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犠牲

「お前はオレ達に死ねと言うのか!あのな、慎一郎はオレ達を守るために自分が真占い師だと思わせて死んで逝くことを選んだんだぞ!恋人だかなんだか知らないが、狩人を守ろうとする人狼のお前に何が分かる!」

光一が、開の部屋に集まった壮介、英悟を前に叫んだ。英悟は、ふんと言った。

「お前達だって薄々分かってたんだろうか。篤夫が狐だろう。慎一郎は、知らずに白をだしちまってたんだよ。他はどう見ても、狐にゃ見えないんだからな。だが、このままじゃ篤夫は吊られない。襲撃も出来ない。お前達が死ぬより他にないだろうが。違うか?」

光一と壮介は、グッと黙った。開は、横から言った。

「まあまあ、英悟さんの言うことも分かるんですよ。でも、もう少し進んでからでもいいと思うんですよね。光一さんと壮介さんどちらかが人狼だと言って出て、篤夫が狐だと告発する。それで、篤夫を吊らせるんです。次の日、修が黒を出していた、また光一さんか壮介さんを吊るでしょう。でも、オレと英悟さんのことは分からないから、最後の最後で間違うかもしれない。それでどうですか?」

英悟は、それを聞いてむっつりと開を見た。

「…つまり、村人を無駄に吊らせて、ってことか?」

開は、こっくりと頷いた。

「ええ。考えてください、今の時点で村人は9人。狐2人、狼4人。今夜、まず間違いなく狐の舞花が吊られ、夜に村人を襲撃して明日は狼4人、狐1人、村人8人になります。そしてその夜、村人一人吊り、一人襲撃して翌日狼4人、狐1人、村人6人。これが限界です、この日に村人を吊ってしまうと、次の日には狼と村人が同数になるので、狐勝ちになる。なので、この日に一人が人狼COします。そして、篤夫が狐だと告発するんです。そうしたら、村は篤夫を吊るでしょう。オレ達の票が合わさるし、村人全員が篤夫に入れなくても数人入れたら充分吊れますから。その後は、恐らく光一さん、壮介さんと吊られますが、オレと英悟さんは残る。最後の最後で村人さえ吊らせれば、あと5日で人狼勝利で終わります。それでどうですか?」

光一と壮介は顔を見合わせた。だが、英悟が言った。

「オレは意見を今更変えられないぞ。みんなの前で言ったんだしな。確かに、その方が勝ち筋が見えやすいかもしれないが…。」

「意見は変えなくていい。」光一が言った。「オレが人狼として出る。それで、早々に篤夫を告発する。そうなると壮介だって放って置いてはくれないだろうが、それはそれだ。お前達が生き残るのが難しくなるだけじゃないか?村人ばかりを何とか吊って行くように、毎日誘導し続けなきゃいけないんだからな。オレ達だって居ない。人狼票がないんだから。」

英悟は、それを聞いて顔をしかめた。開は、英悟を見て懇願するように言った。

「英悟さん、お願いです。そう何日も、人狼票無しで村人ばかりを疑わせて吊ることなんて出来ませんよ。今はさくらの票もあるとは言って、人狼二人の方は重要です。一度意見を撤回して、二人がCOした時にもう一度出て来てください。お願いします。二人になる時は、なるべく遅い方がいいんですよ。」

