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見つめた星  作者: ルカニウム
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第六夜★ 『青年と苗』

私は見ていることしか出来ない

今夜もずっと見届けよう

そこに生きるものたちを…



とある島の森に 今夜も青年がひとり

ランタンを片手に 歩いていた

町から船を漕いで辿り着くこの島に

海が荒れない限り 青年は毎日通っていた


私は ここのところ 島と青年が気になり

雲が姿を現さない夜は それを見つめていた


青年は町で 深夜から朝まで 小さな工場で働いていた

夜が白むほんの少し前 私が眠る少し前

町で働いてるのを見たことがあった

とても真面目で 周りから信頼されていた


仕事が終わると 睡眠をとり 青年は船を出して

島へと向かった 大きなカバンにスコップ

それに 日よけの麦わら帽子をかぶって


青年は島の森で木の苗を植えていた

それはまだ小さな 赤子のようなかわいい苗を

毎日訪れては 苗に水をやり 陽が当たるよう

周りの木の枝を切り揃えたりしていた



島はその昔 豊かな緑に囲まれていたが

人々が木を切り過ぎた事が原因で 荒れ地になり

森が今にも枯れそうな状態になっていたのだった

これ以上 木が取れないと知り 人々はあっさりと

島と森を捨て去ったのだ 恵みをもらうだけもらって


そのまま森は傷を負ったままで

何年も放置されていたのだ


青年は たまたま訪れたこの島の姿を見て

悲しくなり 先人たちの行いを悔やんだ

同時に自分にできることがないかと考え

森を耕し 苗を植え始めたのだ

ただひとり くる日もくる日も青年は植えていた

森に謝るように



私の知る人とは 自然と生き 自然を愛し 自然を敬い

そうして生きてきたはずだった


自然が人を育て 人が自然に恩返しをしていた

それが いつの日か人は 自然の恵みを人同士が

奪い合うようになっていったのだ

恵みを独り占めし 自然を汚した


それも今を生きる人の営みなのだろうと

思っていたが 人の本来の姿を 青年に見た気がした



月明かりとランタンに照らされた 青年の植えた

小さな苗を見つけた

日中の陽を浴びて すくすく育っている

夜は月明かりが注ぎ 風のゆりかごで

すやすやと眠っていた


青年は成長する苗を嬉しそうに眺め

そっとその葉を撫でた

我が子を見守るように穏やかな顔で



月明かりと私たちの煌めきに照らされた海

船に乗り 帰路につく青年が迷わぬよう

私はきらりと瞬き 帰りをそっと見届けた

青年は船を漕ぎながらそれに応えるかのよう

夜空を見上げた



この先も 青年は植え続けるのだろう

そして いつか森が戻ったとき

そこはひとりの青年の 愛が注がれた

世界で一つの島になるのだろう

読んで頂きありがとうございました。

自然をテーマに書きました

拙い文章ですが、伝わったら良いなと思います。

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