第三夜★ 『星と猫と夜明け』
私は見ていることしか出来ない
今夜もずっと見届けよう
そこに生きるものたちを…
町は静まり返り 虫の音が止まるころ
この日は夜になっても暖かく
多くの家が窓を開けて 夜風を浴びていた
とある家から 一つの影が屋根へと登った
とても軽やかで 夜の闇に美しく光る
エメラルドの瞳をした動物だった
猫と人が呼ぶその動物はとても可愛がられ
子供たちからも触れられ 大人たちは笑顔で
食べ物を分け与えていた
私は 自由に身体を動かし しなやかな容姿である
その動物をしばらく見ていた
不思議なことがあるものだ
猫は伸びをしたあと 私を見つめ
ふと語りかけてきたのだ
「さっきからずっと見ているようだが
僕になにか用があるのかい」
私は聞いてみた
どうしてこんな夜更けに屋根へと登ってきたのかと
手を舐めながら猫は答えた
「僕らは暑いのが苦手なんだ今夜はずっと
暑いからね もっとも こんな毛皮を着ているから
この季節は僕らはあまり好きではないんだ
しかし 人は僕らの毛を撫でて 柔らかいと褒め
温かいと言いながら とても幸せそうに抱き寄せて
くれるよ」
ふむ 私にはわからないことだが
毛皮を含め 猫とは人にとって
癒しを与える愛らしい動物なのだろうと 私は思った
猫はエメラルドの瞳を向け 続けて言った
「それに 人はみんな 僕らを大切にしてくれるんだ
僕らが鳴けば言葉が分かるかのように
食事を与えてくれたり ドアを開けてくれる
退屈な日は 子供たちが一緒に遊んでもくれる
僕らは自由に気ままに素敵な毎日を過ごしてるよ」
大きなあくびをしている猫に
これからも人と暮らしていくのか と尋ねた
身体を丸め 瞳を閉じた猫はこう答えた
「そうだろうね 人は僕たちを見たら笑顔になって
近寄ってくる 悪意のあるやつは ほとんどいないし
いじめられたりもしないよ
人の子供と遊ぶのは 疲れちゃうけど あんなにも
嬉しそうな顔を見るのも悪くない
それに町の人は新鮮な魚も食べさせてくれるしね
僕らの声は分からないだろうけど
いつも ありがとうと言っているよ」
今にも眠りそうな猫に私は言った
きっと 君たちの言葉は分からなくても
人は感じ取っているのだろう
だから君たちを愛してるのだよ
猫は嬉しそうに笑い そのまま眠りに就いた
夜が白んだころ 私もそろそろ眠る時間となった
まったく 不思議な時間を 無条件に愛される
猫と一緒に過ごしたものだと
白む空に微笑むようにきらりと瞬いた
夜な夜な、猫が屋根の上でなにをしているのか思っていると、実はこんなことを星と話してるんじゃないかなって思えたりします。