英悟は、唸った。確かに、開の言うことはもっともだったからだ。光一と壮介は、むっつりと睨むように英悟を見ている。英悟は、息をついて言った。

「…分かった。オレの意見は撤回するよ、ちょっと不自然かもしれないが。お前達は、2日後にCOしてくれないか。それで、篤夫を吊ってくれ。」

光一と壮介は、英悟のことは睨んでいたが、開を見て、言った。

「仕方がない。オレ達だって、生きて戻って来たいしな。お前達に生き残ってもらわないといけない。慎一郎のためにも。言う通りにしよう、開。」

開は、ホッと肩の力を抜いた。

「ありがとうございます、光一さん。では、今日は舞花ってことで。これで、全然知らない場所にほんとの狐が居たなんて言ったら、肩透かしですけどね。」

壮介が、息をついた。

「お手上げだな。それにしても、最速であと5日も終わらないなんて…オレは、もう疲れたよ。」

オレもだよ。

開は思ったが、人狼として皆の前に出ることに比べれば、いくらかマシかもしれない。

なので、その時は黙っていたのだった。



結局、2時間後の会議も共有者達が心ここにあらず状態で、皆は困惑するばかりだった。人狼たちは心の中では落ち着いていた。もう、人狼の方では方針が決まっていたからだ。

それでも、舞花という狐を吊るという方向性は漠然と決まって行った。他の誰かを、吊ることが今皆に考えられるような状態じゃなかったからだ。

皆がかなり疲れ切ってしまって、考える力も衰えている中、投票時間が近付いて来て、開は一人、居間へと向かった。

何分、外では一緒に行動しないようにしているので、人狼仲間達がどうしているのか今は知らない。だが、先に居間へと降りて居るだろうことは、なんとなく人狼の直感で分かった。

