2話 赤い本
2話
部屋にいる俺も含めて3人が椅子に座りながら冷たい目で見た。ちなみに俺は全力で笑いを堪えている。
「「「、、、、、、、、、、、、、、、」」」
「で、なんで愛梨がアリンコなのよ沢美!」
「あなたが沢美って呼ぶからですわよアリンコ」
「な、また言ったな!」
異常な男が入ってきたのにも関わらず言い合う2人
それに合わせて黙り込む俺、
なかなか酷いことをしている。しかし罪悪感とかは
一切ない、こういう空気にした中二病男が悪いからだ
一瞬黙って真顔になった中二病男だったが
再挑戦するのか再び表情を変えてきた。
「ふははははっふははははっ やはり 低脳の人間どもにはダークマターの魔王の声は聞こえぬのだな!
ふははははっふははははっふははははっふははは」
両手を腰に当てて最初は堂々と言っていたが
時間だ経つに連れて笑い声が小さく心細くなっていった。俺だったら窓から飛び降りていても
おかしくないレベルのイタさである。
しかも、ダークマターはただの暗黒物質で悪の組織
でもなんでもない。絶対ダークマターの意味しらねーだろ。
「なんで誰も聞いてくれないんだよ
僕はこんなに頑張っているのになんでだよ、
なんで僕はみんなにさけられんるだよ」
中二病男が猫背になって、ぶつぶつと言い出した。
結構みんなにスルーされてるようだな、
やっぱりキャラが濃いやつに限って表と裏があるもんだな。怖い怖い
あまりにも早い中二病の折れっぷりに愛梨達が驚き
ようやく存在を取り戻した中二病男。
どーせ、これが狙いだったのだろう。
「どなたですか?」「どなたですの?」
愛梨と奈津美が同時に聞いた。
あーいう風に見えて2人は仲が良いのかもしれない
「僕は漆黒の国から来たダークマターの魔王だ!」
胸を張って大声で言い、中二病男のせいでまた沈黙の時間が来た、こいつは反省をしないようだ。
本当のアホなのか?こいつは。
「なんで沢美が風馬のこと風馬って呼ぶのよ!」
「アリンコが風馬と、呼んでいるからですわよ」
「愛梨は幼馴染みだからいいの!」
モテるって言ってもなかなかこんな目の前で俺の事で言い合ってくれてることがないから、
すんごい照れる笑。別に嬉しいとかじゃないけどね。
「おい、お前ら!そろそろ僕の話を聞いてくれないと必殺の黒炎玉を放ってしまうぞ、どうするんだ?」
「別にいいよ、愛梨はカウンターを持っているから
あなたの攻撃は一切当たらないの、全部避けて
とどめに破壊光線打ったらダークマターの魔王なんて
イチコロだけど、どうする?」
愛梨が悪い方向に育っていくのが垣間みえて
少し怖かった。
「すまん、すまん、分かったから、落ち着いてくれ!
僕が悪かった!」
愛梨は、ものすごく落ち着いている、
焦っているのは、中二病男だけだ。
結局ダークマターの魔王は俺らの下についた。
本当のアホのようだこいつは。
まぁ、アホの方が取り扱いやすくていいのだがな。
「で、どなたですの?」
再び奈津美が聞いた。
「僕は2年の佐藤大助、先生に無理やり入部させられて来ました。」
「あ、一応部員なのですねよろしくお願いします」
奈津美がぎこちない笑顔で言った。
「よ、よろしくな佐藤」
俺も後に続いてちょっと威圧を出すような感じで
偉そうに言った。
「はい、よろしくお願いします、」
「あのー、1ついいですか?どうか僕のことを大助と呼んでいただけませんでしょうか?」
また猫背になり佐藤が申し訳なさそうに言った。
「うん、いいよ大助、
てゆうかなんで敬語使ってんの?別に普通に話せば
いいんだぞ?」
面倒くさいのか2人とも突っ込まないので
俺が突っ込んでやった。
「いいんですか?」
「うん」
「うおおおおぉぉぉぉぁぁぁあああああ!
