Close3:ルールー・ルシルはご立腹
景色を楽しみながら、カレンは東の街“イスタデル”へと向かっていた──
雲が少ないわりには、陽の暑さで顔をしかめることもない適度な温度。
そんな快適な旅ですが、野生の生き物達はカレンの姿を目で追いながら、辺りを警戒しています。
「何かしら? 皆が怯えていますわ」
前方の大きな岩に寄り掛かるようにして立っている人影が見える。
どうやら動物達は、その者を警戒しているようで……。
「あなた、カレン・バースレインね?」
「カレン、気を付けて。この人……多分カレンくらい強いよ」
ヤドリギは人の魔力を視認することが出来る。杖なのにと思われるかも知れないが、魔法や魔力に関してヤドリギが言うのなら、それは間違いないことなのである。
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
「世界を救えれば、どんな犠牲が生まれてもあなたは気にも止めないのね!」
全く思い当たる節が無く、カレンは魔王討伐の為の旅、つまり1周目に出会った人達の顔を思い出していた。
「私の名前は、ルールー・ルシル。いくら思い出そうとしても無駄よ! だって、あなたに会うのは……これが初めてだもの」
ルールー・ルシル。確かに会うのは初めてだが、その名は耳にしたことがあった。
「魔力を生み出す魔女……でしたでしょうか」
「あら、知っていただけているようで光栄だわ。なら話は早い。カレン・バースレイン! 私の要求を飲みなさい!」
一方的に因縁を抱き、乱暴なまでな行動力で詰め寄るルールー・ルシルは、いったい何を望んでいるのだろうか──