第十八夜★ 『今を見る星 これからを見る者』
私は見ていることしか出来ない
今夜もずっと見届けよう
そこに生きるものたちを…
私の目からして 星に暮らす人々が
不安にかられ 日々の営みが様がわりしているのが
この短い期間に見てとれた
体に入り込み 身を蝕み
負の粒子が星を染めつつあったのだ
目に見えないそれは 人から人へと移り
人を介して 増えていく
星に住む生き物としては良くあることだが
人にはない生存方法が 人に恐怖を与えていた
その恐怖で人が街から消え
賑わいは静寂に変わり
夜でさえ明るさを感じていた
電飾も人々の不安で 明度を落としていた
いつの日だったか…
そう思い出そうとしていたとき
街の高台で 1人たたずむ青年を見つけた
青年は不安な面持ちで 街を見下ろしていた
明るかった街が幾夜も経たず 明度を落とし
暮らしが変わってしまったのだから
不安になるだろう
青年は 朝から夜まで 懸命に働き
夢を叶えるため 身体を動かしていた者だと
同じ青年を見ていた星が瞬いた
それが 働くことが出来きなくなり
夢に向かって歩んでいた足を 急に掴まれて
身動きが取れなくなったのだ
費やした時が失われる悔しさ
それに抗えないと想っている自虐感
青年の表情から悲痛さが感じられた
私は見つめることしか出来なかった
それから何度目の夜を迎えただろう
青年は毎夜 高台を訪れては
街を見下ろしていた
変わらずの街 闇がより深まった夜
青年は街の明かりを じっと見ていた
私も 同調するように街を見た
すると どうだろう
今まで闇に染まっていた街に 光の粒が
灯りはじめていた
ぽつぽつと蛍火のように淡く でも力強く
あぁ これは 新たな時代に移りゆくとき
見てきたものだ
私は かつても同じように
人々に訪れた負の粒子を
思い出した
懸命に立ち向かったが 抗えず
人は疲弊して 多くの命が失われた
しかし 追い込まれても抗うものが旗を振り
光りだし それに立ち向かっていった
そして 今日まで至っていたのだ
人が新たな時代を築こうと
一人が輝きだすと その光が点となり
街中に やがて地球の全てが輝く
一人ひとりは小さな光だが
眩しくも思えるほど 地球は光を放つ
人は今を越え 新しい今が始まるのだ
青年もそれを見ているだろうか
一人ひとりの輝く光を
これからを生きていくものの光を
青年は夜空を見上げ
大きく深呼吸をした
どうやら もがけば掴まれた足の枷を
ふり払えそうな表情だ
瞬こう 私は 人々を照らすことは出来ないが
人々が見上げたくなるように 鮮やかに
夜は私たち星が見守っているよ
星々は地球に住むものたちへ向かって
やさしく瞬いた
お読みくださいまして
ありがとうございます^ ^
短編に投稿した
『星への手紙〜 今、それから 〜』
もこの話に通ずる話になっています。