僕の右腕がぁぁぁ誰か封印を解いてくれーー!」
こいつにとっての普通がこれだったことを忘れていた俺は大助に気づかれないように愛梨達に両手を合わせて謝った。
「では、私たち帰りますから部屋の鍵閉めておいてくださいね。」奈津美がすっきりした顔で言った。
愛梨と奈津美は帰る準備を密かにしていたらしく、
さっさと俺をおいて帰ろうと椅子から立ち上がって
部屋から廊下に出る扉の前で止まり、振り返って
俺の方を向き、わざわざ合わせてウインクしてきた。
うーわ、ないわーやっぱり人は信じ無い方がいいな、
あいつらさっきまで言い合って仲悪そうだったのに
急に協力しやがって、女というのはよく分からない
生き物だなほんとに。
それから俺は大助の右腕を見て、
封印とか言うものを解いてやりようやく帰ることが出来た。
※※※※
授業が終わり、愛梨と文芸部の部屋に入ると
《今日は文芸部の活動でもある図書室の整理を
行う、図書室に来てくれ。》
と黒板に書いてあったため、俺たちは図書室にむかった。
(ガラガラガラ)
図書室に入ると、
「お、来たか遅いぞ」
先生と奈津美と大助が3人で本棚の整理をしていた。リュックを置いて俺たちも整理を始めた。
「図書室の整理が終わったら次は資料室の整理を
するのだが、私は出張に行くことになっているから
資料室の整理はお前らに任せるぞ」
「はい、分かりました。」
両腕に本を抱えながら返事をした。
それから30分が過ぎ、出張の時間がきて
先生が出張だるいを暗い声で連呼しながら図書室から出て行った。
すると、急に何かの音が鳴りだした。
「しゅっ!しゅっ!しゅっ!しゅっ!」
「さっきからこの音は何なの風馬?」
「これは我が発している音だ、
本を棚に入れる時にどうしても効果音が鳴ってしまうのだ。」
やはり大助だった。今日は侍の気分らしい、相変わらずおかしなやつだ。
本を入れると同時に大助の口が動いているのに気付いた俺たちはかまわず、黙々と整理を続けた。
しばらくして資料室整理に移り、俺が資料室の
1番奥の棚を整理している最中に音が鳴った。
(ガタンッ)
また大助か、今度は何をしてるんだ?
「大助ーどこだー?」
「ここでござる」
「今何か落とした音が聞こえたんだが、
何か落としたのか?」
「いや、何も落としてないでごさる。」
はしごの上から首だけをこっちに向けて返事をしてきた。
(ガタンッ)
「ほら、今の音だよ」
「ん?何の音もしてないでごさるよ」
「どうしたの風馬?」
反対側の棚から愛梨が話しかけてきた。
「さっきから物が落ちる音が聞こえるんだよ」
「どーせまた佐藤でしょ、ほっときな」
「どーせとはなんでこざるか、どーせとわ!」
ちゃんと大助は聞いていた。
いや、違う、俺には何かが呼んでいるように聞こえる。大助ではない。
(ガタンッ)
まただ、何の音なんだ?
俺は不思議に思い、音のする方に行ってみた。
(ガタンッ)
ん?赤い辞書みたいな本が落ちたのか、なーんだ。
周りに置いてある本と違って派手な表紙だな、
どんな内容なんだろう?
俺は本を開いた。すると持っていた本が急に宙に浮いて黄金に光り、
俺たち4人はその本に吸い込まれていった、、、。
※※※※
(ゴゴゴゴォゴゴゴゴォゴゴゴゴォゴゴゴゴゴ)
「風馬!?これ何が起こってるの?」
「わからん、けど俺たち4人が空から落ちてる
真っ最中ってのは分かる。」
「風馬君、このままだと落ちて4人とも死んでしまいますわ!どうしますの?」
「わからん!どうにかなるんだったら
もう何とかしてるよ!」
少し切れ気味で言ってしまった。
「皆の衆、安心したまえ
これは異世界転移と言ってな、多分我たち4人は
異世界に来てしまったのでこざる。」
「それのどこが安心できるのよ!」
「転移されて来たということは今から物語が始まる
ということで、これで死んでしまっては物語は
始まらないでござろう?」
「それは私達はまだ死なないということですの?」
「そういうことでごさる!
だから皆の衆は安心して落ちるでござるよ」
大助は満面の笑みで頭から落ちた。
(どっっっかぁぁーーーーん!)