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見つめた星  作者: ルカニウム
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第十六夜★ 『不思議な夜』

私は見ていることしか出来ない

今夜もずっと見届けよう

そこに生きるものたちを…




町が雪の白さに包まれて 景色を明るく染め

装飾されたもみの木や電飾の灯りを

より一層 美しくしている


手を繋ぎ 微笑みながら

薄い雲から ゆっくりとゆっくりと

音もなく 雪の精が降りていた



今夜は クリスマスと呼ばれた 神の生誕祭


数日前から町は神を迎えるために

きれいに装飾され 人びとは嬉しそうに

それを準備をしていた


家の中にも もみの木に見立てた木に

可愛らしい装飾や電飾を付け

暖炉の色と調和して あたたかな空間となっていた



とある家の窓に いつぞやの黒猫が

丸まりながら 私の方を見ていた



『今夜も町を眺めているのかい』


と不思議な猫は私に語りかけてきた


これは私のある意味の使命であるのだよ


と私は答えた


黒猫は少しあくびをしながら

笑ったようにも見えた


『ならば 今夜はさぞ美しく見えるだろう

今夜は特別な日だからね おかげで

美味しい晩ご飯にもありつけたよ』


私はまったくその通りだと答えた


雪や町 そしてそこに暮らす人びとの営み

今夜はすべてが溶け合って

美しい景色となっていた


『人にとって 今夜はとても幸せな一日なんだよ

大切な人と笑い合い 神の生誕を祝う

ぼくらには判らないけど 昔からこの日は

こんなに 美しいんだろうね』


相変わらず 丸くなっている黒猫は

手を舐めながら語った



私は きみも変わらず 家族と同じように

大切にしてもらっているようだ

と黒猫に語りかけた


『そうだね 家族のように大切にしてもらってるよ

この日はいつもより 美味しい食事と

“おくりもの”をくれるんだ

今年は小さいけど あたたかな敷物さ

ぼくが床で寝ても冷えないようにってね

人びとはこの日はみんな“おくりもの”を

渡し合うのさ 小さな子どもは

手を叩いて喜び 大人はそれを見るのが

最高の“おくりもの”のようだよ』



『さぁ もうすぐ夜が深まるころだ

ぼくはそろそろ眠ることにするよ』


先ほどよりも 大きなあくびをして

黒猫は すぅと眠ってしまった

嬉しさを寝顔に残したまま



しばらく 町を眺めていると


シャン シャン シャン


シャン シャン シャン


どこからか不思議な音が聞こえてきた

ウキウキするような 鈴の音が



彼は今年もやってきたのだな と 私は彼を見つけた



目が合った彼は 私にウインクをして

鹿を従えたソリを走らせた


私は軽快に過ぎ去る彼を見送るように

やわらかく瞬いてみせた




雪の精が降り立つ町

この時期でしか見れない景色を

私はただ 見つめていた

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


夜に窓際で猫が夜空を見ていたら、星とこんな会話を交わしているかも知れませんね。

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