2話「強制的に」
「鈴木 達也さんですね」
「いえ、人違いです」
中央の車の開いた窓から顔をだした黒服の 女性の質問に即答で拒否した俺は最高に自分が賢いと思った。だって黒服着てる人とかどこぞの少年探偵のアニメにでてくる悪い組織のイメージしかないし。あまり関わらない方がいいだろうな。
「いや、確かにこいつが鈴木 達也です」
「えっ!?なおと…何バラしてんの!」
「確かにこの人かどうかわからない ウジ虫野郎兼私の下僕のたつやですが」
「さゆりもちくるついでにナチュラルに
ディスらないでくれるかなぁ」
この二人はどうかしてるぜ。俺がこの黒服たちになにされるかわからないという危機的状況だってのに。
「いいから乗ってください。説明は車内の
ほうでしますから。あとそこの友達二人も
ご一緒にどうぞ」
俺たちは言われるがままに車に乗った。車に乗り込むまぎわに黒服の人にあなたも大変ねとか言われ同情された。えっ?なにこれ死にたい。
「さて本題にはいる前に自己紹介といきま
しょうか。私はあなた方のサポート担当
をまかされたテクノロ社の一ノ瀬 絢香といいます」
そう言って一ノ瀬という人は俺たちひとりひとりに丁寧に名刺を渡してくれた。テクノロ社というのは宇宙関連を主とした最新技術を研究する大手企業で今や全世界からも注目されている。
「あなたがたのような大企業さんが僕たち一般 高校生になんの用ですか?」
「そうです今日も学校で授業があるんですから
はやく済ませてくれませんか」
「分かりました。達也さん、小百合さん 、尚人さん…あなたがたには異世界に行ってもらいます」
異世界だって?あのアニメやラノベでよくあるこの世界とは別の世界のことか?
「我々テクノロ社は新たに人類進歩のための
異世界移住の企画をたてました。これを
成功させるにはどうしてもあなたがたの
協力が必要なんです」
話がでかすぎて俺は呆気にとられていたが自分の中で答えはもうでている
「お断りしま……」
「いいですね!行きましょう!異世界」
「なんか楽しそうだしね。もちろんたつやも
行くよね」
断ろうとした瞬間さゆりとなおとが身を乗り出し自分とは正反対のことをいった。
「落ち着けってさゆり仮に行くとしても、
まだ体験したことのない未知の世界に行くんだぞ。
危険すぎるだろ」
なんでもいいから理由をつけて逃げようと
俺は必死だったが無駄なあがきだったようだ。
「はぁ?危険だから行きたいのよ。いいから
あんたもついて来なさいよ下僕!たつやに
拒否権はないわ」
さゆりは俺に指をさしながらとても優等生とは思えない言葉を使ってくる。忘れてたよこいつ頭がまともじゃないの。
「残念なこと俺にも一人の人間としての拒否権くらい持ってるから」
「いえ、あなたに拒否権はないんですよ」
「いや!ねぇのかよ。泣くぞ本気で!」
マジで何なのこの二人グルかよ見事な連携で俺をはめようとしてるぞ。いやまだ味方はいる。そう棚部 尚人という人間がなぁ。
「なおとさんこの理不尽な二人にガツンと
言ってやってくださいよ」
俺は必死で尚人に助けを求めたがまたまた無駄なあがきだったようだ。
「やっぱり異世界は本当にあったんだ
なんで今まで自分は魔法が使えなかったんだろうって不思議だったんだよなぁ」
なおとの顔はまるで子供が新しい玩具を手にした時のような会心の笑みをうかべていた。
「お前まさか本気でアニメの中の世界が
あるって信じてたのか?」
あきれた表情のまま俺はなおとに質問した。
「逆になんでたつやは異世界がないって
思ってたんだ?」
ダメダコイツハヤクナントカシナイト
「実際に存在してたんだから良かったじゃない一ノ瀬さん、はやく連れてってください」
さゆりが勝手に話を進めようとしてる。マシで何とかしないと次元を越えた別世界にとばされて俺の平穏な日々が終わる。
「まっ、待ってください!うちの母や父や
学校には許可をとったんですか?そうでなけ
ればこれは立派な拉致ですよ」
慌ててとっさに言ったことだがなかなかいいぞ。つかもうこれしか方法がない。
