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男爵令嬢の辺境領主生活  作者: あらまき


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18話 エーデルワイス

 

「えっと、どちら様でしょうか?」

 すこぶる高貴な人オーラと服装から、プランは若干下手にそう尋ねることにした。

 白いお姫様みたいな高そうなドレスに、金色の綺麗な長い髪をしているのを見たらそう思っても仕方が無いだろう。

 その堅苦しい対応に、女性は少し拗ねた様な顔をした。

「もー。そんな他人行儀は止めて欲しいな。せっかく会えたんだし、もっとフレンドリーにいかない?」

 若干戸惑ったプランだが、自分が呼んだんだし、相手が望むならとプランは口調を変える。


「おっけー!私の名前はプラン。あなたのことを教えて?」

 満面の笑みを浮かべながらプランは自分の呼びかけに答えてくれた妖精に挨拶した。

 それに嬉しそうに女性は頷いた。

「私の名前はエーデルワイス。色々呼ばれているけど、呼ぶときはワイスって呼んでくれたら嬉しいかな」

 満面の笑みで、宙に浮きながらワイスはそう答えた。


 メーリアはその光景を呆然としたまま眺めていた。

 人の形の妖精は、実はそこまで珍しくない。百匹に一匹くらいだろうか。

 話の出来る妖精はとても珍しい。それでも、十万に一匹くらいだろう。

 だが、だが、人並の大きさの妖精は、過去に一度も聞いたことが無い。

 五十センチを超える妖精すら珍しいのに、ここまで大きいのは、正しく前代未聞だった。

 ただし一匹、いや一柱だけ特例の存在はいるが。


 突然、メーリアはワイスに向かって跪いた。

「貴方様は、もしや神の使いなのでしょうか?」

 六神の一柱。妖精神の御使いと思ったメーリアは恐れながらそう尋ねた。

「いや。別に何でも無いよ?ただの妖精」

 そんなメーリアの考えとは裏腹に、ケロっとした顔で、ワイスはそう言い放った。

「全く無関係だね。あ、お話を聞いたことはあるよ!」

 ワイスはメーリアに楽しそうにそう言って、更なる言葉の追撃をかけた。

 勘違いをしたことに気付いたメーリアは頬を染めてそっと立ち上がり、さっきまでの自分を無かったことにした。


「まあ、来てなんだけど、魔法使うなら私とプラン、実はあまり相性良くないのよね」

 若干寂しそうにワイスはそう言った。

「そうなの?」

 プランの声に、そっと頷いてワイスは答える。

「だから、あなたに相性良い子何匹か連れてきてあげよっか?」

 にこーっとした顔でワイスはそう言った。

 とても嬉しそうな顔で、あまりに嬉しそうだから、それが空元気だとプランにはすぐにわかった。

 そして当然、プランの中で答えは決まっていた。

「でも、私の呼びかけに応えてくれたのはあなたでしょ?だったらあなたで良いわ。いいえ。私の相手はワイスが良いわ」

 魔法が使える。相性が云々。

 そんなことプランには関係無かった。


 私の呼びかけに答えてくれた。

 だから、ワイスで無いと駄目なんだ。


 ワイスは「にゃー」と叫びながら、嬉しそうにプランに抱きついた。

 プランはそれを受け止める。ワイスはその見た目と違い、非常に軽かった。

 羽は見た目は蝶の羽だが、触ることが出来ず、破る心配も無い様だ。

 プランはそれに気付き、ワイスを強く抱きしめた。温かく、どこか心まで温まる様な気持ちになる。

「来てくれてありがとう」

「呼んでくれてありがとう」

 二人はそう言い合うと、軽く微笑みあった。


「さて、二人は契約するということでよろしいですか?」

 メーリアの質問に、プランとワイスは抱き合ったままこくりと頷いた。

「では、妖精は人を助け、人の為となり。人は、妖精に対価を払う。その契約を……『エンゲージ』」

 その言葉と共に、ワイスは白い光の粒子になり、宙に浮く妖精石の中に入っていった。

 そしてプランの妖精石は、中から強く白い光を放つ様になり、魔法陣が消滅し妖精石はプランの手の中にすっと納まった。


「これで契約が終了です。これ以降、何をするにしても妖精の行動は魔力を消費しますのでお気をつけ下さいね」

 メーリアの言葉に、プランは「はーい」と能天気に答えた。



「さて、領主様に何の魔法の適性があるのか調べようか」

 リカルドの言葉に、プランは若干驚いた。

 さっきまで静かだったから、その存在を完全に忘れていた。

「う、うん!それでどうやって調べるの?」

「あー。一個一個簡単な属性魔法試してみるのが一番かな」


 プランとリカルドは、メーリアに礼を行って、家を出て、そのまま村を出て広い草原に移動した。

「さて、試す前に何かしてみたいこととかあるか?」

 リカルドの質問に、プランは迷わず答えた。

「リカルドの妖精を見せてよ!」

 リカルドは頷き、胸の妖精石を手に持つ。

 その次の瞬間、妖精石から赤い妖精が現れた。

 小さな卵くらいの大きさの丸い光に、蝶の様な羽がついた可愛い見た目の妖精。

「へー。本来の妖精ってこんな形なんだ」

 プランが興味深そうに妖精を見ていると、赤い妖精はプランの方についーっと移動してプランの顔の回りをぐるぐると移動した。

 妖精の顔色や気持ちがわからなくても、その様子は、とても嬉しそうだとプランには感じられた。

「とまあ、こんな風に領主様はどの妖精からも好かれてるぞ。偶にいる野良の妖精も、こんな感じで領主様に良く纏わりついてた」

「ほほお。野良妖精とかもいるのか」

「ああ。といっても、何もせずにすぐ消えるけどな。遊びに来ているのだろう」

 妖精が知らないうちに遊びに来る。

 そんなファンシーな様子が今まで見えなかったなんて!

