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5話「骨董品屋の主人」

今回は新キャラの登場です。

お楽しみください。


「被験者No.001、盗賊らしき集団に連れ去られましたがどうしますか?支部長」


巨大モニターがある一室で、一ノ瀬とその部下が達也の観察をしていた。モニターには達也と数人の男達が映っており、その映像を見る限り状況は最悪だということが誰から見てもはっきりとわかる。


「上のほうには問題はないと報告しなさい」

「しかし…」


部下は別に達也の心配をしていたわけではない。被験者が異世界で死亡したとなれば会社が世間から非難をあびるだけでなく、自分の身にも危険が及ぶ可能性があるからだ。


「殺すならとっくにそうしているわ。でなければ、わざわざでかい人間を運んだりしない、彼らには達也君を生かす特別な理由があるんだわ」


一ノ瀬はそう言うとカップに入ったコーヒーを一口飲む。ほのかな苦味のある香りが部屋に漂う。


「特別な理由といいますと?」

「達也君はこちら側でいう巨人…つまり、タイタスという種族と間違われているみたい。たぶん奴隷とか労働力として使われるんじゃないかしら」


それを聞いた部下はさらに深刻な気持ちになった。なぜそのような推測をして平然といられるのかが、不思議でならなかったのだ。


「それはまずいのでは?もし、被験者が死亡すればこの会社だけでなくあなたや私の身までもが…」

「あくまで私の仮定よ。それに本当に危なくなっ

たときの手段も用意してあるわ」


自分のメガネをくいっと直しながら一ノ瀬は表情を変えず真剣な目で言う。まさに前線で戦う兵士ような眼差しだった。


「左様ですか、なら心配はいりませんね。社長には私から報告させていただきます」

「ありがとう、助かるわ」


顔を合わせうなずき合う。二人はお互いを信じきっていた。この会社ではそういうものがなければやっていけないからだ。それにこのプロジェクトは、政府も関連しているため失敗は許されない。


「他の二人はどうしてるの?問題はない?」

「いえ…それがですね…あの二人の行方がわからないのです」

「もしかしてモニターに異常が?」

「はい。ですがステータスを見た限りでは心拍数や状態は良好ですので、生きていると思われます」


さすがに一ノ瀬にとっても想定外なことではあったがまだ希望は失われたわけではない。


「私から達也君に連絡をしてみるわ。あなたはここに残って観察を続けなさい」

「かしこまりました」


一ノ瀬は部屋から出ると西方向の廊下を早歩きで

進み始める。よほど焦っているのだろう。


「いやな予感がするわ。すぐに手をうたなければ

取り返しのつかないことに…」


一方その頃異世界ではーー


広い城壁の中で西洋風の建物が立ち並び、道ばたではたくさんの人々が行き交う。大通りにでれば店なども多く、楽しげな会話があちこちから聞こえる。そんな誰もが想像する理想郷のような街中で、一つの店にある檻の中で俺は座っていた。


「ってなんでやねん!!」


俺は思わず関西弁でツッコミをいれてしまった。なぜこんな罪人が入りそうな場所に自分がいるのだろうか。あまりにも納得がいかない。


「学校に登校しようとしたら無理やり別世界に飛ばされるわ、化物に襲われるわで挙げ句の果てには牢屋の中ってなんだよ!」


手や足や首に鎖がついているためすこぶる動きにくい。あと背中にも呪文のようなマークが刻まれている。これじゃあ本物の囚人のようだ。


「はやくここからでないと!」

「お、落ち着いて…く、ください」

「誰かいるのか?」


独り言をつぶやいていると店の奥からおどおどした少女が遠い距離間でこちらを見つめている。小柄な顔立ちに、弱気な蒼い瞳。猫耳がついている被っているフードからは艶やかな黒髪のロングヘアが見える。まるでギャルゲーの妹キャラのような、そんな姿をしていた。


