のせいで
忘れかけていた大助が中二病であることを思い出させてくれた。
経験値はパーティー全員で山分けされるらしく
4人ともレベル4になった。
「佐藤ー!愛梨の出番を横取りしたな」
「静かにするでござる!」
大助が真面目な顔で言い、ビビる愛梨。
「ぎゃーーーーぁぁぁあああ」
女の冒険者が死にものぬぐい走って来た。
「どうしたんですか?」
「ひ、東の方からダークドラゴンが、飛んできて
ゴブリン村を襲い、守ろうとした私の仲間が全員
食べられました!もうじきここにも来ます、
逃げてください」
女の冒険者はそれだけ言って走って逃げていった。
「大助どうする、俺らは一応まだレベル4なんだから
流石に逃げた方が良いと思うんだが」
「いや、我達はステータスSSなのだ、我達が倒さなければ街やゴブリン村に大きな被害が出てしまう
行くでござる!」
俺たちは討伐をするため、奈津美のサークルサーチ
を使ってダークドラゴンを探していたら、、、
(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ)
晴れていた空が急に真っ黒の雲で覆われ、
一瞬で夜の森と化した。夜の森は俺達を心細くした。
「何も見えないでござる」
「私が光の魔法を使ってあげますわ」
「サンライト!」
すると奈津美の水をすくう様にくっつけた両手の上に小さな光の玉が現れ、周辺を照らした。
「あかるーい、たまにはやるわね沢美」
「たまには無駄ですわよ」
愛梨達の言い合いが始まろうとした時、、、、。
(バタバタバタバタ、ぐぉぉぉぉおおお)
名前の通り真っ黒なドラゴンが俺たちの上空に現れた。
「こいつがダークドラゴンか、」