表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見つめた星  作者: ルカニウム
13/40

第十三夜★ 『私の星』

私は見ていることしか出来ない

今夜もずっと見届けよう

そこに生きるものたちを…




「私は見つめていた あの星をずっと」



少女はいつも星を眺めていた

お父さんと毎日 星が見えるこの丘の家から


星を観察することが仕事だったお父さん

望遠鏡を覗き込むお父さん

まるで子どものように 星について

お話をしてくれるお父さんが大好きだった


「見てごらん あの北の空でキラキラした星が

北極星だよ あの星は地球が動いても

ほとんど居場所が変わらないんだ

だから みんなの目印になってるんだよ

ぼくは あの星が大好きでね あの星のそばに

いつかやわらかな光を放つ星を見つけたいんだ

オレンジのようなあたたかい色をした星を」

そんなことを娘の私を抱きかかえながら

穏やかな顔で語りかけていた



望遠鏡で覗いた星は どれも形が違い

明るかったり ちょっと暗かったりしていた


「私はこの星が好き 北極星よりちょっと暗いけど

私が見たらキラキラしてくれるから」


少女は楽しそうに望遠鏡を眺め

宝物を探すように夜空を駆け回っていた


「はっはっは その星が気に入ったのかい

じゃあ これからは君のお星さまだね

星は毎日表情を変えるものだよ

これから観察を始めてごらん」


こうして 私は “私の星”を観察する生活が

始まった 今もずっと


毎日 “私の星”を眺め 暗かったり 明るかったり

赤かったり 青かったり 毎日 彩りを変える

星を観察していた まるで“私の星”と会話をするように




私が星を観察する仕事を志して数年経ったころ

星が大好きだった お父さんが亡くなった


星を愛し 星と私たち家族のために生きたお父さん


お父さんの最後の約束を私は今でもこころで抱えてる



「悲しんではいけないよ ぼくは星へ還るだけだよ

ぼくはキミの大好きな星の近くにいるからね」


「星を見つづけることは私はやめたりしないよ

お父さんを この夜空から見つけてあげるから

だから 待っててね」


お父さんは 涙を流しながらうなずき

そっと眠るように 息を引き取った



私は悲しかったけど お父さんはこの夜空に

還ったんだ そう思い 私は夜空を見続けた



お父さんが亡くなってちょうど十年目の今日


私は“私の星”を眺め いつものように語りかけた


「あなたを見つめるのも もう何年になるのかしら

あなたを見ていると 悲しいことも 辛いことも

やわらぐ気がする あの日 お父さんが亡くなった日も 瞬いてなぐさめてくれたものね」


「この空は広いのね お父さんもまだ見つけられていないわ でもね 約束したから お父さんを見つけるって」



“私の星”との会話をしながら

望遠鏡を調節し直したころ ちょうど“私の星”から

少し北へ 進んだところに 今まで見たことのない

星があった




「あ… おとう さん」


やわらかな 瞬き 包み込むような光

お父さんが好きだった星の色

間違いない お父さんだ


望遠鏡を覗くレンズがみるみる涙で滲んでいった

会いたくて 見つけたくて 悲しさを抑えて

夜空を駆け回っていたものが

全て溢れ出るかのように


その星はやっと見つけてくれたというように

きらりと瞬き夜空にやわらかく咲いた


“私の星”はそれを祝福するかのように

きらりと瞬いた



これから先 彼女はあの星を見届けるだろう

私はそれを見つめていこう

今まで見つめてくれたあの子を

最後まで読んでくださってありがとうございます。


今回は星を見つめていた一人の少女の物語です


今までこのような書き方をしたことなかったので、

いつも以上に拙い文章になってますが

星を巡る物語はこのような形があってもいいのではと思っております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 「私」のここに至るまでの気持ちを考えると、 言葉にはならない思いが胸にこみ上げます。 なのに何故か読み終えたときに力がわいてくるような、強い生命力のようなものを感じました。 ルカニウムさん…
2019/12/03 20:30 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