「よかったー!この家の子だよね。ここからだしてくれない?もう息が詰まりそうでさ」

「ごめんなさい!そ…それはできません!」

「デ、デスヨネー」


猫耳フードの女の子は慌てて頭を下げ謝罪をする。別に怒ったわけではないんだけどなぁ。


「それはすごい残念だけどよかったら理由を言ってくれないかな」

「あ、あなたは…えっと… 私のしょ、所有物であってこの店の商品だからです」


どういうことだ?まだいまいち状況がわからない

ぞ、余計に混乱してきた。


「えっとつまりどゆこと?俺がこの店の商品?」

「あっ、はい。あ、あなたを奴隷として…その… 売るつもりです」


この世界にも奴隷売買が行われているのか…なるほど。って感心してる場合か‼︎


「ところで俺はなんで奴隷扱いを受けてるの?」

「そ、それはあなたがこの町近くで寝ているのを盗賊のおじさんが見つけたといっていたので拉致られたのではないかと…」


よし、今度それらしい人物見つけたら軽くぶっとばしとくか。


「俺はいつ売られるの?期間とかってある?」

「一ヶ月後の取り引き先で商品をお客さんに 見ても

らう感じです」

「じゃあそれまで一緒にいるんだから一応俺の名前教えておくよ。君の名前も教えてくれる?」


俺は好意的に接してるつもりだった。しかしその少女は黙って下をむいたまま申し訳なさそうな悲しい表情をしていた。


「あ、あなたは私がに…憎くないんですか?」

「それはどうして?」

「わ、私は違法だと知っていて奴隷売買をや、や っています。それにあ、あなただって何も罪はないのに奴隷として私に売られるんですよ!なのに…なんで…どうして、私に優しく話かけるんですか?」


彼女の両目にはあふれんばかりの涙がにじんでいて今にも泣きそうだ。まるで自分を罰してくれと言っているかのように…


「俺の運命が最悪だっただけで君に罪はない、それに君が悪いことをするような人間には見えないし何か深いわけがあるんだろう?」

「そ、それは…」


少女はうつむいたまま言葉をつまらせる。俺はそのまま続けて語った。


「俺が売られて君が救われるならそれでいい。誰かを幸せにしたいっていうのが俺の願いでもあるしね」


俺は思った。こんなにも幼い子が店で働くなんて普通では考えられない。よほど貧しい家柄なのだろう。それなら安っぽい俺の命で助かるならおつりがくるくらいだ。


「ふふっ…おかしな人ですね」


彼女は自分の服の袖で顔を拭くと俺のほうをみて

微笑んだ。


「申し遅れました。私はこの骨董品屋の店主のルファナ・アスファルスと言います」

「ルファナっていうのか。いい名前だな」


素直に褒められたのが嬉しかったようでルファナは顔を赤くしてフードを深くかぶる。


「俺は達也だ、一ヶ月の間よろしくな!」


こうして一ヶ月間の俺と小さき骨董品屋の主人との

生活が始まった。


「ひゃくいち…ひゃくにい…ひゃくさん!」


あれから生活が始まって7日目。俺は鎖につながれたままただ座っているのも暇なのでずっと筋トレをしていた。奴隷扱いな割にはルファナはずっと俺に料理を作ってくれたり世話をしてくれている。本当にありがたいことだ。


