1話 始まりの文芸部
1話
(ドックンドックンドックンドックンドックン)
自分の心臓の音が聞こえてくる。
俺は何もしていない!
殺したのはあいつだ!本当だ!
なんで誰も信じてくれないんだよ
あいつは笑っているじゃないか!
あいつの不気味な笑顔を疑わないのか?
なぁ、なんで俺だけこんな思いしなきゃいけ無いんだよだよ。
※※※※
俺は旭丘高校に通う、2年の結構モテる早坂風馬だ。
大事なのでもう一回言う、結構モテるのだ。
「先輩!入学した時からずっと好きでした!
私と付き合って下さい!」
顔を真っ赤にして言ってきた。
1年の見たこと無い女の子から早速告られた、
俺はよくナルシストとか言われるけど、
ナルシストではない、ただ過去にあったことを話しているだけだからだ。この世界ではイケメンが
絶対主導権を握っている、ごく少数には都合が
良い世界だが大半の人は不満を持っているだろう。
つまり俺はこの世界でチート的存在なのだ。
「あー、いいよ、じゃあ今度の土曜日2人で会おっか!」
いつも通り軽い感じでデートの約束をした。
もう、こういうのは慣れたから刺激がないな。
「はい!ありがとございます!」
女の子は走って廊下の角で待っている友達と合流して
はしゃぎながら帰っていった。
俺も帰ろうと階段を降りようとした時、
誰かが後ろの襟を強引に引っ張ってきて
限界まで体を反った体勢になった。
「風馬?また女の子たらしてたの?」
見ている世界が逆さまになったまま幼馴染みの愛梨が
殺気のこもった笑顔で聞いてきた。
昨日はヘッドロックだったのに今日はなんだよ
もっときつくなってねーか?
「いや、別にたらしてたわけじゃないんだ、
全然知らない子が急に話しかけてきてさ」
誤解を解こうと両手をあたふたさせている。
どちらかと言うとあっちの方がたらしてきたのだ。
俺は悪くない悪くない。
「んで?なんか約束してたよね?今度の土曜日だっけ?」ちょっとキレ気味で聴いてくる愛梨。
「そ、そう2人で会うことにしてね、、、
久しぶりのデートだから結構楽しみにしてるんだよね」逆さまになった状態で頭をかいた。
「愛梨も土曜日一緒に行く!」
何言ってんだこいつ。
「今2人で行くって言ったよなー?
あと、そろそろ襟を離してくれ」
完全に忘れていた様子で、あ、と口に出して離してくれた。
「別にいいじゃん私は友達っていう設定で行くから」
「だめだよ、2人で行くって約束したんだから、
ていうか、なんで愛梨が行きたがるんだよ」
「だって2人でなんかあったらいやじゃん、、」
愛梨は小さい声でぶつぶつと言った。
「ん?なんて?なんか言ったか?」
「もー、何でもない!とにかく私も行くから!」
それだけ言って愛梨は走って帰ってった。
※※※※
「奥村せんせー書けましたー」
「どれどれ」
先生は黙々と俺の作文を読んだ。
「はー、君は何回言ったらわかるんだよ、
今回の題名はクラス全員統一して、人を信じて協力する良さについてだったよな?君はコンピュータ以外信じないって、そんなんじゃ友達も彼女もできないぞ?
もっと君は人を信用すべきだと思うのだが、」
そう言うと
先生は何を考えているか、足を組み下を向いて顎に手をそえた。
俺には愛梨という、しつこい友達がいる。
ん?あれは友達なのか?
「あのな、早坂の考え方を矯正してやろうと思ってな
文芸部に入ってみないか?」
「はいはい、考えときますね、」
「せんせーさようならー」
下を向いてしばらく考えた結果がこれだ。
文芸部の部員が足りなく、困っていることを知っていた俺は、さらっと流した。
「ちょっと待ってくれ早坂!
