第二十二夜★ 『闇に咲く花』
私は見ていることしか出来ない
今夜もずっと見届けよう
そこに生きるものたちを…
太陽が眠りに就く時間が早まり
私たちの活動が長くなったこの季節
街の山間で男たちが 何やら忙しそうに
準備をしていた
私は数日間 その準備を見つめ
なにが行われるのか心待ちにしながら
夜を過ごした
いよいよ準備が整った夜
街は橙の灯を纏い 人びとはそれに照らされて
皆明るい顔をしていた
しばらくして 橙の灯がパッと消え
ひゅるるるるる という音が山に響き
低音と共に夜空に鮮やかな花が咲いた
どん…どん…どん…
次々と夜空に光と共に咲く花々
人びとは歓声をあげながらそれを眺め
花の美しさに酔いしれていた
さまざまな形 色
夜空は私が霞むほどの明るさと
深い闇の対比で美しさを強調している
心地良い低音が山々に響きわたり
すっかりこの芸術を見入っていると
光と闇の共演は終わりを迎えようとしていた
少しの静寂の中
どん…と 大きな音と共に
一際大きな花が夜空に咲いた
なんと
これは見事だ
私に人のような手があったのなら
大きく拍手を送っていただろう
素直にそう感じさせてくれるほど
圧倒的な花が咲いたのだ
人びとも その花を見上げ
この日一番の歓声をあげた
人の作り上げるものに
これほど心躍るようなものがあるとは
私はこの季節をまた待ち遠しくなった
この美しい花を 寂しく暗い夜空に
毎年咲かせて欲しいものだ
静寂が訪れた 夜空に
私のわずかばかりの瞬きをそっと送った
秋から冬の夜空に咲く花のお話でした。
今年はいろいろあり、咲くことが出来なかった花たちを少しでも思い出していただけたらと思います。




