第二十一夜★ 『銀河の瞬きに願いを』
私は見ていることしか出来ない
今夜もずっと見届けよう
そこに生きるものたちを…
今夜は雨雲が 特別な夜だから と言いながら
小さな島国の空から 遠く飛び去っていった
その島国には 夜空を見上げる 多くの人たちが見えた
そうか 今年もあの銀河を巡る物語に
想いを馳せる日がきたのか
時が進むのか早いものだ と感じながら
笹の枝に結ばれた 願いを込めた紙が
柔らかな夜風になびく姿を眺めた
この夜 老婆に連れられた少年は
大きな鳥居のある神社で 笹の枝に
願いを込めた紙を結びつけている
背伸びをしながら一生懸命 結んでいる姿を
老婆と共に見守った
結び終えた紙を見上げながら
少年は手を合わせ 強く願いを込めていた
少しだけ 神妙な面持ちの少年は
老婆に手を引かれ 家へと帰っていった
少年は老婆と父親と三人で暮らしていた
母親は病で 遠い病院で長い間 治療をしている
優しい少年は幼いながらに家事を手伝い
いつも優しい笑顔で家族をあたためていた
夜が深まったころ
少年は窓から 寂しそうな顔で
夜空を眺めていた
“今日は夜空に銀河の川が流れる日
離れ離れになった二人が一年に一夜だけ 出会える日
会えた二人は喜びで みなの願いを叶える日”
そんな物語のある島国の夜
少年はとても寂しそうであった
幼い子供が大好きな母親に会えず
心配させまいと元気を振りまいていても
やはり寂しいのだろう
少年は静かに涙を流した
そんな少年を見守るように見つめていると
少年は泣き疲れてしまったのか
夢に落ちるように 眠りに就いた
しばらくして 父親が家事を済ませ
部屋にやってきた
眠ってしまった少年に 布をかけてやり
部屋の灯りを落とした
父親は月明かりに照らされた部屋の机に
少年が書いた願いの紙が
たくさん散らばっているのに気がついた
どれも同じ願いが大きく書かれ
少年の想いの強さが伝わった
そして その中で一番綺麗に書かれた紙を
神社に結びつけたのだろう
父親は手に取った願いの紙を読み 涙をこぼした
同じ気持ちなのだろう 唇を震わせて空を仰いだ
しばらくの沈黙のあと 父親は願いの紙を
窓枠に結びつけ 銀河に届くようにと願いを込めた
遠い病院で 少年の母親も
夜空を眺めて 想いを馳せている
愛すべき家族を想い 静かにずっと
濡れた瞳から寂しさを含んだ涙が頬を流れた
あぁ どうかこの親子の願いが
銀河の川に届いてもらいたいものだ
私は願いを込めて 少年の願いの紙に瞬いた
窓にかけられた願いの紙が 夜風にそっと撫でられ
願いは銀河に溶け込んだ
“お母さんの病気が治りますように
お父さん おばあちゃんとみんなで笑えますように”
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
本日は七夕。
場所によっては、あいにくの天気ですが、願いはきっと銀河の川に届いてくれるだろうと思います。