第三十二夜★『みっつの星』
私は見ていることしか出来ない
今夜もずっと見届けよう
そこに生きるものたちを…
冬の澄んだ空に瞬きながら
地球をのんびりと眺めていると
きゃっきゃ うふふ と何やら楽しげな声が
夜空から聞こえた
どうやら オリオン座と呼ばれている星の
三つ子たちが 地球を眺めてはしゃいでいたのだ
『やぁこんばんは なにやら楽しそうに話しているようだが なにを見ていたのかな』
私は楽しそうにしている三つ子たちに話しかけた
「こんばんは わたしたちは地球の子どもたちを見ていたの ねぇ」
一番明るい長女の星は横に並ぶ弟星たちに瞬いた
「うん 地球のね ほらあそこの屋根に大きな窓のある家の子供たち ぼくたちと同じ三つ子なんだよ お姉ちゃん ぼく 弟 一緒なんだ」
真ん中の弟星は楽しそうに瞬いて私にその家の子どもたちを見てと うながした
右の次男星は 「うんうん」と瞬くと
子どもたちを眺めた
『あの家のお姉ちゃんはね わたしと同じで 面倒見がいいの』
家のほうを覗くと子どもながらに 弟たちの面倒をしっかり見ている姉の姿があった
母親が夕食の準備をせっせとしてる間
やんちゃに走り回る弟たちを
優しく見守っていた
一番下の弟がおもちゃにつまずき
どてんと転ぶと 大声で泣き出した
「あぁ 転んじゃったね まるできみみたいにおっちょこちょいだ」
と真ん中の弟星は次男星に瞬くと 次男星は
「そんなことないよ」
と小さく瞬かせた
家では母親が駆け寄ろうとしたが
姉が駆け寄り
「だいじょうぶ だいじょうぶ」
と擦りむいた膝を優しく撫でてあげていた
母親はその姿を見て 優しく微笑むと
嬉しそうに また少し誇らしいような顔をしながら
夕食の準備を続けた
弟が泣き止むと
「ここにおもちゃを置いておくのは危ないからお片付けしよう」
と弟たちの手を引いて片付けを始めた
せっせと片付けをする姿を見て 長女の星は
「弟たちってすぐに散らかすし 怪我をするからいつも心配なのよね あのお姉ちゃんの気持ちがすごくわかるわ」
と うなずくように瞬いた
そのころ 家では父親も帰宅して
夕食が始まっていた
暖かなオレンジ色の光のもと 家族が楽しそうに食事をしている姿を見て
私たちはしばし 見惚れていた
夕食も終わり 就寝の時間になると
三つ子たちは 寝室に横一列に並んで
屋根の窓から見える夜空を見ていた
姉が冬の夜空に輝く 三つ子の星を指差して
私たちみたいだね
とくすくすと笑うと弟たちも一緒に笑った
その姿を見た三つ子星たちは
お互いに顔を合わせて
子どもたちと同じようにくすくすと笑った
『これからもあなたたちを見守っていくね』
と長女の星がいうと
弟星たちと一緒に 子どもたちに向けて
きらきらと瞬いた
私はそんな姿を微笑ましく見守ると
生命も星も同じものなのだな
と 遠い星空につぶやいた
お読みくださいまして
ありがとうございます
冬の星座に勝手に物語が浮かんでしまうのは太古から人間の営みの一部だったのかも知れませんね。