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疑惑の矛先

2(司)→23(椎奈)

3(貴章)→9(光一)

4(壮介)→15(篤夫)

6(征司)→9(光一)

7(恭一)→9(光一)

9(光一)→15(篤夫)

10(角治)→23(椎奈)

11(開)→15(篤夫)

13(英悟)→15(篤夫)

14(郁人)→9(光一)

15(篤夫)→13(英悟)

22(園美)→23(椎奈)

23(椎奈)→15(篤夫)

24(さくら)→15(篤夫)


最早お決まりの朝が始まった。

飛んで出て来た司を先頭に、点呼を取った時居なかった征司の部屋へと入り、そこで征司の血まみれの姿を発見して、それをシーツで包んで、階下の応接間へと降りて行く。

征司のそんな姿を見ても、皆の顔には恐怖の表情も、驚きの表情も浮かばない。

もう、そんな感情さえなくなってしまったかのように、皆無表情のままだった。

開や光一、壮介、英悟の方が、おかしなことにまだ、人間らしかった。自分達が襲撃していて全てを知っている、ということもあると思うが、驚くほどに精神状態は落ち着いていた。

なので、皆に気取られないようにと、全員が全員、村人たちに合わせて無表情を貫いていた。

そんな中、司と角治は険しい顔をして、いつものように並んでソファへと座った。皆が、それぞれ思い思いの場所に座る。人狼たちは、なるべく偏らないようにといつも考えて椅子を選んでいた。開は、今日も一人、他の人狼とは離れた場所に、村人たちに囲まれる形で座っていた。

司が、いつもの手帳を開いて、顔を上げた。

「…今朝、征司さんが襲撃された。これを見て、オレと部長で考えを変えなきゃならないのかと、言っていたんだ。」

恭一が、開の隣りで言った。

「考え方って?篤夫さんが、黒だったから知られないようにって、人狼が霊能者を襲撃したってことか?」

司は、恭一を見て首を振った。

「いいや。狩人が生きてるってことをだ。」と、一度息を吐いて、吸った。「昨日、オレと部長は話し合って、オレ達共有者ではなく、霊能者である征司さんを守ってくれるように、狩人に言った。それなのに、征司さんは襲撃を受けた。狩人に守られなかったんだ。」

恭一と貴章が、顔を見合わせている。開は、眉を寄せた…そうか、さくらはこちらについている。昨日はきっと、人狼の英悟を守っているはずだ。人狼の襲撃の、邪魔にならないようにすると約束しているからだ。

そうなると、さくらが疑われることになるのか。

開は、今更ながらそう思った。すると、英悟が言った。

「狩人が偽者だって?いったい誰が狩人なのか知らんが、だが狩人にだって意思があるだろう。何か考えがあって守る場所を変えたのかもしれないじゃないか。狩人に聞いてみてから疑ったらどうだ?」

しかし、司はまた首を振った。

「これは、最初に話してあることなんだ。確かに本物だと分かるように、絶対にこちらが言った人を守ってくれと言った。まして、昨日はオレ達の言う通りのところを守っていれば、征司さんは生きていられたし、篤夫さんの色を知らせることが出来たんだ。これで、霊能者も占い師も死んでしまった。今残っているのは、共有者のオレ達と、狩人だけってことになる。なのにその狩人は、偽物かもしれない。人狼陣営かもしれないんだ。」

開は、気付かれないようにちらりとさくらを見た。さくらは、青い顔をして小刻みに震えている。開は、まるわかりだろう、と思いながらも、視線をそっと司に戻した。司は、角治を見た。角治が、頷いて引き継いで言った。

「オレ達は、追い詰められているんだ。生きている間、霊能者は一つも黒を出さなかった。つまり、人狼はまだ生きている。最初に死んでいない限りな。」と、さくらをじっと見た。「新井さくらさん、彼女が狩人だと名乗りを上げている。今聞きたい。君は、昨日何を考えて誰を守ったんだ。」

それを聞いた英悟が、驚いたような顔をした。皆の目には、自分の彼女が役職持ちだったことに驚いたように見えたかもしれないが、開にはそれが、狩人をばらした共有に対しての驚きなのだと分かっていた。

「そ、そんな!」英悟は、慌てて言った。「さくらが狩人だとして、皆の前で言ってしまったら!人狼に襲撃されちまう!」

角治は、険しい顔のまま、英悟を見た。

「本物ならな。」それを聞いて、英悟はぐっと黙った。角治は続けた。「彼女の判断で、救えたはずの命がひとつ犠牲になったんだ。彼女はその命を懸けて、自分が本物なんだとオレ達に知らせる義務がある。仮に明日生き残ったとしたら、彼女は間違いなく人狼陣営だろう。人狼だったら、死ぬに死ねないからな、自分では。襲撃されない。さあ、理由を話してくれ。」

