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正念場

下手なことは言えない。だがしかし、自分達が発言するまでは恐らく司達は話を進めようとしないだろう。

開は、それが分かっていたので、どうしたものかと思案した。

すると、黙って険しい顔をしていた光一が、口を開いた。

「…ふーん、つまり、修の黒だったオレと壮介なんかに、喋って欲しいってわけだな?共有としては。」

開は、少し驚いてそちらへ視線を向けた。光一は、自分に時間をくれようとしている…同じ人狼として、恐らく開も疑われているのだと直感的に感じたのだろう。開が、完全潜伏を決め込んでいたので、その心づもりがなかったことを、知っているのだ。

司は、首を振った。

「いや、あくまでオレ達が信じてるのは慎一郎なんだよ。だから、修の黒の壮介と光一より、全く色が分からない英悟と開に話して欲しいってのが、正直な気持ちだ。もちろん、園美だって椎奈だって、例外じゃない。みんなから話を聞きたいってことさ。」

開は、苦々しい気持ちだった。英悟と開が疑われるということは、誰からの情報なのか分かろうというもの。しかも、司はさっきよりも確実に自信ありげに慎一郎を真占い師だと言っているように見える。慎一郎を真占い師と思わせていて、尚且つ英悟と開が人狼だと知っている人物…さくら、しか情報の出所は考えられなかった。

英悟は、開と同じ結論に達したようで、横で見る見る表情を硬くした。開は、すっかり無表情を作ることに慣れて顔には出なかったが、それでも意識して困ったような表情を作って、苦笑して肩をすくめて見せた。

「ま、占われてないんですからね。疑われるのも仕方ないでしょう。何を話せばいいですか?疑っている先ですか?」

郁人は、じっと真剣な顔で開を見ていたが、開はそれを意識していないように振る舞った。司が、こちらもまた困ったように答えた。

「いや、まあそうだな。どこを疑ってる?今現在。」

開は、首を傾げた。あまりにも用意していたような答えはいけない。僅かな間に、必死に頭を働かせて、答えた。

「そうですね…オレはまだ、慎一郎が100%真占い師だと思っていないので、黒出しされている二人のことは気になります。修さんが狂人だったとしても、一人ぐらい誤爆しててもおかしくないですからね。どっちかが黒の可能性もあると思っています。」と、他を見回した。「グレーの中では…英悟さんは、最初から結構疑われる位置でしたし、篤夫さんと盛大にやり合っていて、片方が吊られたんですからもう片方も吊ってバランスを取っておいてもいいんじゃないかって思いますし、郁人さんに至っては完全にグレーで、それでもうまく総務の知識を使って共有を丸め込んで、自分だけでも生き残ろうとしている人外に見えなくもないです。もし、郁人さんが人外だったら、お手上げじゃないですか?共有は、何を根拠にしているのか知らないけど、えらく郁人さんを信じているようですから。」

司は、共有をしっかり批判している開に腹を立てたようで、ムッとした口調になった。

「占い師だって死んで、誰を信じていいのかなんか自分で考えるしかないだろう。それで、君の言い方だと黒を出されていた二人と、英悟は黒の可能性があるんじゃないかってことだな?吊ってもいいのか。」

開は、すぐに頷いた。

「いいですよ。このうちの何人かが黒だとみんなが思うんだったらですけど。」

司は、眉を寄せて畳みかけるように言った。

「英悟は、君と同じようなグレーなのに吊ってもいいのか?」

開はまたすぐ、頷いた。

「ええ。狂人の黒より目立つグレーの方がよっぽど黒いに近いと思いますからね。正直、こうなったらどう考えてもグレーの中に人外が居るとしか思えないでしょう。最悪狂人の黒のうちの一人か。それと」と、さくらを静かに睨んだ。「共有の言うことを聞かずに霊能者を死なせた狩人か。」

司が、戸惑うような顔をした。開は、自分でも驚くほどすんなりと考えが口をついて出て来たので、ホッとしていた。そうだ、こうなったら味方を突き放すしか方法はない。自分が疑われても、相手が残るのだから。逆も真なり。そして、裏切った狩人はとっとと切り離すのだ。そもそも、殺してしまっておけばこんな面倒なことにもならなかったのに。

司は、そのまま郁人へと視線を送った。郁人は、ハアと大きなため息をつくと、大きく首を振った。

「駄目だ。開は、嘘を言っていない。本当に、そう思っているように見える。何の動揺も感じないし、落ち着いている…それを聞いていた、英悟は動揺しているが、さっきまでは落ち着いていた。そりゃ自分を吊る話なんかされたら、動揺もするだろうし、この動揺で英悟が徹底的に怪しいとは判断できない。だから、オレには今の開と英悟が怪しいとは思えないから、白黒は分からない。」

