4話「脳筋戦法!!」
「はぁ…どうすんだよこれ」
深いため息をつき、草むらに横たわる。さっきまでさんざん転がっていたから疲れたのだ。
「まぁ、後悔しても元に戻んねぇし村や
町でも探すか」
かといって仮にも村や町を見つけたとしてもこんな姿で行けば騒ぎになり憲兵でも呼ばれて袋たたきにされるのは間違いない。
「問題はこのバカでかい筋肉と身長をどうすっか
だよなぁ。せめて魔法さえ使えれば…ハァ…」
幻影魔法とかで姿を変えたりすることができれば
いいが魔力のスキルポイントはゼロ。基本的な魔法すら習得できない有り様なのだ。そんなつらい現実を突きつけられ再びため息をついてしまう。
「ガサガサ」
「あ?なんか音がしたような」
「ガサガサガサガサ!!」
「敵か?!」
突然の物音に驚きすぐさま俺は戦闘態勢に入る。人だという可能性もあるがゲームでは草むらからモンスターがでてくるのが常識なのだ。それに、さっきまで人の影すら見当たらなかったことを考えるとモンスターであるのが推測できた。
「チュートリアルもなしに実戦かよ。いいぜぇ、
くるならこいよ!!ザコモンスター!」
それに初戦はたいていスライムとかザコがでてくるに決まってるしな!さっさと片付けるか。
「グルルルル…」
「……ってあれ?」
モンスターだという推測は当たった。だがスライムとかそんな規模ではない。ワニのような体格に鋼のように硬そうな銀色の鱗、うしろの尾にはあきらかになんでも切り裂いてしまうような鋭利なとがった矛の形状をしたものがついている。
「えっと…ど、どうも」
あまりにも予想外なものが出てきて俺はそのばで固まったまま動けない。てか動いたらやられるだろこれ。誰だよ初戦はザコしか出てこないとか言ったの。
「グゴォガァァァァァァァ!!」
「ぎいゃぁぁぁぁぁぁ!!」
いやな沈黙が流れた後にしびれをきらしたのであろうワニ型モンスターは独特な咆哮をし、ものすごいスピードでこちらとの距離をつめてくる。おもわずびっくりして俺はなさけない悲鳴をあげてしまった。
「クソ、このままじゃやられる!」
どうする、考えろ俺!力ではこっちのほうが
上のはず、ならばやることは一つだ。
ビュンー
「うおっと!?」
モンスターの尾が伸び俺の顔をかすめて近くの岩に当たりそれがまっぷたつに割れた。奇跡的にはずれたが次はないだろう。
「あっぶねぇ!?あれ伸びるのかよ反則だろ!」
だが俺にはさっきだめもとで思いついた作戦がある。それを今みせてやる。
「名付けて″脳筋戦法″殴って殴ってただひたすら
に殴る!」
え?こんなの作戦でもなんでもないって?ほらよくあるじゃんゾンビゲーとかで銃の弾がなくなったら殴って節約したりするの。あれと同様に魔力がない俺にはこの拳しかないんだからこれも作戦のうちなのだよ。
「くらえワニ公!俺の怒りの鉄拳を!」
俺は本気のパンチをくりだし見事にヒットのはずだったが、腕がやたら重くうまく動かすことができずにそのままモンスターの前に着弾した。
「なんであたんねぇんだ?!…うぐっ」
地面がめりこみ、衝撃で爆風がうまれる。ミサイルをぶつけたくらいの威力はあるのではないだろうか。
「なんて力だ!前がみえない!」
俺は自分で生み出した砂嵐に耐えやっと落ち着いた頃には、なぜかモンスターは消えていた。
「消えた?どこに行きやがった!?」
あの脚のはやいワニ型モンスターならさっきの砂嵐にまぎれて背後にまわりこまれていとてもおかしくない。
「うしろか!…いや、いないな。」
しかしどこを見渡してもやつの姿がないどころか気配すら感じられなかった。
「グガァァァァァァ!?」
「ん?上か!」
やつは空たかく飛んでいた。いや飛んでいたというより爆風に巻き込まれて飛ばされたのほうが正しいか。
バッシャーン
「あちゃー」
そのまま頭上から落下して激しい音をたてながら湖の底に沈んでいった。さらばだワニ公、もう二度と俺の目の前に現れんなよ。
「とりあえず初勝利ってことでいいのかこれ?」
すげぇ中途半端な勝ち方だったけどまぁいいか。
「今度こそ町探しすっかな…うぐ!」
バキッ!メキメキメキ
歩きだそうとした瞬間、俺の体はものすごい音をたててうなりはじめる。それに痛みが内側からこみあげてくるこの感じは…
「筋肉痛か!こんなときに…痛てぇ!」
よく考えれば納得がいく、体の筋肉量を急激に増幅させて制御すら十分にできないまま戦闘したのだ。こうなってしまうに決まってる。
「ここはいったん休憩だな」
俺は仕方がないと思い、寝て回復することにした。
ーーーー30分後ーーーー
「目撃があったのはここか?」
「へぇ!頭。確かにここの近くを通った商 人の証言によると不自然な砂嵐があったとか」
黒いマントを身にまとった盗賊の集団は自分達の住んでいる村近くの草原に異変を感じすぐに駆けつけてきたのだ。
「この地方で砂嵐がでるなんてのはありえねぇ。
だとすると超位魔法を使った奴がこの近く
にいたということだ」
その言葉を聞きまわりにいた部下たちがざわつく。
「で、でも超位魔法を使えるのは人種領の国内
でも5人しかいないんですぜ?」
「バカ野郎!そんな大物こんなところにいるはず
がないだろうが。考えられるとすれば他の
異種族がここで暴れたにちがいねぇ」
盗賊のリーダーがそう言って辺りを見渡すと
横たわっている一人の人物を見つける。
「いたぞ!あの人間離れしたでかい体は 間違いない、″タイタス″だ!」
「タ、タイタスだって!?なんでそんな凶暴な
異種族がここにいんだよ」
「わからねぇ、だが奴が超位魔法を使ったにちがいねぇ」
タイタスという言葉を聞き、震えて怖がる者
や神に祈りを捧げる者まで出てきている。
それほど恐れられる種族なのだろう。
「落ち着けおまえらぁ!今やつは熟睡中だ。
このまま運んで奴隷商人にでも売っちまえば
こっちのもんだ。行くぞ!」
盗賊のリーダーの掛け声とともに一斉に集団が動きだす。希少価値なあの怪物を運ぶために
4話「脳筋戦法!!」完
ついに4話目ができました!
あと2話目を少し修正したので
そちらのほうもよろしくお願いします。