第八夜★ 『最後の行進』
私は見ていることしか出来ない
今夜もずっと見届けよう
そこに生きるものたちを…
今夜は 夜空が慌しくざわめいていた
町を見下ろせば 闇夜の中 多勢の人が
暖かな服に身を包み 身を寄せ合い
星たちが瞬く 夜空を見上げていた
誰しもが嬉しそうに楽しそうに
子供たちも この日は眠らず 親に手を引かれ
抱きかかえられ 夜空を見上げていた
この日は数十年に一度の 星の消える日
星たちは 惑星の引力に導かれ
最後の煌めきを放ち 役目を終え永遠の眠りにつく
その煌めきは 一瞬で 鮮やかで 儚く
人々は 作り出すことのできない美しさに
魅了されているのだろう
私よりも もっと長くこの空に住む星たち
最後の姿を鮮やかに飾ろうと その身を燃やし
自分が存在してたことを 証明するかのよう
それはそれは 美しい最後を見せた
私もしばらくは それを見ていた
人々はいくつもの光を放ち 最後の行進をする
星たちに思い思い願いを送った
家族の平和 恋人との契り 笑顔が絶えぬ世の中
この強い想いは星たちに届いているのだろう
叶えることはできないが 星たちは
人々の想いに応えるよう 鮮やかな色彩を放ち
散りゆくまで 輝いてみせた
遠くの山から獣たちが顔を上げ
ともに身を寄せ合い とても穏やかな表情で
行進を見送っていた
種族は違えど 星たちの行進は
そこに住むものたちの心に届き 煌めきに
それぞれの想いを乗せているのだろう
私もいつの日か 迎えるこのとき
人々は何を願い 何を祈るのだろう
夜明けまで続く行進
今夜は人々と共に見届けよう
宇宙のゆりかごに眠りについた星たち
そして見届けたものたちへ
感謝の気持ちをおくるように
私は まだここで見届けているよ と
瞬いてみせた
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今回は流星群をテーマに物語をつくりました。
星が役目を終えて燃え尽きる時、美しさの中に感謝の気持ちを込められたら良いなとふと思いました。




