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見つめた星  作者: ルカニウム
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第九夜★ 『星に誓いを』

私は見ていることしか出来ない

今夜もずっと見届けよう

そこに生きるものたちを…



近頃 私の目覚めが早くなってきた

まもなく 地球には冬が訪れるのだ

人は暖かい衣類に身を包み 夜は火を起こし

その熱で暖をとる

この季節は人々も動物も 暖かさを得るため

皆が身体を寄せ合っていた


この夜 町の石畳を抜け 坂の上にある

朽ちた教会が 月明かりを浴びて

神秘的な雰囲気をみせていた

古めかしい十字架 割れたステンドグラス

落ちた天井からは 夜空が眺められた


闇も深まりだし 町が眠りに就いたころ

石畳の坂を登る若い男女を見つけた

二人は手を取り合い 小走りに坂を登っていた

大きな荷物を二つ抱えて


そして 坂の上にある朽ちた教会へと

二人は入っていった 立派に見えた扉も

鍵も無く 今にも壊れてしまいそうだった



虫も眠るこんな時間に 二人はどうしたのかと

私は興味深くなり 見届けることにした



二人は荷物を置き ゆっくりと

月明かりの差す祭壇へ 手を繋ぎ歩んでいた

ただ 慎重に真っ直ぐに 祭壇へと歩んだ


そして 祭壇の前へと着いた二人は向き合い

互いを見つめた


月明かりがステンドグラスに当たり

二人が照らし出された姿はとても鮮やかで

色とりどりの花のようだった


青年はポケットから小さな箱を取り出し

それを娘に見せた 娘はとても感激したのか

目に涙を浮かべそれを喜んだ


ああ そうか 人は夫婦となる誓いのとき

指輪というものをプレゼントするのであった

と思い出した


小さな箱には 揃いの指輪があった

青年はそれを取り出し 娘の左手の薬指に

そっと指輪を通した

娘も指輪を取り 青年の左手の薬指に

そっと指輪を通した


二人は微笑み合い 月明かりの下

口づけを交わした


月明かりが柔らかく光り

二人の契りを祝福した


しばらく続いた 幸せな時間

私はそっと見届けていた


教会を出て 娘は町を眺めた

目に焼きつけるように 少しだけ寂しそうに


それを見て青年は娘の肩を抱き 共に町を見つめた

これが最後の景色だろう 二人の顔がそう物語っている


月の光りが町から離れていく影を道に写した



私は考えた

この二人はなぜ 皆に祝福をされず

二人きりで 教会に行き 夫婦となったのか

それもこんな夜に


闇夜を歩く二人を再び見下ろした時に

私は気づいたのだ

二人の荷物 それは夜道をただ歩き

誓いを交わすだけでは 大きすぎるのだ



二人の結婚は祝福してもらえず

反対されていたのだろう

それでも一緒になりたい二人は

町を抜け出し 誰も知らない場所で 愛を育むのだろう


最後に 生まれた町で 結婚をして 旅立ったのだ



このような愛の結果でも 私は良いものだと思った

愛が人を動かし それを力にしていく


二人がふと歩みを止め私を見つめ

手を合わせ祈っていた

二人の顔には希望が満ち溢れていた


この二人の無事を想い 私はきらりと瞬いてみせた

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今回はいわゆる“駆け落ち”をテーマに物語を書きました。

いまどき、駆け落ちとはあれですが

愛の形は変幻自在なのだなと思います。

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