開が居間へと入って行くと、もう何人かが椅子に座っていた。

皆、ただじっと黙っていて、談笑しているような様子もまったくない。

それでも、開が入って行くと、司が疲れで落ちくぼんだ目で見て、微かに口の端を上げて笑おうとした。

「ああ、開。もう時間が近いってのに、まだ数人来てないんだ。」

開は、自分の11の席へと座りながら言った。

「ええっと、あと何人ですか?」

回りを見ると、居なくなった三人の番号の椅子も、もう無くなっていた。

あちこち少なくなった椅子を落ち着きなく見回していた、園美が答えた。

「あと三人なの。椎奈とさくら、それに舞花。」

それを聞いた、開は嫌な予感がした。もしかして…。

「…もしかして、舞花は来ないんじゃないでしょうか。今夜追放されるのは、舞花って決まっている。それを知っているから、来ないんじゃ。」

そこに居た、皆が顔を見合わせた。司が、言った。

「ちょっと呼んで来るか。来なかったらルール違反で追放になるから、恐らく他の誰かに投票して決めなきゃならなくなるぞ。」

開は、時計を見た。ちょうどシャッターが閉じて来ていて、10分前だと分かる。

「オレが行って来ましょう。他の二人も、早くここへ来させないと無駄な犠牲が出てしまう。」

司は、慎重に頷いた。

「頼む。急げ、どうしても来なかったら君だけでも降りて来るんだ。」

開は頷いて、今降りて来たばかりの上階へと急いで上がって行った。


舞花は21番、開の部屋より奥だ。

開は、その部屋のインターフォンを押してみて、返答を待った。耳をそばだててみると、中から言い争うような女子達の声が聴こえている。

しかし、ドアは開いて、さくらが困ったように開を見た。

「舞花が、絶対に投票に行かないと言って。どうせ、死ぬんだからって。椎奈が、せめてみんなの役に立って死になさいとか言って、さっきからもめてるの。」

開は、こちらにはお構いなくまだ言い争っている椎奈と舞花を見て、ため息をついた。

「…椎奈、もう時間だぞ。ルール違反でお前達まで追放される。さくらの事まで巻き込むつもりなのか。」

椎奈は、ベッドでシーツを被っている舞花から視線を反らして、こちらを見た。

「そんなつもりはないわ!ただ、この子が来なかったら、もしかして今日は別の人に投票しなきゃならないかもしれないでしょう!だから言ってるのよ!」

開は、それを考えた。もし、そうなったら先はどうなるのだろう。

その時、開の鼓動がドクンと跳ねた。

…今日、篤夫を殺れるんじゃないのか。

開は、さくらを見た。さくらは、英悟と開の言うことを聞く。恐らく、篤夫に入れろと言えば、篤夫に入れるだろう。今生き残っている人狼は四人。それだけで、5票。

後は、村人達だ。舞花が居なくなったとしたら、修の黒である光一と壮介の二人に票を入れる奴が必ずいる。その票が割れたら、票をそろえられる人狼は強いはずだ。

そうしたら、狐が一気に居なくなった村で、明日の朝は人狼4人村人8人になる…。

願ってもない事だった。

開は、一瞬でそれを考えて大袈裟にイライラした風で腕時計に目をやると、言った。

「そんなこと言っていられないんだ!お前が来ないならそれでもいい。さくらだけでも連れて行くぞ。そう何人も村人に死なれちゃあ勝目なんてないんだよ!」

そうして、ガッツリとさくらの腕を掴むと、さっさとそれを引っ張ってそこを離れた。駆け足で階段の方へと向かいながら、開は小声で言った。

「舞花は来ない。15番の篤夫に入れろ。オレ達は分かっているからみんな票を揃える。」

さくらは、それを聞いて息を飲んだが、小さく頷いた。すると、部屋から飛び出した椎奈が、それを追って来た。

「ちょっと待って!行かないとは言ってないでしょう!私だって、死にたくないわよ!」

開は、先を歩きながら、椎奈を振り返ってわざと言った。

「まあお前だって狐の嫌疑をかけられてるんだ、舞花が死ねばお前って、焦る気持ちはわかるけどな。」

椎奈は、ビクッと肩を震わせた。

「…何のこと?」

「だから、次の投票先だよ。」開は、ずんずん階段を降りながら言った。「寡黙目を探してるなら、椎奈かさくらに来るだろう。だから気持ちはわかるって言ったんだ。」

椎奈は、ブンブンと首を振った。

「そんなはずないわ!それはあくまで昨日の投票先に上がっただけで、今日は誰もそんなこと言わなかったじゃないの!」

開は、肩をすくめた。

「まあそうなると、オレも英悟さんの考えを指示して、篤夫にでも入れてみるかな、と思ってるけどね。もしかしてって思うじゃないか。あんまりにもうまく行きすぎてるのも気になるしな。」

さくらは、それを聞きながらも黙っている。椎奈は、震えながら言った。

「え?篤夫さん?あなた、篤夫さんに入れようと思っているの?」

開は、頷いた。

「ああ。お前はきっと村人だろう。今日の時点では、そう思うことにしてる。だから、最初から結構発言していた篤夫さんの方が、誤魔化そうとしている狐って感じかもしれないからさ。一度入れてみるよ。それで決まるとは思わないけど、偶然でも票が集まったら面倒なところがなくなるかもと思って。」

椎奈は、黙った。居間の前に到着して、さくらの腕から手を放してドアを開くと、もうディスプレイではカウントダウンが始まっていた。

司が、慌てて叫んだ。

「早く!もう始まってるんだ!ここに居ないけど、とりあえず舞花の番号を入れようって皆で決めてる!」

開と椎奈とさくらは、慌てて席について、急いで腕輪を前へと持って来た。舞花の番号は、21。

『投票してください。』

カウントダウンの後、ディスプレイから御馴染みの声が聴こえて来る。皆、一斉に腕輪を操作して投票した。21、そして、0、0、0。

投票時間が、いつもより長く過ぎて行った。もちろん、同じ1分なのだが、もっと経ったような気がする…。

ちらりと見ると、21の席は、空のままでそこにあった。皆が緊張気味に待った後、ディスプレイには大きく「21」と番号が出て、そして、パッと消えた。

『…№21は、ルール違反のため、既に追放されています。新たに、追放する番号を投票してください。』

やっぱりそうか。

開は、表情を険しくした。

ここで、人狼たちと視線を合わせてはばれてしまう。

開は、あえて視線を合わせずに、ただ篤夫の方を見た。それから、司を見ると、司は、緊張で固まった顔をしていた。

「…入れよう。皆が、怪しいと思うグレーか、黒に。考える時間はもうない…とにかく、何でもいいから数字を入れろ!」

最後の方は、叫んでいた。皆、必死に番号を打ち込む。慌てているが、開はもう、篤夫を殺すことしか考えていなかった。理由など、あとから付けたらいいのだ。仲間が少しでも長く生き残り、そして狐を少しでも早く殺してしまえたら、あとは無力な村人だけだ。どうにでもなる。

入力した後、じっと待った。

ディスプレイは、数字を大きく表示させた。

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