「ええ…すでに許可は得ています。ついで
に祐也さんへの伝言もね」
クソ!こんなことも想定済みなのかチーターかよ。でもなんで許可したのかがわからんのだが。
「じゃあ母はなんと?」
「たつ君のレンタル料貰えるみたいだから
行ってきてくれる?」
「ち、父は…」
「行け」
「……先生~!!」
「IKE!」
三連続心に深い傷を負った俺は肩から思い切り崩れ落ちた。つかお母さんレンタル料って何?俺車じゃないんすけど。
「もう一度いいますがあなたに拒否権はあり
ません。これは国も認めている新事業なんです
から。それに異世界にワープする装置の
負荷に耐えられる適合者があなたたちしか
いないんです」
「分かりましたよ。行けばいいんでしょ
行けば…もうどうでもいいですよ」
いじけている俺をよそに一ノ瀬さんは内容を話はじめる。
「簡単ではありますが異世界に行ってもらいそこで約1年間過ごしていただくだけで
結構です。私たちはあなたたちに埋め込んだ
モニターでモニタリングをおこない1年間の
データを得ます」
「モニターって…それはやりすぎでは?」
なおとが話にわってはいる。さすがに自分の体をいじられたいとは思わなかったのだろう。
「やりすぎなどではありませんよ。我々は
そちらの世界には行けないのですからあなた
たちが私たちの目となるほかありません。
それに、実際にその世界でこちら側の人間が
住める環境なのかを調査する必要があるのです。」
確かにこの人の言ってることはすじが通っていて納得がいく。最初は悪い人かと思ったけど案外ちゃんとしてるじゃん。
「分かりました。ぜひ協力させてください」
そういって決意をかためたときにはすでに車はテクノロ社の地下駐車場内で止まっていた。
「着いたようですね…ではこちらです」
俺たちは車から降り一ノ瀬さんのあとについて行くとそこには巨大な地下研究施設があった。おそらくここにワープ装置があるのだろう。
「あともう一つプランについての説明をします。まずはLv.1冒険者からではありますがこちらからの支援が受けられ安定した生活を送れるAプランかLv.99の最上位クラススタートではありますがこちらからの支援を受けられない自給自足のBプランのどちらかを選んでいたたきます」
「自分にレベルがつくんですか?」
「はい。ゲーム感覚で楽しんでもらうために
自分の能力や衛生的管理を確認するための
機械もモニターと一緒に埋め込ませていただきます」
なるほどつまりレベルは自分自身の強さであって
体の異常なども自分でいつでも管理できるのか。
なんか人間ドックみたいだ。
「じゃあ俺はAでお願いします」
「私もAでお願いするわ」
あまいな二人ともこの話は一見Aプランのほうがいいようき思えるが実はBプランのほうが圧倒的にいいに決まってる。だって考えてみろ、Lv,99くらいの強さならネトゲ界ではあちこちに引っ張りだこだぞ異世界もおなじように自然と仕事が回ってくんだろ。
「俺はBプランにします」
「えぇ…なに楽しようとしてんのよクズニート」
「ち、チゲぇよ!ただBプランのデータもあったほう がいいと思っただけだ!あとニートじゃねぇし。」
何この子怖いんだけど俺の思ってたことなんでわかんだよ。そんな鋭い目つきでこっちみないでマジで怖いから。
「別にどちらでも構いませんよ。データさえとれればなんでもいいですから」
「ほらな!やっぱりいいんじゃないか」
よっしゃこれで楽な異世界生活まっしぐらだぜ
「死ななければいいですけどね」
「何か言いましたか?」
今とんでもないキーワードが聞こえたようなきがするが気のせいか。
「ではこちらのカプセルに入ってください
ワープを開始します。ワープまで10秒前…
9…8…7…6…5…4…3…2…1…0!!」
俺、なおと、さゆりはそれぞれカプセルに入ると目を静かに閉じカウントダウン終了と同時に俺たちの体は光に包まれていった。
2話「強制的に」完
1話目がやたら短いのに気がついたので
2話目は少し内容を長くしてみました。
これからはこれくらいの文章量でかいて
いきたいと思いますます。