 プランは酷く後悔し、これからは見逃さない様決意した。


「あ、そういえば私も妖精って出せるの?」

 プランがそう言うと、露骨に手の中の妖精石がガタガタと震えた。

 出して欲しいということだろうか。

「普通妖精石って中の妖精動かせないんだけど……まあいいや。石を持って、出て良いって念じたら出るぞ。逆も可能だ。ただし、妖精が外に出ていると妖精石の魔力は減っていくぞ」

 リカルドの言葉に頷き、プランは石を持って念じた。

 次の瞬間、すーっと妖精石の中から、白い小さな光の妖精が出てきた。

「あれ?姿が違う?」

 プランは人型でない妖精を見てそう呟いた。

 ただ、赤い妖精と比べたら光の大きさが二倍位は大きいが。

「あのままで出ると魔力がいくらあっても足りないわ。だから省エネって奴ね!あと話す度に魔力使うから余裕が出来るまでは話さない様にするわね」

 ワイスは早口でそう言うと、プランの肩あたりでふわふわと浮いていた。


 プランはワイスに触れてみた。

 光の塊なのに、触ることが出来、衝撃を覚えるプラン。

 そのままプランは、ワイスをよしよしと撫でた。


 そんなプランを微笑ましく見ていたら、リカルドはある事に気付いた。

「そうだ。領主様の妖精なら領主様の適性の事知っているんじゃないか?」

 リカルドの一言に、プランもそのことに気付いた。

 ワイスは最初、プランと相性が悪いや、良さそうな子連れてくるとか言っていた。

 なら、ある程度の適性を知っていると考えて良いだろう。


「それで、ワイス。私の適性ってどうなの?」

 ふよふよと移動し、プランとリカルドの間でワイスは話し出した。

「ぶっちゃけ極端。普通に使う魔法は致命的ね。風と水が僅かにあるけど、身体強化とか戦闘用の魔法とかは無理無理かたつむり」

 おおう。ナチュラルに罵倒された。

「あちゃー。残念。何か凄いことが出来ると思ったのに」

 プランがしょんぼりしながらそう呟いた。

「いや、極端って言ったぞ。つまり、それ以外の魔法に適性があるということか?」

「ピンポーン。直接の行使は苦手な分、そのほかに長けているタイプね」

 リカルドの質問に、ワイスはそう答えた。


 若干の希望が見えたプランは、ワイスに尋ねた。

「私どんなことが出来るの?」

 ワイスはふよふよと考える様にして、呟いた。

「うーん。一番得意そうなのはゴーレム関係かしらね?」

 リカルドとプランは顔を合わせて頷いた。


「うん。良く知らない!」

 プランの叫びに、リカルドも大きく頷いた。

 一部例外を除き、この領内には知能が著しく低下した人間しかいなかった。

「先生がいるなら人間の先生の方が上手に教えられるわ。いないなら私でも良いけど……ぶっちゃけ魔力不足。そろそろ枯渇するし」

 最初の契約の時から入っていた妖精石の魔力は、ワイスの出現と会話でそろそろ無くなりそうだった。

「ワイスありがとね!またお話しよ!」

 プランは慌ててワイスを妖精石に戻る様念じた。

「うん。私お話好きだからまた話したいわ」

 そう言いながら、ワイスは石の中に入っていった。


「直接の魔法が使えないなら、もう俺の教えることは無くなったな。最後に、魔力の補給方法だが、勝手に浮かび上がると思うがわかるか?」

 リカルドの言葉に、プランは脳内に集中した。

「ああ。見えた見えた。一つ、夜寝る時は妖精石を抱いて寝て欲しい。二つ、ご飯を食べる時は少しわけて欲しい。三つ。お茶会をいつか一緒にしたい。だったわ」

 リカルドはその答えに感心した。

 妖精の願いは普通即物的だ。

 リカルドの場合は、スプーン一杯ほどの食べ物の用意だ。その際の食べ物の質によって魔力の補充量が変わり、甘い物だと一回で三日分くらい溜まる。

 だがワイスの願いはどれもプランと共にいることを願っている。

 それは即物的な妖精が食べ物よりも優先してプランを気に入っていることの証拠だ。


「どれも難しくないのは良かったな。じゃあ領主様、とりあえず館に戻りますか」

 リカルドの言葉に頷きながら、プランはリカルドに言った。

「とりあえず、その領主様って止めない?偉い人が来ている時ならともかく、普段呼びには堅苦しいよ?」

 リカルドは苦笑しながら呟いた。

「じゃあリフレストって呼ぶか?名前呼びはまだ認めてもらって無くてね」

 そう言われて、出会った時に名前を呼ぶのを拒絶したことを思い出した。

「あー。ごめん。そういやそうだったわ。うん。プランで良いわ」

「あいよ。りょーかいプランちゃん」

 リカルドはプランの方を優しい目で見ながらそう言った。


ありがとうございました。


一回の投稿で文字数ってどのくらいがベストなのでしょうかねぇ。


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