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見つめた星  作者: ルカニウム
35/40

第三十五夜★『湖畔の夜』

私は見ていることしか出来ない

今夜もずっと見届けよう

そこに生きるものたちを…





季節がうつろいかけた今夜

虫たちの僅かな鳴き声と水面を撫でる風の音

湖畔はただ静かな時間が流れていた


湖畔には青白い光をまとった月と

それをひそやかに引き立てる

私たち星の姿がゆらゆらと映っていた



おだやかな夜だ

私は小さくつぶやくと湖畔の浜から

煙が昇ってるのを見つけた



おや こんな時間に人がいるのか



よく見るとひげをたくわえた男性が

1人湖畔で過ごしている


私は月明かりの隙間からそれを覗いてみた



ぱち ぱち と薪の爆ぜる音が辺りを包み

暖色の火があたたかさまで伝わるようだ


男性は焚き火で暖まりながら

鍋を火にかけ 豆を挽きながら

湯が沸くのをじっと待っていた



しばらくすると 湯が沸き

手製なのか 使い込んだカップの上に

紙を敷き湯を注いだ



ゆっくりとしたたる琥珀の雫の音が

男性の心を躍らせているように見えた



どのくらいの時間待っていたのだろう

男性のカップに湯気が立ちこめ

琥珀で満たされていた



男性はゆっくりと口に運び

鼻に抜ける香りと味を堪能していた


私には分からないことではあるが

あれほど待って出来上がったそれは

きっと深い味わいがあるのだろう

男性の顔を見たら十分に伝わった



ふぅ とほっとしたため息をつくと

湖畔に映る私の姿を見て

それから夜空を見上げてほほえんだ



男性は この時間 この空気 この環境

そして淹れたての飲み物を

存分に味わっているのだろう



私は 男性がこれから先もこの時を

大切に 楽しみにしてもらえるように

月に負けないように うんと瞬いてみせた

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