文芸部員が1人しかいなくてこのままだと文芸部が
潰れてしまうんだよ。」
「たのむ、入ってくれ!」
先生は必死に俺の右腕を掴んできた。
「先生、離してください」
「離さん!入部届けを書いてくれるまで絶対にな!」
職員室にいる先生達の目線が集まった。
俺は周りの人から注目されるのが嫌いだ。まぁ俺はイケメンだから常に注目されてるのだが、こういう風な、問題を引き起こしたやつ!みたいな感じで注目はされたくない。
「書いたら帰らせてもらえるんですか?」
俺は無意識にため息が出た。と同時に周り視線が
他に移ったことにホッとした。
「きょ、今日のところはいいだろう」
あっさり了承した俺に驚いたのか
先生は少しテンパった。
「奥村先生、書けました。」
「よし、これで早坂は部員だな」
「早速明日から文芸部の部屋に来てくれ、じゃあな」
結局、奥村先生のわがままで入部することになり、
ようやく家に帰ることが出来た。
※※※※
最後の授業のチャイムが鳴り、俺は文芸部に向かった。
(ガラガラガラ)中を見回すと、
黒リボンで黒髪ロングの女の子が1人椅子に座って
シャーペンを持ち一人で何かを書いている。
俺に気づいたのかの芯をしまいノートを
閉じてこっちに顔を向けてきた。
「何しに来られたのですか?文芸部に何か用ですの?」
「先生に強制的に入部させられて来たんだけど、
先生は?」
ここでいかにもやる気ないですよアピールをした、
やる気ないなら入部しないで下さい、とか言ってくれたら助かるんだけどな。
「まだ来こらてないですわよ、しばらくしたらここに来られると思いますけど、」
「そうか、、、」
やっぱり、そう上手くはいかないか、
俺は壁によせてあるたくさんの椅子から一つ取り、
部屋に一つしかない長机に
黒髪の女の子と俺で対角線を描くように
1番遠い場所に座った。
「あなたの名前は?」
「俺は2年の早坂風馬、君は?」
「私は滝沢奈津美、同じ2年ですわよ」
「「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」」
しばらく沈黙が続き、気まずい雰囲気になり
俺もひっそりとリュックから本を取り出し、読み始めた。その時
(ダンッ!)
急に扉が開き愛梨が入って来た。
「風馬?また女の子?どんだけ女好きなのよ!」
なんの空気も読まずに大きな声で入って来たが、
気まずい雰囲気から助けてくれたので
文句を言うのはやめておこう。
てか、なんで俺の居場所が分かったんだ?
「いや、別にそんなんじゃないって!
文芸部に入ることになったから先生待ってるだけで」
愛梨は細い目で俺と滝沢さんを交互に見た、
完全に俺を疑っている。
「どなたですの?早坂君の友達?」滝沢さんが聞いた。
「いえ、風馬の幼馴染みの高橋愛梨です!」
愛梨が腰に手を当て堂々と言った。
「それで、高橋さんは何をしに来たのですか?」
面倒くさいのか、滝沢さんは何も突っ込まずに話を変えた。
「愛梨はただ風馬が文芸部に入るって聞いたから
様子見に来ただけだったけど、あなたと2人きりで
部活してて風馬が寂しそうだったから私も文芸部に
入ることにしたわ!」
愛梨が見下すような目で滝沢さんに言った。
あー、そういうことか。
(ガラガラガラ)先生が入って来た。
「あら、お客さん?それとも入部希望者ー?」
明らかにそれとも入部希望者ー?の声のトーン
だけが良いことが分かる聞き方である。
「入部希望者です!」
「そうか!大歓迎だ!はいこれ、入部届け
今すぐ書いてね」
今すぐ、てことは今までで入部届け渡したけど書いて
もらえなかったことがあったんだ、可哀想に、、
別に内心笑ってるとかじゃないからね。
「よし、これで高橋さんも部員ね!」
部員が増えてご機嫌の良い先生は
○ケモンゲットだぜ、みたいな感じでガッツポーズを
して、スキップしながら出ていった。
「そう言えばあなたの名前を聞いてなかったわね」
愛梨が足を組んで偉そうに聞いた。
何様なんだこいつは、たまに一緒にいて恥ずかしくなるな。
「私は2年の滝沢奈津美よ、よろしくね」
滝沢さんは愛梨の態度にひるむことなく自己紹介した
「じゃあ、あだ名は省略して沢美ね」
鼻で笑いながら言った。
「そーですか、ならばあなたは愛梨の、あとり、
を取ってアリンコですわね
あ、それと早坂君は奈津美って呼んでいいですわよ」
滝沢さんもなかなか負けず嫌いなんだな。
2人の言い合いが始まり、ますます気まずい立場になった俺は下を向いた。
「なんで風馬が下の名前であんたを呼ぶ必要があるのよ!」愛梨は眉間にしわをよせて言った。
「あ、風馬、私もこれから早坂君のこと風馬君って
呼びますわね」
愛梨、この人はなかなか強敵だぞ。
滝沢さ、奈津美は愛梨をからかって遊ぶのにはまったようだ。
しばらく、ぐちぐちと2人の言い合いが続き
5分が過ぎた時、
(タッタッタッタッタッ、ダンッ)
1人の男が廊下を猛ダッシュして扉を開けてきた。
かなり息が切れている様子で膝に手をつき
5秒ぐらいしてからようやく普通に立って喋った。
「僕を召喚したのはお前らか?
僕を呼んだということは、わかってるんだろうな?
捧げる供物を用意してるんだろうな!」
旭丘高校で有名な中二病男だ。