第三十一夜★『孤独な星』
私は見ていることしか出来ない
今夜もずっと見届けよう
そこに生きるものたちを…
目覚めると 鉛色の雲が地球を覆い
太陽のぬくもりが届かぬ 冷たい雨が降る
大地はこれから訪れる夏に向けて雨を貯め
植物たちは 大地に溶けた水へと根を伸ばす
鳥たちは 植物たちが実をつけるのを
今か今かと木々に隠れて
じっと羽を休め待ち望んでいる
動物たちもまた 木々や岩影に隠れ
これから育つ草や成長する獣たちを待つ
海は雨がもたらす栄養で プランクトンが増え
回遊魚たちが群れをなして 水面に大きな影をつくる
風は 大地に雨を均等に届けるため
強弱をつけながら 地球を駆け回った
私は これから始まる季節を考えながら
夜の闇の中 地球のあちらこちらで
行われている 自然の営みを 楽しんでいた
人はどうだろうか
夜の闇には似つかわしくない電飾に集まり
あくせくと何かをしているようだ
夜というものを忘れ 何かをしている
これが今の人の営みなのだ
不思議なものだ 色々と快適になったのに
夜が深まるまで 人は何かをしている
私の姿も こう明るくては人には
見えていないだろう
少し寂しく思った私は うんと瞬いてみた
きらっ きらっと
私は願っていたのかも知れない
『届け 届け』と
雨の上がった雲の切れ間から
一人の青年と目が合った気がした
青年は ふっと笑ったように見えた
私はもう一度 力強く瞬いてみた
そして青年にそっと語りかけた
人よ 忘れてはいけないよ
空は多くの光で満ちあふれている
星たちが 見守っているよ
だから たまには夜空を見上げておくれと
読んでいただき ありがとうございます。
星が見てもらえないのも少し寂しいですね。




