第十九夜★ 『小さな星の誕生』
私は見ていることしか出来ない
今夜もずっと見届けよう
そこに生きるものたちを…
この時期は地球のあちらこちらに雲の群れが生まれ
ねずみ色に覆われた大地がいくつもあった
退屈な日々を過ごしていたある夜
雲が過ぎ去った海沿いの町に
一人の若い娘が窓辺から夜空を
眺めているのを見つけた
物思いに更けているのだろうか
夜風が娘の長い髪をなびかせ
頬に当たる髪が暖色に染められている
娘はそれを気にすることもなく
ずっと夜空を眺めていた
娘が呼ばれていることに気づき
後ろを振り返った
部屋の奥から青年がやってきて
何やら穏やかに話をしている
二人は微笑み合い あたたかな光の中
とても幸せそうであった
青年が娘のお腹に触れ 愛おしそうに
お腹に耳を当てた
娘もそれを嬉しそうに見つめ
私は二人の間に 新たな命が 芽吹いたことを知った
彼らは遠い 町から二人でやってきて
こちらに移り住んだ
初めは誰も見知る人も居なかったが
町の人たちはあたたかく迎えた
青年は 町の市場で働き 娘を養いながら
丘に向かう坂道に小さな家を建てた
それからいく日か過ぎた夜
丘の上にある 古びた教会に二人は居た
新たな命の誕生が
まもなく始まろうとしているのだ
苦しむ娘にうろたえる青年は 娘の手を握り
精一杯の励ましを送った
娘はそれに応えるように必死に耐えながら
青年の手を握り返した
娘が出産を始めて 数時間は経ったのだろうか
元気な鳴き声が教会に響き渡り
年配のシスターと助産婦が笑顔を浮かべ
産まれたての赤子を見せた
二人は安堵した途端に涙を流し
新たな命に感謝した
娘が横たわるベッドには綺麗な布に包まれた
小さな赤子が 産まれた喜びを表すかのように精一杯の鳴き声を出している
青年はそれを見つめながら 娘の手を握り
産んでくれたことに感謝した
青年はシスターに抱き方を教わり
赤子を恐るおそる抱えて 教会の窓から
夜空を見上げた
その瞳は新たな命の重みを感じながら
守ろうと固い決意を秘めた輝きをしていた
私は 産まれた命を祝福するように
力強く瞬いた
最後までお読みくださいまして
ありがとうございます。
命の誕生は感動と神秘を感じるものだなと思いがあります。
命に限りはあるので、少しでも輝いていたいものですね。