さくらは、ブルブルと震えていた。英悟は、そんなさくらの肩を抱いて、言った。

「本物なんだろう?だったら、怯えることはない。言えばいい。言ってみろ。」

さくらは、すがるような視線を英悟に向けたが、英悟は黙ってさくらを見返した。もちろん、皆の面前で何も言えない。人狼である英悟が、指示をすることなど出来なかった。

それを察したさくらは、意を決して顔を上げ、角治を見上げた。

「…昨日は、霊能者を守ることは人狼からも見えていることだろうと思ったので、霊能者は襲撃されないと思いました。狙うなら、共有者のどちらかだと思いました。なので、昨日は2番の司さんを守るように打ち込みました。そうしたら…人狼は、征司さんを…。」

よくできました。

開は、そう思って聞いていた。確かに、その通りなのだ。本当なら、狩人はたった一人残された霊能者を守るだろう。そうなると、人数を減らしたい人狼は、共有者を襲撃する。裏をかいて、共有者を守ったと主張するのが、この場合何より自然なのだ。

人狼が、そのまた裏をかいただけで。

司と角治は、顔を見合わせている。確かにその通りだと思ったのだろう。角治が、ためらいがちに言った。

「…どうして、指示を出す時にそうしたいと言ってくれなかった?そうしたら、オレ達だって君を疑わずに済んだだろう。」

さくらは、下を向いた。

「いつも、ただ指示されるだけなので…私の意見は、聞いてもらえる状態ではなかったですし。でも、入力する時間になって、そう思い立ったんです。征司さんが死んでしまって、私もだから、とてもショックなんです。」

英悟が、恋人を守る彼氏よろしく、思い切りさくらを庇って言った。

「さくらが若いからって、職場の上司の延長線上で指示していたんじゃないですか?それだったら、さくらだって自分が役職持ちなのに自分のしたいように守れないのは、歯がゆかったと思います。それでなくても、襲撃されて守れたはずの命は死んでるじゃないですか。那恵だって、進だってあなた達の指示がなかったから守ってなかったから死んだ。今回だけのことで、さくらが責められるのはおかしい。」

それを聞いて、角治は言葉を詰まらせた。進や那恵のことを出されては、言い返せなかったのだ。

司が、ハアとため息をついた。

「…まあ、しかしもう人狼には知られてしまったわけだから。さくらの事は、今日は投票対象にはしない。明日も生き残っていたら、考えよう。それより、もっと聞きたいことがあったんだ。昨日の投票だ。」と、手帳へと視線を落とした。「綺麗に分かれてるんだが、どうして篤夫にこんなに入ったんだ?光一と壮介は分かる、篤夫に攻撃されていたし、感情的に入れてもおかしくはないだろうと思えたからだ。しかし、他は?慎一郎を信じているなら入れることはないはずの場所だぞ。慎一郎の白なんだからな。壮介、光一、開、英悟、椎奈、さくらが入れてるな。篤夫さんは、最後人狼票だと叫んでいたが、まさかこの中に人狼が全部入ってるなんてことはないだろうな。」

英悟が、手を挙げた。

「オレは、ずっとなぜか篤夫から敵視されてた。どうしてあんなにオレに執着するのか分からなかったし、最初から攻撃して来るから、狐か人狼がオレをつるし上げたがってるのかと思ったんだ。だから、入れた。今となっては、オレは慎一郎が真占い師ではなかったのかと思えてるんだがな。」

開が、それに同意するように頷いて見せた。

「ああ、それはオレも。篤夫さんが、白というのが合点が行かない。絶対に、何か持ってそうだった。今の話では狩人ではないし、彼は狼か狐だったと思う。だから、慎一郎は真占い師じゃない…つまり、修さんが真占い師で、ということは、オレが疑ってるのは光一と壮介ってことになるか。」

英悟が、頷いた。

「そうだな。そうなるな。だが、そうしたら残ってる他の人狼は誰と誰だ?」

開は、わざとうーんと唸って見せた。そして、ざっと皆を見回して、言った。

「…こうなると、白さの勝負になりますしね。どうしても、貴章と恭一は疑えないので、残った椎奈と、さくら…もしくは、全く色が見えない、郁人さんか。」

英悟は、険しい顔をして、郁人を見た。

「郁人…?そういえば、お前は誰に入れてた?」

郁人は、ふふんと不敵に笑った。

「光一と壮介を疑ってるのに、オレを疑うのはおかしいぞ、英悟。なぜなら、オレは昨日光一に入れてる。つまり、仲間じゃないってことだ。光一と壮介と同じところへ入れてる、お前と開の方が怪しいと思うがな。」

