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見つめた星  作者: ルカニウム
10/40

第十夜★ 『いつか見た星の夢』

私は見ていることしか出来ない

今夜もずっと見届けよう

そこに生きるものたちを…




気付けば私は地上に居た 辺りは荒廃した砂漠

いつもなら見下ろしていた景色

しかし 私は見上げていた 満点の星空を



ここはどこなのだろうか

しかもこれは なんだろう

私には あるはずもない 身体というもの

それもゴツゴツした金属で出来たもの

ところどころ酸化が進み 今にも壊れそうだ


これはロボットと言われるものなのだろうか

いつか星を旅するものから土産話で

聞いたことがあったものを思い出した


甲高い軋んだ音を立てながら

私は自分の手を見てみた 人に似せた5本の指

その一つひとつを 動かしてみた

不思議なものだ 意識をしただけで

鈍く指が動き出す

私は砂漠の砂を手のひらに乗せた

冷たい そう感じた


星を旅するものからロボットと言うものは

人に作られ 心がなく 怒ることもなく

笑うこともなく ただ決められた行動をし

人の生活を楽にするものだと聞いていた


しかし 私はどうだろう

今度は脚を踏ん張り立ち上がろうとした

バランスを崩し 砂へ倒れ込んでしまった


冷たい


今度は全身でそれを感じた

初めて感じた冷たさの心地良さ


そして初めて感じた 空気

初めて感じた 感触

初めて感じた 動くということ


心とは豊かなものなのだな

ロボットは心が無いものだと聞いていたが

私は感じると言うことを楽しんだ



私は気づけば歩いていた 夜の砂漠を

軋む音が風に乗り その音が歌になって

遠くへと運ばれた 星たちはそれを見守っていた



どこまで歩いてきたのだろう

辺りは延々と砂の大地

ふと立ち止まった 枯れた木に似た

人影のようなもの見つけた


私はそれへ向かうよう身体を動かした



一体のロボット

ところどころ壊れている

私の姿はわからないが このロボットは

きっと私に似ているのだろう


私はロボットを起こし 起動する場所を探した


しばらくすると ロボットは起動し

目の部分を光らせた


私は嬉しく思い ロボットの手を握ると

ロボットの思いが流れてきた



とても悲しい顔をしていたように思えた



「どうして私を起こしたのだ

私は もう静かに このままいたかったのだ」


ロボットの目が鈍く光り 思いが伝わる


「私は疲れたのだ 人に作られ 人の変わりに働き

人の変わりに人を殺める 私は本当に疲れたのだ」


私は 伝わるこの思いが怖くなり 手を離そうとしたが

次々とロボットから思いが伝わる


「君は見ただろう この砂漠をこれは人が

もたらしたものだ 私利私欲に溺れ 他の民族を襲い

奪い合った 自然を犠牲にして

そして 彼らは滅びたのだ 私たちロボットを残して」



ここは 人が滅びたあとの地球だったのかと

私は驚き 夜空を仰いだ


「私たちは人が滅びたことが 嬉しかったはずだった

私たちは自由になれたのだ 憧れ続けた美しい景色を

やっと見られると 喜びたかった

しかし 私たちには悲しみしか残らなかったのだ

枯れた大地 汚染された海 木々は無く 鳥のさえずりも

この地球には無い 美しかったものは 消えてしまった

人と共に滅びてしまったのだ

ずっと私たちはこの景色を見続けなければならない

私たちには絶望しかなかった」



「だから私たちは自ら活動を停止したんだ」



私は言葉にならなかった

心を持つ重さと悲しみが伝わった



「これが私たちが選んだ最後だ」

この言葉を最後に ロボットの目の光が消えた



私はしばらく手を握ったまま動けなかった


心と言うものは 喜びや美しさを

感じるものだけでは無いのだ

こんなにも悲しい思いをもたらすもの


二度と感じられぬ 世界への悲しみ

ロボットたちは 耐えられなかったのだろう

憧れが 無くなり 取り残された箱庭に


私は ロボットに向かって倒れ込んだ

心の重さに 辛さに 悲しさに 心がうまく働かない



ああ 私も終わるのだ

このロボットたちのように





どのくらい眠っていたのだろう


目覚めると いつもの夜空の中

見下ろせば 町は闇が包み込み

生命の営みが橙色のあたたかな色彩を

淡く映し出していた

そこは 人々が笑い合い 優しさに包まれていた



私の見てきたものがこれから先に起こる

地球のことなのかはわからない

私はロボットたちの悲しみを 慈しむよう

あの悲しさが生まれないよう

きらりと瞬いてみせた

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

[見つめた星]も10話目になり、少し不思議な夢を見てみたいと思い、未来の世界の物語となりました。

ロボットに心があるとするなら、きっと美しいものが見たいだろうな。

そして、未来はこんな悲しいものじゃ無いと願うような思いです。


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