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見つめた星  作者: ルカニウム
23/40

第二十三夜★ 『星と海と人と』

私は見ていることしか出来ない

今夜もずっと見届けよう

そこに生きるものたちを…



ゆらゆらと月明かりが写り さざ波の音だけが

辺りを包んだ海

静かな時間を私は見つめていた


しばらくこの静寂を楽しんでいると

ランタンを片手に持つ男が岩場までやってきた


男は いそいそと準備を始め

静かな海に釣り糸を垂らした


ほう あの者はこの寒い夜に釣りをしにきたのか


私はいつか 船で沖合に出て

釣りをする者たちを見たことがあったが

陸に近いところで夜な夜な釣りをする者を

初めて見た


釣り糸に付いた光る目印を男と一緒に

しばらくの間眺めていると 光る目印が

海中に沈んだ


おお

私は期待をしながら 魚があがる瞬間を

心待ちにした

男はしなる竿を引いたり糸を巻いたりして

まだ姿を表さない魚と少しの間 格闘た


すると 竿が急にしなりをやめ 男がのけぞった

どうやら魚に逃げられたようだ


ほほう

この勝負は魚の勝ちか

魚と人の闘いは魚に軍配があがった



男は逃した魚を思い 悔しそうな表情をしながら

新たな餌を針に付け 再び 海へ釣り糸を垂らした


しばらく沈黙の時間の中

釣り糸に付いた光る目印が 波にたゆたい

時間だけが 海に溶けた


おお

再び海中に目印が沈んだ


男は今度は逃がすまいと

慎重に魚の動きを探るように竿を引いたり立てて

魚が弱るまでじっくりと闘っている


ぐぐぐ としなる竿を見る限り

魚もまだまだ元気と言えよう

私は攻防を楽しんでいた


どのぐらい時間が経ったのだろうか

いよいよ竿を引く力が弱まった

男はゆっくりと糸を巻き 魚を手繰り寄せた


月明かりを鱗に写し キラキラと光り

大きめの魚が岩場を跳ねた


今回は男に軍配があがった

男は満足そうに魚を眺め 口にかかった針を

外し 氷の入った箱へと詰めた


魚と人の闘いは 夜が白み始めた頃合いで

幕引きとなった


男は釣れた魚の入った箱を大切に抱え

海とそこに住む魚に一礼をして 帰路に就いた


男は釣れた魚を 上手に調理して

家族に振る舞うのだろう


私はすっかりこの時間を 楽しんでしまった

人と知恵と魚の勝負 そして自然への感謝を

見つめさせてもらい 満足した



白む夜空にわずかながらの輝きを と

きらりと瞬いてみせた

夜釣りを題材にした物語です

少しでも雰囲気を感じていただけたらと思います。

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