開は、それを聞いて郁人を睨んだ。

「オレ達を試したんですか。」

郁人は、力なく頷いた。

「すまん。オレが初日から見ていて、確かに最初の辺りじゃあ怪しいかなと思ってたんだよ。壮介も、光一もだった。でも、恐らく初日はびっくりして動揺してたからいつもと違った反応だっただけなんだな。お前達が同陣営なんて考えられない。司のメモを見てるが、結構お互いに疑いまくってるしな。こうなると、疑う方向も絞られて来るんだがな…。」

司も、同じようにため息をついて下を向いてメモを見ている。開は、チラとさくらを見た。さくらは、まだ黙って目を伏せている。

今の話を聞くところでは、どうやら郁人一人の言葉を信じて、司は自分達を疑ってみたらしい。自分達二人を選んだのは、郁人の目線からのことで最初思ったようにさくらがばらしたというのではないようだ。

英悟も、横で肩の力を抜いたのがわかる。確かに、人狼が村人に裏切られるよりも、恋人に裏切られた方がショックは大きいだろうから、英悟のダメージと動揺の方が大きいだろう。

「じゃあどうしたもんでしょうね。」開は、苦笑した。「オレは自分が人狼でないことを知ってるけど、他のグレーのことは分からない。郁人さん、あなたのことすら分からない。もしかして、生き残ろうとしている人外が、共有に取り入ってるんじゃないかって思ってさえいたぐらいですから。オレ達はみんな、共有以外はお互いを信じられないんですよ…当然なんですがね。」

郁人は、その言葉に黙った。上から目線ですっかり村人気取りで話していたが、所詮郁人だって他の皆から見たらグレーで人外かもしれない立場なのだ。

司が、それを庇うように言った。

「いや、郁人はきっと村人だと思う。村目線で考えてくれてるし、今日もずっと誰が怪しいって一緒に話していたんだ。」

開はそれに反論しようと口を開いたが、声を発する前に園美が言った。

「そんなの、ただの勘でしょう?さっきも開くんが話してた通り、もし自分だけでも生き残って陣営勝利に導こうって思ってる、人外だったらどうするんです?人外は、たった一人でも生き残っていたら勝つんですよ。誰か一人が共有者に取り入ってしまえば、いいように場を動かせるじゃないですか。あとは、適度に敵対したらいいんですから。確信も無いのに誰かを妄信するのは駄目だと思う。」

開は、表情は変えずに心の中でほくそ笑んだ。そうそう、同じグレーの園美がそう言ってくれたら、良い具合に疑いが分散してこっちが吊られる確率が下がる…。

思った通り、司はイラッとした顔をして園美を見た。

「妄信ってそこまで信じてるわけじゃない。お前達だって進を妄信してたんじゃないのか。結果的に間違ってなかっただけで、あいつには黒が出てたんだし危ない行為だろうが。」

園美は、それでも険しい顔で首を振った。

「こんなに追い詰められた状態では危ない行為だと思うわ。共有者は共有者同士だけ信じるしかないと思うの。それとも、慎一郎さんを信じてるんなら慎一郎さんの白の、壮介さんを信じるとか。」

司は、ますます眉を寄せて園美を見た。

「お前の論理だと占い師を特定するのだって危ないんじゃないのか。矛盾してるぞ。」

園美は、少しむきになったように言った。

「それでも占い師なんだから大体の真贋はついてるんじゃない?グレーと一緒にするのは間違いです。」

「まあ待て。」そこに、光一が割り込んだ。「そんなことで争ってても仕方がないだろう。議論が進まなくて人外の思うつぼだ。それより、今日の吊り先を考えないと。オレ達は、絶対に村人だと分かっている共有者二人の意見を尊重するつもりでいる。だから、慎重に行動してくれってことだ。責めてるわけじゃない。司、方針は?」

司は、会話を遮られてムッとしたような顔をしていたが、自分達を擁護するような言い方だったので、表情を柔らかくした。そして、言った。

「すまん。確かにもっと慎重にするべきだったかもしれないが、郁人の考えもある程度参考になったと思ったんだ。だが、開の話を聞いていて、やっぱりただの勘でしかないのかと思った。」と、息をついてから、自分を落ち着けて、先を続けた。「グレーだ。オレ達は、グレーから選びたいと思っている。なぜならオレ達は慎一郎を信じていて、慎一郎の黒はもう死んで居ない。修の黒は、最後にゲームが終わらなかった時考えようと思う。それまでは、慎一郎のグレーから、疑わしい奴を選んで吊る。」

慎一郎のグレーは、今生きているのは壮介以外の、全て。

共有者と狩人以外の皆は、顔を見合わせた。

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