英悟は、郁人を睨んで黙った。司が、割り込んだ。

「ああ、確かにその考えならそうなる。ただ、昨日は舞花が来なかったことで、急いで次を決めなきゃならないゴタゴタだったから、皆判断がつかなかったと思うんだ。オレだって、あの時は誰に入れるべきなのか分からなくて、思わずグレーの中から目についた椎奈に入れてしまったしな。開と英悟の言うことは正しいが、しかし本当に篤夫が人外だったと思うのか?」

英悟と開は、顔を見合わせた。英悟の目を見てから、開が口を開いた。

「…そう改めて言われると、確かにそうだったかどうかはわかりませんね。慎一郎があまりにも真らしかったし、篤夫の占い結果以外では慎一郎を確かに信じていられたので。」

郁人が、司を睨んだ。

「あのな、あまりにも思考がフラフラし過ぎているぞ、司。何を信じるか、お前達共有者の間できちんと話し合ってからオレ達に知らせてくれないか。オレ達だって、何も分からない中誰が敵か味方かも知らない中不安なんだ。確かに村人の共有者に頼るしかないんだよ。もう霊能者も居ないから誰を吊ってもそれが正解だと言ってくれるものが居ないんだぞ。目隠しされた状態で、村人が本当に勝利に迎えるのか。オレは…このままじゃヤバイと思う。早くて、あと三日だ。いや、二日かもしれない。」

…その通りだ。

開は、郁人を横目で見ながら心の中でそう答えていた。今、人狼は四人。村人が八人。今日と明日村人を吊ることが出来たら、襲撃して同数に持って行くことが出来る…つまり、狼の勝利だ。あくまで、狐を全て処理出来ていたら、だが。

司は、そんな開の思考には気づかず、頭を抱えた。

「分かってる!だが、オレ達だって分からないものは分からないんだよ!」と、手元の手帳を頭を抱えたまま見た。「人狼だった優花は死んだ。狂人も死んでいるはず。占い師の全滅でそれが分かる。慎一郎が真だとオレは思っているから、慎一郎の黒だった舞花も死んだ。だから人狼は二人処理出来ていて、現在あと三人残っていると思っている。狐は、分からない。だが、人狼の協力があれば、恐らく処理できるだろう。もう居てもあと一人じゃないかと思う。狐のことを考えたら、グレーを先に吊って行くよりない。黒が出ている光一と壮介だってそりゃ気になるが、しかし先に、グレーを吊るべきだと思っているんだ。それが、オレと部長が考えて来たことだ。だが、投票先から他の可能性もあるかもしれないと思って、皆に意見を聞いてるんだ。」

郁人は、軽く息をついて、そして、頷いた。

「…そうだな。狐対策をしておかないと、あとでどうなるか分からない。一応、完全グレーってことでいいのか?」

司は、顔を上げて郁人を見て、頷いた。

「ああ。だが、結構な人数が居るんだ。」

郁人は、また頷いた。

「そうだな。貴章、開、英悟、オレ、園美、椎奈。慎一郎だけとするなら光一も恭一もこれに加わるから、結構な人数だ。今のままだと票がばらけて誰が吊られるか分からないな。」

司は、郁人が淡々と話を進めるので、段々と冷静になって顔を上げた。

「それでも、意見を出してるのを聞いていたりしてるから、ある程度は票がかたまるはずだと思うんだ。初日から見ていたら、誰が白いとか分かって来てるんじゃないか?郁人、お前ならいろいろ分かって来てると思うんだが。」

郁人は、大真面目に頷いた。

「そうだな。だが、普段から接してない女子のことは、本当に分からないんだよ。さくらさんの役職持ちだって分からなかった。そんなわけで、オレから見て完全グレーなのは園美、椎奈なんだ。」

司は、期待を込めた目をした。

「男は分かるのか?進のことは、当てたじゃないか。進は襲撃された…村人だったんだ。じゃあ、今の残ってる中で、人狼は?」

郁人は、回りを見回した。この時ばかりは、開も緊張した顔をした…郁人の視線は、本当に何もかも見通しそうだったからだ。

しかし、郁人は、肩を落として、首を振った。

「…初日、変化が分かった気がしたんだ。だが、今は分からない。気のせいだったように思う。人狼って役職を引いてたら、少なからず普段と違う緊張感があるんだと思うんだが、そういうのが誰からも感じられないんだ…初日は、確かに感じられたように思ったのに。何がどうなったのかオレにも分からないんだが。」

開は、ホッとした。初日…まだ、ヒトだった時。もしかして、ヒトだった時に人狼カードを引いて緊張していたのを、気取られていたのかもしれない。だが、本当に人狼化した時、ヒトより優れた能力で、表にそれが出なくなった。だから、郁人にも分からなくなったのだ。

英悟や、少し気が乱れた開のことは、二日目も分かったかもしれない。それでも、今は完全に人狼になじんでいて、精神的にもかなり落ち着いていた。誰にも分からないという自負もあった。

郁人さんも、敵ではなくなったな。

開は、密かに心の中でそう思いながら、話を聞いていた。

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