「こ、この体をはやく制御…できるように…しなくちゃな!」


腹筋、背筋、腕立て伏せ、スクワットなどを俺は思いつくかぎりのメニューをひたすらにやっていた。それをみてルファンはなぜか首をずっとかしげている。


「毎日同じ動きをして何をしているんですか?」

「え?!筋トレだよ。筋肉を鍛えるためのトレーニング」

「キントレ?何ですかそれは?」

「筋トレを知らないって…じゃあどうやって体を 鍛えるんだ?」


筋トレをしてないのか?それとも何か別な方法で

鍛えているのだろうか。


「人種は体を鍛えるなんてことめったにしませんよ。するとしても″タイタス″や″ドルゴン″の種族ぐらいですね」

「まずそのタイタスってのはなんだい?」

「私たちはあなたがたのような身長3m越えの人を

タイタスと呼び、異種族として認定してます」


あぁそうか。この子は俺をタイタスっていう種族と勘違いしているんだな。でもこの子に売られるって決意したし、俺が普通の人間だということは教えないほう

がいいな。


「もっと他のことも俺にいろいろ教えてくれないか?迷惑なら別にいいけど」

「め、迷惑とかそんなことないです!それに、私も達也さんとお話したいですから」


それからルファナは俺にいろいろ教えてくれた。

種族のことだけでなく、ここが人種の領区内でもっとも大きい大都市だということや200年前から人類は魔法しか使わなくなり体を鍛えることはなくなったとかなどなど。


「ところでルファナは魔法使えるのか?」

「はい。えっと…防御系の類いなら」

「じゃあ俺に放ってみてよ」


ここにきてからいまだに魔法らしい魔法をみたことがない。ちょうどいい機会だしわざとくらって威力を確かめてみようと思った。


「わかりました。まずは自分のまわりに魔障壁をはり相手を弾くものからいきますね。相手の魔法や呪文を跳ね返すだけなので人が触れるだけなら少し痺れるだけだと思います」

「じゃあ俺はその障壁を今から素手で破壊するから」


自身満々にそう言うと、ルファナは驚いた顔をして俺に問いかけた。


「これは初期位魔法ですがすごく危険ですよ。触れるだけならまだしも術師以外が障壁内に入るとさすがに危険です!」

「大丈夫!俺を信じてやってみて」

「…そこまでいうならいいんですけど、でも何かあったらすぐに止めますからね!」


俺はすぐに身構えて体勢を整え、ルファナは静かに呼吸を整えると呪文を詠唱しようとする。すると、オーラのようなものがルファナのまわりに浮きでてくる。

体内の魔力を放出し手のひらに集中させているみたいだ。


空間魔壁(ヴァンス・モーメント)!!」


ルファナのまわりに薄い青色の円が浮き出てきた

かと思うとゆっくりと広がっていき俺がいる鉄格子の前で止まったのを確認し、少しだけ触れてみる。


「なんか静電気みたいなのが感じるだけで大丈夫そうだな…よし!そのまま思いっきり俺に当ててくれ」

「無理だけはしないで下さいね!」


ルファナは手を前に出しさらに魔力を注ぎ込む。魔障壁が膨れ上がりさらに、範囲が大きく広がり鉄格子と俺の体を飲み込んでいく。しかも俺の体のまわりではバチバチと音をたて火花さえでている。


「だ、大丈夫ですか?!」

「あ~うん。なんか気持ちいいし大丈夫っぽい」

「へ?」


まるで電気マッサージでも受けてるんじゃないかくらいに気分がいい。俺のいままでの全身の疲労がとれていく。


「さてと、そろそろやるか…ハッ!!」


パリーン

手でグーの形を作り渾身の一撃を決めた。すると魔障壁はいとも簡単に割れ鉄格子までも吹き飛ばしてしまった。力の使い方はわかってきたけどまだ制御しきれてはないな。


「まぁ…ざっとこんなもんだな」

「す、すごいです!達也さん!一体どんな魔法を使ったんですか?魔力の放出も感じられなかったですけど、いったいどうやったんです?」


ルファナは目を輝かせながらピョンピョンと跳ねている。どうやらさっきの魔法を俺が魔法で跳ね返したと思っているらしい。まぁ普通、常人ありえねぇしなこんなこと。


「それより鉄格子壊しちゃって大丈夫?」

「問題ありませんよ。達也さんは優しいし、怖くないですから。それにわ、私を助けてくれるって言ってくれたじゃないですか…」

「あれ!?ああああああ!!」


ルファナは頭から湯気が立つほど顔を真っ赤にしながら必死に伝えようとしているが、俺の急な叫びでその言葉は無惨にもかき消されてしまった。しかしそうなってしまうのも無理はない。自分の体をみて俺は異変を感じたからだ。


「どうかしました!?」

「か、体が…」


なんと俺の体は小さくなっていて、こちらに来る前の高校生だった時くらいの身長に戻っていた。


5話「骨董品屋の主人」完












































5話目のできまえは自分としてはよかったと思いますが皆さんはどう感じましたか?

これからも「魔法にあふれた異世界で筋トレ中デス」をどんどん更新していきますのでよろしくお願いします!

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